100歳、茶道裏千家・千玄室氏が語る〈困難な時代を生き抜くために大切なこと〉

茶道裏千家前家元の千玄室氏は2023年、100歳を迎えられました。70年以上、国内外で茶道の普及を続けるその精進努力には、いささかの衰えもありません。長きに渡り世の中を見てきた千氏の目には、現代社会はどのように映っているのでしょうか。独自の観点で艱難辛苦が続く社会を生き抜くために大切なことを語っていただきました。

苦しみの世に茶がもたらす人生の潤い

私たちの人生は、いつ何時、どんなことが起きるか分かりません。今朝の新聞を見ておりましたら、本年中というわけではありませんが、南海トラフの大地震で最高36メートルの津波が来ると書かれてありました。東北のほうでは東日本大震災の苦しみから立ち上がるべく、たくさんの人たちがいまも頑張っておられます。

私も現地に行きまして、被災者の方とお目に掛かってお話をさせていただいたり、お茶を差し上げたりしました。あるお婆さんにお茶を差し上げた時、「ああ、このお茶がいただけてよかったな。私はお茶のことは知らんけど、この点ててもろうたお茶が、どんなに心を癒やしてくれたことか」としみじみ、そうおっしゃいました。

それを伺った時に私は「たった一碗のお茶でも、こんなに役に立つのだな。ありがたいな。もっともっと多くの方にこの一碗のお茶を飲んでいただいて、皆さんが少しでも苦しみ、悲しみから逃れられるようにしなければいけない」と自分に言い聞かせたものです。

大切なのは、苦しみの多い人生であったとしても、そういう思いやりの気持ちを失わないで、他の人に対して手を差し伸べていくことではないかと思うのです。自分の手を使って他の人のために少しでも何かをして差し上げる、その喜びが自分に返ってくる。その時に人生の本当の幸せを感じられるのではないでしょうか。

「ありがたいな、もったいないな」という気持ちを一人でも二人でも三人でも多くの人が持っていただけたら、平和という言葉を使わなくても本当に落ち着いた世の中になっていくのではないでしょうか。


(本記事は月刊『致知』2020年4月号 特集「命ある限り歩き続ける」より一部を抜粋・編集したものです)

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『致知』を編集し、今日迄ま での道を作ってこられた藤尾秀昭社長とは昵懇にさせていただいておりますが、『致知』は今は亡き安岡正篤先生の教えを受け継がれていると思っています。現代の日本人に何より必要なのはしっかりした人生哲学です。『致知』は教養として心を教える月刊誌であり、毎回「人間を学ぶ」ことの意義が説かれています。もっともっと多くの方がこの誌を通じて自らの使命を知り、日本人としての誇りを培っていただけたらと念じてやみません。

 

◇千 玄室(せん・げんしつ)
大正12年京都府生まれ。昭和21年同志社大学法学部卒業後、米・ハワイ大学で修学。39年千利休居士15代家元を継承。平成14年長男に家元を譲座し、千玄室大宗匠を名乗る。文学博士、哲学博士。主な役職に外務省参与、ユネスコ親善大使、日本・国連親善大使、公益財団法人日本国際連合協会会長。文化勲章、レジオン・ドヌール・勲章オフィシエ、レジオン・ドヌール勲章コマンドール(フランス)、大功労十字章(ドイツ)、独立勲章第一級(UAE)等を受章。

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