2025年06月18日
~本記事は月刊誌『致知』2025年7月号 特集「一念の微」に掲載のインタビュー(「〝感動農業〟への飽くなき挑戦」)の取材手記です~
創業60周年、年商50億円超の農業生産法人グループ
国内の有機こんにゃく市場で約6割のシェアを誇る「グリンリーフ」、全国9府県で70名の生産農家と約40品目の野菜を供給する「野菜くらぶ」をはじめ、グループ全体で年商57億円の農業生産法人を率いるのが澤浦彰治さんです。
他にも、モスバーガーを運営するモスフードサービスと共同出資し、主にモスバーガーチェーン向けのトマトを栽培する会社も運営しています。モスフードサービスが最初に農家と直接契約をしたうちの1社が「野菜くらぶ」で、その頃からずっと取り引きが続いているのは、野菜くらぶと北海道のもう1社だけだといいます。つまり、モスバーガーにとって、なくてはならない存在になっているのです。
父親が地元群馬県昭和村の赤城高原で始めた家業の「沢浦農園」を法人化し、今日の規模へと発展させ、2年前に60周年を迎えました。第13回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞も受賞しています。
澤浦さんはどんな思いの種を蒔き、幾多の試練を乗り越え、花実を咲かせてきたのでしょうか。その秘訣に迫ります。
月刊『致知』最新号(2025年7月号)特集「一念の微」に澤浦さんのインタビュー記事が掲載されています。タイトルは「〝感動農業〟への飽くなき挑戦」。
「一念の微」とは、東洋思想家の安岡正篤師が遺した言葉「永久の計は一念の微に在り」に由来し、人生はかすかな一念の積み重ねが、やがて大きな差となって現れる、という意味です。
今日に至るまでコツコツと努力を続けてきた澤浦さんの歩みは、まさに「一念の微」そのものといえるでしょう。


経営理念は「感動農業 人づくり、土づくり」
取材はゴールデンウイークの狭間、5月2日(金)に行われました。あいにくの大雨でしたが、東京・練馬から車で約1時間半、群馬県昭和村赤城高原にあるグリンリーフ本社へ伺うと、澤浦さんは笑顔で歓待してくださいました。
昨年11月に完成した3階建ての新社屋・工場を丁寧に案内していただきましたが、エントランスには経営理念である「感動農業 人づくり、土づくり」の書が大きく掲げられているほか、社員共用の本棚が設置され、そこには『致知』や弊社書籍も多数並んでいました。
20年以上にわたって『致知』をご愛読くださっている澤浦さんとはかねて親交があり、その素晴らしい取り組みに注目し、いつかご登場いただきたいと思っていただけに、今回はとても貴重な体験でした。
1時間半に及ぶ取材の内容を凝縮して誌面5ページ、約7,000字の記事にまとめました。主な見出しは下記の通りです。
◇家族経営から年商50億円超へ
◇困り事は宝物 できる方法を考える
◇25歳で訪れた一大転機
◇成長の鍵は人との出逢い
◇理念経営を実現するための工夫
◇仕事と人生は一体である
「グループ60周年の節目を迎えて、いま心に湧き上がってくる一念」や「独自のこだわりや特徴」に始まり、「農家の長男として生まれ、この道で生きると決意した時」「お若い頃、影響を受けた人や本、印象に残っている教え」といった人生の原点、「家業の農家をどのようにして全国に広げていったのか」「直面した逆境や試練、転機となった出来事」「忘れ得ぬ出逢い、忘れ得ぬ言葉」、さらには「澤浦さんにとってこの仕事の最大の悦び、やりがいとは」「社員さんによく伝えていること」などを伺いました。
農業経営に半生を捧げてきた澤浦さんの、心を揺さぶられる数々の金言に出逢えます。
「困り事は宝物」「問題の数だけ未来がある」を信条に
澤浦さんは取材の中でこうおっしゃっていました。
「困り事は宝物」「問題の数だけ未来がある」「やりもしないでできない理由を言うな」というのが私の口癖なんですね。
振り返るとこれまでもいろいろな問題がありましたけど、今日までこうして仕事を続けることができたのは、ひと言で表現すれば、諦めなかったからだと思います。
こうやればよくなるという執念で挑戦し、乗り越えてきた。その連続です。だから、過去に直面した逆境も過ぎてしまえば大したことはなく、常にいまが一番大変だと捉えています。
この言葉通り、澤浦さんは25歳の時にこんにゃく相場が暴落して破産寸前に陥ったことをはじめ、数多くの困難や逆境に直面してきましたが、どんな時も「できるか、できないか」ではなく、「やるか、やらないか」を判断基準に置き、すべて肯定的に受け止め、果敢に挑戦を続けてきました。
また、この言葉を聞いて思い起こしたのは、経営の神様・松下幸之助の次の言葉です。
「かつてない困難からは、かつてない革新が生まれる。かつてない革新からは、かつてない飛躍が生まれる」
「いま日本は対外的にも国内的にも様々な問題を抱えていますが、それは発展への好機がいっぱいあるということ。そう考えることができれば、今の日本は無限の宝庫。いや、宝船と言ったほうがいい。太平洋に浮かぶ宝船、それが日本です」
この言葉と出逢った時、心が激しく揺さぶられたことを鮮明に記憶しています。
『致知』は人づくりの基礎になる唯一の本
さらに、澤浦さんのお話の中でとりわけ心に響いた言葉をあと2つ紹介しましょう。
1つは澤浦さんの高校時代の恩師の言葉です。中学で柔道部だった澤浦さんをウエイトリフティング部に誘う際、このように声をかけてくれたといいます。
「澤浦、この学校でどんなに柔道を頑張ってもインターハイには行けずに終わるぞ。でも、その努力をウエイトリフティングで発揮したら、日本の澤浦になれる。利根農林の澤浦で終わるのか、日本の澤浦になるのか、どっちだ。
努力を生かせる場に自分の身を置かなければ花は咲かない」
もう1つは、熊本でワイナリーを営んでいた先輩経営者から教わったという言葉。
「澤浦君、多くの人は成功者がつくっているものを真似るが、そうではなく、成功者の考え方を真似なさい」
努力を生かせる場に自分の身を置かなければ花は咲かない。成功者がつくったものを真似するのではなく、成功者の考え方を真似する。これらもまさに金言です。
最後に、今回の記事掲載に当たり、澤浦さんが寄せてくださった『致知』へのメッセージを紹介します。
私が『致知』を先輩経営者から紹介していただき、読み始めたのが30歳頃でした。
まだ法人化したばかりで、経営のことや成功者の考え方に飢えていました。
この30年間、『致知』を読み漁り、毎号紹介されている様々な体験談から得た「ものの考え方」「ものの見方」、そして「成功者に共通する行動」を学び、それを素直に実践し経営に活かしたことが、家族3人から従業員240名になる大きな礎になったと思います。
作物づくりで言えば、『致知』は即効性のある化学肥料のようなノウハウ本ではありません。
様々な肥料を活かして作物を健全に育てる腐植のような存在で、まさに「人づくりの基礎になる唯一の本」だと思って全社員で学んでいます。
澤浦さんが壮絶な体験を通して掴まれた「組織を発展させる成功の秘訣」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。40年近くに及ぶ経営人生の集大成として語り尽くした人間学談義、組織やリーダーのあり方に興味は尽きません。
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。