令和の米騒動! 問題の根本にあるもの〈鈴木宣弘〉


終わりの見えない米不足、米価格の高騰。なぜ日本人の主食であるはずの米が手に入らないという異常事態が生じているのか。農業政策のエキスパートである鈴木宣弘さんにその根本原因を紐解いていただきました。(本記事は月刊『致知』2025年6月号 連載「意見・判断」より一部抜粋・編集したものです)

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減反政策の失敗

なぜ政府は頑なに米不足を認めようとしないのか──。これを認めてしまうと、これまでの政府の米政策の誤りを認めることになってしまうからに他なりません。

そもそも令和の米騒動の根本には、1971年から本格的に始まった米の生産を管理する政府の「減反政策」により、日本の米農家が疲弊し十分な米を供給できなくなっている現状があります。

戦後、日本を占領したアメリカは、自国で余った農産物の在庫処分のため、小麦や大豆、トウモロコシなど日本の関税を事実上撤廃させました。そしてそれらを日本人の胃袋に押し込もうと、主食の米を食べないよう誘導したのです。特に学校給食をパンと乳製品(脱脂粉乳)中心に変えた影響は大きく、日本人の食生活が変わり、米離れがどんどん進みました。

確かに戦後日本の厳しい食糧事情はあったとはいえ、まさに〝胃袋からの属国化〟といってよいでしょう。米の需要がどんどん減少していけば、当然、米の過剰生産、米価の下落に繋がります。そこで政府は、米農家を守るために減反政策を導入したのです。

しかし、半ば強制的に米づくりを制限する減反政策は、米農家を守るどころかその反対の結果をもたらしました。これは実際に私も目にした光景ですが、減反政策の下、米農家の方々が丹精込めて育てた青々とした稲を「減反政策を守ってないじゃないか」と、全部刈り取らせる。あるいは、補助金を出して水田を潰して畑地化するということが行われてきたのです。米をもっとつくりたいという意欲ある米農家の方々は泣いていました。

米価を維持できればまだよかったのですが、日本人の食生活の欧米化などもあり、減反政策の導入後も米価は下がり続け、1990年と比べると半値以下にまで下がってしまいました。いま高いといわれている米価も、実は30年前の水準に戻っただけなのです。

つくりたくてもつくれない、つくっても価格が下がって手元にお金が残らない。そうした過酷な状況の中で、米農家のなり手はどんどん減っていき、いまや平均年齢は約70歳です。この現実が政府の減反政策の失敗を物語っています。このままではあと10年、厳しく見てあと5年で日本の米づくりは崩壊の危機に直面するでしょう。


続きは本誌をご覧ください↓↓

~本記事の内容~
◇終わらない米不足、米価高騰
◇問題根本にあるもの
◇管理・抑制ではなく需要と供給を高める政策を
◇食問題は安全保障問題である
◇食の安心安全は一人ひとりの意識が守る


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◇鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)
昭和33年三重県生まれ。57年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学大学院教授を経て、平成18年東京大学大学院農学生命科学研究科教授。令和6年から、特任教授。FTA産官学共同研究会委員、食料・農業・農村政策審議会委員、財務省関税・外国為替等審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、コーネル大学客員教授などを歴任。著書に『食の戦争』(文春新書)『農業消滅』(平凡社)『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社)など。

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