仕事で結果を出す人の共通点とは——「能力=才能」で片付けない(『夢を見て 夢を叶えて 夢になる[増補改訂版]』)

総合人材プロデュース企業・キャリアコンサルティングのトップとして、1万人以上の次世代リーダーを育成してきた室舘 勲さんの代表的著書『夢を見て 夢を叶えて 夢になる』。2007年の刊行以来、続々と増刷を重ねてきた代表的ロングセラーに、著者のこの16年の歩みを加えた増補改訂版が誕生しました。本書の中から、室舘さんの営業マンとしての歩みと、結果を出す秘訣についてご紹介します。

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結果を出した人間は必ず努力をしている

フルコミッションの仕事で成功する秘訣は、勝つまでやり続けるということです。

しかし、勝つまでやり続けられないのも、フルコミの仕事です。成果がゼロだと給料が入らないからです。私の場合も、本来であれば退職しなければならなかったはずです。それなのに辞めずに続けて成果に辿り着けた理由は、徹底した倹約とアルバイトによってお金が続いたからです。

入社から1年間はほとんど給料はありませんでした。1年目の冬休みを迎える頃には、とうとうお金が無くなりました。同僚たちは帰省していましたが、私は冬休みの1週間をすべてアルバイトに使い、コンビニとファストフード店を掛け持ちしてなんとか食いつなぎました。水・木の休みには運送業や軽作業の単発バイトを掛け持ちました。

そういったアルバイトもバカにしないで真面目にやって、塩おにぎりを食べながら営業マンを続けていました。仕事を極めるまでに時間がかかったので、続けられたということは本当に大きかったと思います。

フルコミの仕事は、才能のある人がポンと歩合給で30万、50万、100万を稼ぐ世界です。そんな世界で私のような才能のない者が続けることができたのは、努力ができたからなのです。

才能がないとずっと言われて、お金もなくて、葛藤もありましたが、それでも努力では負けたくないと思って、努力を続けました。コツコツ続けた練習の積み重ねによって、少しずつ話も上手になっていきました。この裏にはラッキーな出会いもありました。実は、鬼上司のもとで「おまえ、青森に帰れ」と罵倒されながら1年数か月働いたあと、人事異動があったのです。

次の上司の楠課長は仏様みたいな方で、部下にはスター営業マンが4人いて、チームとしてノウハウをがっちり持っていました。私は「微妙にダメ」みたいな評価でその課に入ったのですが、その4人と課長はノウハウを惜しげもなく教えてくれました。

その時の私は、鬼上司に鍛えられて基礎的なトークスキルは身につけていました。そこにノウハウを注入してもらったので、プレゼンテーションが格段にうまくなりました。「ああ、そんなコツがあったのか」とノウハウを理解して、「こうやってやればできるんだ」とそれを再現する力があったのです。

天才と言われるような人でも、裏では努力に努力を重ねている

そのあとから結果が出始めました。だから、鬼上司には本当に感謝しています。

ピシッとトークの基本スペックを上げてもらったおかげで、教えてもらったコツをすぐに実践できたのです。

そうして入社から1年半が経って、初めてトップ営業マンになりました。

周りからも「やっとトップになれたね、おめでとう」と言ってもらえて、とても誇らしかったです。

才能じゃないんだな、努力して良かったな、そう報われた気がしました。

当時、社内でも天才と言われていたのが、私の2番目の上司の三廣課長でした。以前、部下たちに「近くに来たら寄れよ」と言っていたのを真に受けて、ある時、夜中の1時に先輩と課長のご自宅を訪ねました。「近くに来たんで寄らせてもらいました」と言ったら驚いていました。当時の仕事は時間帯が深夜帯にかかるのが当たり前だったのもありますが、それでも非常識な時間に訪問したものです。

運良く、課長のお部屋に通していただきました。素敵なお部屋だなと思ったと同時に、本棚にはたくさんの本がありました。その多くが組織論、人間学、営業ノウハウの本でした。

三廣課長は、会社では異性にモテるための話とか、遊びの楽しい話ばかりしていた上司で、話も天才的に面白くて上手な方でしたが、本棚にズラッと並ぶ本を見た時、やっぱり努力していたのだなと思いました。さらに、課長は昔、言語障碍があってうまくしゃべれなかったと聞いた時には、本当に驚きました。

天才的で才能があるようにしか見えていませんでしたが、実は努力した背景があっての結果だったということです。それからは才能がありそうな人を見ても、絶対に陰では努力しているんだという認識に変わりました。

その時、自分も努力に努力を重ねれば、この人に追いつき追い越せるのではないかと思いました。私は「才能のせいにするやつは嫌いだ」とよく言います。それは、才能のせいにするということが「自分は努力をしない」という布石のように感じるからです。天才と言われるような人でも、裏では努力に努力を重ねているのです。

みなさんにもそう考えることをお勧めします。他人に対しても自分に対しても「能力=才能」で片付けないことです。

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◎室舘さんは弊誌『致知』をご愛読いただいています。創刊45周年を祝しお寄せいただいた推薦コメントはこちら↓↓◎

創刊45周年誠におめでとうございます。毎月『致知』を通して各界の一流の方々に触れ、「本物」「努力」「優しさ」「思いやり」の理想を示していただき、自分の人生の軸を見直すと共に、激励の言葉もいただいています。

「富国有徳」を目指す日本のリーダーに欠かせない一冊が『致知』であると確信しております。今後も一人でも多くの人に人物となるための一冊を届けていただくことを期待しています。

◇ 室舘勲(むろだて・いさお)
株式会社キャリアコンサルティング代表取締役社長。昭和46年青森県むつ市生まれ。高校卒業後に上京、20代の教育関連事業に約15年携わり独立。平成15年株式会社キャリアコンサルティングを設立。教育事業「しがく」「NEXUS」では向上心あふれる社会人・大学生がリーダーシップの基礎を学んでいる。就活支援「プレミアムスタイル」には年間4000名の大学生が登録。フジサンケイビジネスアイ・産経新聞社主催「日台文化交流青少年スカラシップ」審査員。致知出版社「東京都社内木鶏経営者会」会長。著書に『まずは上司を勝たせなさい』(講談社)などがある。

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