主婦から出発し、10年で454億円の借入金完済——経営再建の裏にあった社内改革【タイヨー副社長・清川照美氏】

鹿児島県を代表する有力企業であるスーパーマーケットのタイヨー。同社がかつて深刻な経営危機に陥った際、再建を主導したのが、清川照美氏です。多額の借入金、周囲の無理解……。経営者として幾多の危機に直面する中で、氏は何を意識し、再建を実現したのか。その一端を語っていただきました。

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当たり前のことを当たり前にやり続ける

——再建で意識してこられたことはありますか。

〈清川〉
管理職は全員決算書を読めることを目標に勉強してもらいました。あと、しっかり利益の出る会社にするために、無駄なことをしない。これを徹底しました。

例えば、以前は2フロア使っていた本部を1フロアに変えました。それまでは、1階と2階の社員がしょっちゅう内線で連絡をし合って、その場で済むような話をわざわざ日にちを決めて改めて話し合うようなことをしていたんです。

最初は反対がすごかったですよ。1フロアに全員(約200人)が収まるはずがないって。でも実際にチェックしてみると、使っていない机や椅子、書類、古いカタログなんかが山ほどあって、それを処分することでスペースが生まれ、全員が十分1フロアに収まりました。

私がフロアの真ん中に座っていますので、何かあればすぐに担当者を呼んで話ができ、仕事の効率は格段に向上しました。

——スピード感を持って仕事を進めていけるようになった。

〈清川〉
スピードはとても大切ですね。私たちは凡人です。でも同業者さんはすごい方たちが動かしているわけですから、そこで勝っていくにはスピードしかないと思うんです。

頭のいい方たちっていうのは、熟考するんですね。そこにどうしても時間がかかるので、私たちは先に走り出して、問題が起きたらその都度変えていく。そうしなければ勝てないと思ってやってきました。

社員には、「60点でいいから」って言いました。「大丈夫、私が責任を取ります」って。改革ってこれまでと違うことをやっていくわけですから、怖いと思うんですね。そこで「60点でいい」「責任は私が取ります」といえば、皆安心してどんどん前へ進んでいけると思うんです。

——その間も店舗巡回はずっと続けておられたそうですね。

〈清川〉
ええ。最初の頃は、現場へ行っても私が誰だか分からないんです(笑)。でもそれがありがたかったんですよ、実態が見えるから。例えば、一番忙しい夕方の時間帯に社員がバックルームでお弁当を食べていたり、指示した文書が貼られていなかったり。本当の姿を見て改善できるので、それはそれでよかったと思いますね。

それからパートさんにお話を聞くと、上司に言いにくいことをポロッと言ってくれたりします。特に消費者目線の意見はとても貴重で、ただデータだけ見て売れていない商品を安易に削除していくと、判断を誤ってしまうことに気づかされます。

冒頭で「すべての答えは現場にある」と申し上げましたけど、私はこんなふうに現場から上がってくるいろんな話を拾い集めて経営に生かしてきました。

——一つひとつの積み重ねで再建を成し遂げてこられたのですね。

〈清川〉
「主婦に何ができる」「素人にそんなことは無理だ」というのが世間一般の見方だと思います。

でも、勇気と覚悟を持って、当たり前のことを当たり前に、愚直にやり続けていけば、数字もちゃんとついてきて、会社はちゃんと復活する。MBOから10年間頑張り続けてきた私の実感ですね。


本記事では、深刻な経営危機に陥ったタイヨーの再建を主導してきた清川氏に、数々の試練を乗り越え掴んだ経営の秘訣、幸福の条件を伺いました。

◉『致知』11月号 特集「幸福の条件」◉
インタビュー〝「タイヨーの奇跡」は
こうして実現した〟
清川照美(タイヨー副社長)

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◆経営の素人が会社を再建
◆10年で454億円の借入金を完済
◆四面楚歌の会社再建
◆当たり前のことを当たり前にやり続ける
◆足るを知り、感謝ができれば、幸せは増す
◆日本は特別な国

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◇清川照美(きよかわ・てるみ)
1958年鹿児島県生まれ。スーパーマーケット、(株)タイヨーの2代目社長の妻として主婦業に勤しんでいたが、同社の監査役や取締役として経営に参画するようになる。2013年同社の危機に際してMBOを実施し、取締役副社長として社内改革を推進。10年で借入金454億円を完済した。2019年慶應義塾大学大学院MBA修了。タイヨー財団理事長、ケア・サポーターズクラブ鹿児島会長。著書に『崖っぷちの会社を立て直したスーパーな女』(ダイヤモンド社)『覚悟 未来に立ち向かう言葉』(日経BP)がある。

▼『致知』2023年12月号 特集「敬、怠に勝てば吉なり」
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