2025年05月30日
~本記事は月刊誌『致知』2025年7月号 特集「一念の微」に掲載の対談(「一念の積み重ねこそ経営の真髄なり」)の取材手記です~
飲食業界を牽引する一流経営者が相まみえる
群雄割拠の飲食業界において、独自の経営手腕で躍進を牽引する二人の経営者がいます。
焼鳥屋「鳥貴族」を徒手空拳で立ち上げ、居酒屋チェーンとして日本一の店舗数へと育て上げてきた大倉忠司氏。世田谷の住宅街の一角から串カツ専門店「串カツ田中」をスタートし、僅か11年で東証一部上場へと導いた貫啓二氏。
2024年、LINEヤフーのスマホ専用リサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」が全国の20歳から64歳までの男女4733人を対象に、居酒屋チェーンに関するアンケート調査を実施したところ、「好きな居酒屋チェーンは?」という項目において1位に鳥貴族、2位に串カツ田中が選ばれました。両飲食店が老若男女問わず、多くの人々から愛されていることを如実に伝えています。
しかし、それぞれの会社がどのような思いで創業されたのか、かつては閑古鳥が鳴く状態だったところからいかにして今日の発展を遂げたのか、創業者はどのような考え方で経営してきたのか、意外と知られていないかもしれません。
10年以上にわたり親交を深めてきた両氏が語り合う、苦難の道のりで積み重ねてきた一念、人生と経営を発展させる要諦とは――。
月刊『致知』最新号(2025年7月号)特集「一念の微」の締め括りに大倉忠司さんと貫啓二さんの対談記事が掲載されています。タイトルは「一念の積み重ねこそ経営の真髄なり」です。
一つひとつのご縁に紡がれて
企画の発端は2024年4月。NPO法人ココロのバリアフリー計画理事長の池田君江さんを弊誌連載「第一線で活躍する女性」で取材したことがきっかけでした。
2007年6月19日、3名の死者を出した「渋谷温泉施設爆発事故」に巻き込まれ脊髄を損傷、半身不随になった池田さんですが、オープン間もない串カツ田中で貫さんに心の籠った接客を受けたことを機に、ココロのバリアフリー活動に邁進されていきました。取材では、貫さんとの出逢いや串カツ田中がバリアフリー化の取り組みを積極的に行っていることなどを伺い、その人柄・経営方針にすっかり心を打たれ、ぜひとも弊誌にご登場いただきたいと思い立ったのです。
池田さん(左)と貫さん
貫さんは義理のお父様が『致知』の愛読者ということもあって、取材依頼をするとすぐにご快諾くださいました。ただ、当初は貫さんと別の方との対談を検討しており、相手方から断られたため企画は一旦白紙に戻りました。そこで貫さんに親しい経営者仲間を伺ったところ、真っ先に挙げてくださったのが、鳥貴族の大倉さんでした。
しかしながら、実は遡ること約半年前。別の対談企画で大倉さんへ取材依頼をしたものの、ご多忙ゆえに実現は叶いませんでした。
今回も難しいかもしれない。一抹の不安はありましたが、貫さんから直々に打診いただいたところ、ものの数時間後には「貫さんとの対談であればぜひ」とご快諾の連絡が入り、今回の対談に至りました。
この一連の流れを振り返ると、人との出逢い、ご縁の尊さに感じ入ると共に、深い感謝の思いが沸々と湧き上がってきました。感謝と感動を胸に、一歩一歩、堅実に、報恩に徹する仕事を積み重ねていくことが、思いがけない出逢いに繋がっていくことを強く実感します。
経営の第一線に立ち続けて見えてきた世界
対談取材は4月8日(火)、鳥貴族を展開するエターナルホスピタリティグループ本社オフィス(アーバンネット御堂筋ビル20階)にて行われました。大部屋方式の開放的なオフィスに加え、入口には終業後自由に使えるというカフェカウンターもあり、自由闊達な社風がひしひしと伝わってきました。
お二方は肝胆相照らす仲ですが、これほど踏み込んで濃密な経営談義に花を咲かせたのは初めてのこと。一代で飲食業界を代表する企業へと育て上げてきた足跡、その過程で掴んだ人生訓に、組織を繁栄に導くリーダーのあり方を教えられます。
↓対談内容はこちら!
◇10年以上にわたり親交を深めてきた間柄
◇海外での成功なくして将来はない
◇出逢いによって導かれた焼鳥の一道
◇苦節10年で辿り着いた天職
◇全メニュー均一価格で見出した光明
◇全従業員の物心両面の幸福を追求する
◇理念は人生を豊かにするための道標
◇かくしてコロナ禍の危機を乗り越えてきた
◇最後に残るのは人間力 成功するまで諦めない
「お二人の出逢い」や「飲食業界を取り巻く環境の変化、それを受けていま注力している取り組み」に始まり、「創業の経緯、この道で生きると覚悟を決めた時」「お若い頃、事業を軌道に乗せるために積み重ねた実践と心懸け」「特に影響を受けた人や本」「最大の逆境や試練──それをどう乗り越えてきたか、それを通じて練り上げられた経営哲学や人生信条」、さらには「組織を強くするために大切なこと」「日頃、社員さんによく伝えているメッセージ」「いまの時代に求められるリーダーの条件」「大成する人と大成しない人の差」など、経営の第一線に立ち続けて見えてきた珠玉の教えの数々がギュッと凝縮されています。
人生成功の秘訣は、成功するまで諦めないこと
道なき道を切り拓いてきたお二人の体験談はどれも必読です。ここでは、お二人のお話の中でとりわけ心に響いた言葉を紹介します。
まずは大倉さん。
「私には常々、『自分がうまくいかないはずがない』という根拠のない自信がありました。これは裏を返すと、成功するまで諦めないということです。努力を厭わず、一本一本の焼鳥を積み重ねていくことが、強く大きなものに繋がると思っていました。
大局を見た上での地道な実践の積み重ねが、道なき道を切り拓く力になる。これが40年間焼鳥の一道を追求してきての心からの実感です」
今年5月1日で創業40周年を迎えた鳥貴族。いまでは全国各地で黄色と赤色の看板を見ることができますが、かつては閑古鳥が鳴く日々でした。創業からの1年間は赤字続きだったといいます。
精神的にも、経済的にも苦しい中、大倉さんはいかにして光明を見出してきたのでしょうか。その全貌は本対談で余すところなく紹介されていますが、これまで数々の成功と失敗を重ねながらも、一つの道を極めてきた実体験をもとに生まれた言葉だけに、重く響いてきます。
次に貫さん。
「世間では『会社の理念は洗脳みたいなもの』ってよく言われるじゃないですか。僕はその考え方はすごく浅はかだと思っていて、理念は人生を豊かにするための道標だと信じてやってきました。
理念や人生の目的を咀嚼して咀嚼して咀嚼し続ける。そうして思いに則った実践をコツコツ続けることで、個々人の人生、組織は発展していくと実感しています」
貫さんは1998年、27歳の時に大阪でバーを開業し、未経験の飲食業界に飛び込みました。そして苦節10年を経て、ある運命的な出来事をきっかけに串カツ田中を開業したのは2008年のことでした。
そんな貫さんが何より心懸けてこられたのが、企業理念「串カツ田中の串カツで、一人でも多くの笑顔を生むことにより、社会貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求する」に則った行動・経営を積み重ねることだといいます。この言葉もまた、経営と真摯に向き合ってこられた貫さんならではの本音の実感がこもった言葉といえるのではないでしょうか。
大倉さんと貫さんが艱難辛苦の道のりで掴んだ「経営の真髄」には、仕事や人生を成功へと導く秘訣が満載です。ぜひ本誌の対談記事をお読みください。
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。