元ゴールボール女子日本代表・浦田理恵さんが視力を失った末に掴んだ〝幸せ人生を送る秘訣〟

ゴールボール女子日本代表としてパラリンピック4大会に連続出場、世界一を掴んだ浦田理恵さん。20歳を過ぎて視力を失うという絶望的な状況の中、素人からゴールボールを始め、日本代表にまで選出。2012年のロンドンオリンピックでは金メダルを獲得し、日本中に感動をもたらしました。そんな浦田さんに視力を失った当時を振り返っていただき、〝見えなくなって初めて見えるようになったもの〟について語っていただきました。対談のお相手は、不治の難病に侵されるも、諦めることなく前進し続けるプロテニスプレーヤー・姫野ナルさんです。
(本記事は『致知』2025年7月号 対談「希望の一念を燃やして生きる」より一部を抜粋・編集したものです)

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見えなくなって初めて見えたもの

<姫野>
素敵なご両親の愛情があって、理恵さんがいる。目のことはどうお伝えされたのですか?

<浦田>
少しだけ残った視力と記憶を頼りに電車に乗り、何とか実家の最寄り駅に着きました。

既に母が迎えに来ていて「はよこっちおいで。なにてれてれ歩きよると?」と声がしました。私がちょっとずつ歩いていたので、母はふざけていると思ったようです。

やっと改札を通って、「私……お母さんの顔、見えんくなったんよね……」と言ったら、母は笑って「何ば言いよっとね、また冗談言って。これ何本?」と指を出したんです。

でも、その数も全然分からなくて、手を触って確認しようとした。その瞬間、改札の真ん前だったんですけど、母はわーっとめちゃくちゃに泣き崩れて……。

<姫野>
……。

<浦田>
それを見ながら、自分は何をやってるんだろう、ってやるせない気持ちになりました。

しばらくして病院で検査を受け、いまの医学では治らない難病だということを知らされました。

<姫野>
私は、突然難病と診断されて戸惑いました。理恵さんは……。

<浦田>
絶望しました。

ただ、両親が「見えなくなっても、何かできることを探さんとね。一緒に前を向いて頑張ろう」って背中を押してくれました。これが大きかったですね。どんな状況でも、両親は絶対に見捨てないでいてくれる、受け止めてもらえるんだと安心しました。

私は目が見えなくなって初めて見えるようになったものがあります。それは「ありがとう」です。

それまでは、目が見えること、ご飯が食べられること、学費を出してもらえること、家族がいてくれることが、すべて当たり前になっていました。その日常は「有り難き」ことだったんです。

<姫野>
日常が「有り難き」もの。

<浦田>
その些細な日常に全然感謝できていませんでした。時間はかかりましたけど、それに気がついた時、「見えなくなったことにも意味がある」と思いました。目が見えないから人生ダメだとか、見えないから不幸ってことはないんです。その意味は自分で見出すもの。幸せは自分で見つけるもの、感じるものだったんですね。


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↓ 対談内容はこちら!
◆九州から世界へと羽ばたいて
◆愛する家族を一番に頼れなかった
◆見えなくなって初めて見えたもの
◆自分が勝てば大切な人を笑顔にできる
◆平均20年、寿命が短くなる難病
◆自分の人生は自分が動かす
◆薬を断てば命を失う
◆人生の主導権は誰にも譲らない
◆眠っていた力が目覚める時
◆笑顔に開いた天の花
◆決死の覚悟で挑んだ海外遠征
◆誰かが一歩踏み出すきっかけになりたい

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◇浦田理恵(うらた・りえ)
昭和52年熊本県生まれ。20歳の時「網膜色素変性症」と診断され、徐々に視力を失う。福岡県の視力センターでゴールボールを始め、平成20年北京パラリンピックで五輪初出場、21年シーズアスリートに所属。24年日本代表副主将としてロンドンパラリンピックに出場し、金メダルを獲得。令和3年東京パラリンピックで銅メダルを獲得し、現役を引退。自身初の著書『一歩踏み出す勇気』を6月下旬、致知出版社より発刊予定。

◇姫野ナル(ひめの・なる)
平成13年大阪府生まれ、鹿児島県種子島で育つ。11歳でテニスを始め、中学時代に鹿児島県ジュニアで優勝。相生学院高等学校では全国選抜高校テニス大会で団体2連覇を果たす。31年4月より種子島医療センター広報企画課所属。令和2年1月よりプロ転向、4年に指定難病「下垂体性成長ホルモン分泌亢進症」、翌年「下垂体前葉機能低下症」「成人成長ホルモン分泌不全症」を発症する。大阪を拠点に国内外のツアーを周り、グランドスラムを目指す。

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