2024年09月18日
山中伸弥氏がiPS細胞の作製に世界で初めて成功し、ノーベル賞を受賞してから12年。iPS細胞から作製した免疫細胞を使ってがん免疫再生治療で医療での実用化を目指す金子 新氏と、ジャパネットたかたの創業者で京都大学iPS細胞研究財団アドバイザーの髙田 明氏に、プロジェクトの現状と今後の可能性、物事を成就する秘訣、これまでの研究人生を貫いてきたものについて迫っていただきました。お2人が大切にされている言葉について語り合っていただきました。 ◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
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2人がそれぞれ大切にしている言葉
<髙田>
金子先生が大切にされている言葉はありますか?
<金子>
これは豊臣秀吉が言ったらしいんですけど、「負けると思えば負ける。勝つと思えば勝つ。人には勝つと言い聞かすべし」という言葉が好きで、自宅の机に置いているんです。
だから結局、私が負けるって言っちゃうと、負けるんです。
勝つって言ったら、みんな力を出してくれる。僕は負けそうだなと思っても、絶対に勝つって言うようにしていますね。これは大事なところだと感じています。
<髙田>
「つもり」にならずに日々精進しているかどうか。
それが物事を成就する人と成就できない人の差だと僕は考えています。
やっているつもりって結構あると思います。
「こんなにやっているのにうまくいかない」という時は、大抵やっているつもりになっているんですよね。
じゃあ何を一番にやらなきゃいけないか。
プロ野球の野村克也さんがおっしゃっていたこの言葉をよく使うんですけど、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。
負けた時は必ず理由があるから、そこをとことん探し求める。
「どうしたらうまくいくんだろう」と。
そして、勝った時も驕らずその理由を探す。
もう本当にいろんなことを考えて、研究して、それを次の成功の段階に持っていくことが大事だと思います。
<金子>
物事が成就するには、熱意とか運とか、あとは仲間の力が大事だと思います。
そういう要素がバランスよく揃った時に、うまくいくのではないでしょうか。
あるいは、何か欠けた部分があってもそれを他で補うことができれば、突破できるような気がします。
<髙田>
スポーツの世界もビジネスの世界も研究の世界も、みんな同じですよね。
やっているつもりでそこに気づかない人は、「なんでうまくいかないんだ」って愚痴が出ます。他責にしちゃう。
本当にやる人はそうじゃないですね。
愚痴を言わない、他責にしない。
その姿勢を続けていったら必ず夢は成就する。
僕はこれまで講演を頼まれると、演題はずっと同じで、「夢を持ち続け日々精進」にしてきました。
夢を持ち続けること。日々やり続けること。とにかく過去や将来に囚とらわれず、いまを生きることに意識を集中させる。
成長こそ企業の役割だって言う人がいますけど、それだけではダメなんです。成長だけではどこかで必ず行き詰まります。
だから、成長プラス継続。これは企業でも研究でも共通だと思います。
(本記事は月刊『致知』2024年9月号 特集「貫くものを」より一部を抜粋・編集したものです)
◉『致知』2024年9月号 特集「貫くものを」◉
「iPS細胞を活用したがん治療で夢の医療を実現する」
金子 新(京都大学iPS細胞研究所教授)
髙田 明(A and Live代表取締役)
↓ インタビュー内容はこちら!
◆難しいことをいかに分かりやすく伝えるか
◆「MyT-Server」プロジェクトとは
◆目指しているのは「誰でも、どこでも、いつでも」
◆がん免疫治療に不可欠な3つの要素
◆「あっこれだ!」留学3年目に訪れた転機
◆受け入れてもらえず苦しい局面に立たされる
◆研究者の夢が詰まった夢カタログを携えて
◆過去や未来ではなく大事なのは「いま」
◆優れた能力よりも優しい人間性
◆何のために仕事をするのか
◆2人がそれぞれ大切にしている言葉
◆「往く道は精進にして忍びて終わり悔いなし」
◇金子 新(かねこ・しん)
昭和45年愛媛県生まれ。平成7年筑波大学医学群を卒業後、筑波大学附属病院に勤務。10年筑波大学大学院医学研究科博士課程入学、14年博士号取得(医学)。同大学院血液病態制御医学(血液内科)講師、サンラファエレ科学研究所(ミラノ)研究員、東京大学医科学研究所幹細胞治療分野助教を経て、24年より京都大学iPS細胞研究所准教授、令和2年より同研究所教授、筑波大学医学医療系がん免疫研究分野教授を兼任。4年4月から6年3月まで同研究所副所長。
◇髙田 明(たかた・あきら)
昭和23年長崎県生まれ。46年大阪経済大学卒業後、阪村機械製作所に入社し、海外勤務を経験。49年実家のカメラ店「㈲カメラのたかた」に入り、61年分離独立して「㈱たかた」を設立。平成2年に通販事業を開始し、11年社名を「㈱ジャパネットたかた」に変更。27年社長を退任し、「㈱A and Live」を設立。29年サッカーJ2のV・ファーレン長崎の社長に就任し、同年J1昇格へと導く(令和2年退任)。著書に『髙田明と読む世阿弥』(日経BP)『まかせる力』(新将命氏との共著/SBクリエイティブ)など。