「いかに生きるかとは、いかにデザインするか」——水戸岡鋭治が語るデザインの人を動かす力

従来の概念を打ち破る発想で、鉄道デザインの世界に革命を起こしてきた水戸岡鋭治さん。鉄道、駅、公園、ホテル、カフェまで、全国各地から多種多様な依頼が殺到し、実際にJR九州の豪華旅客列車デザインは多数の賞に輝きました。そんな水戸岡さんが実践の中で掴んだデザインの秘めた役割について、同じく革新的なデザインで建築界を席巻した故・池田武邦さんと語り合っていただきました。

よいデザインは人を変える力がある

水戸岡さん&池田さんには表紙を飾っていただきました!

〈水戸岡〉
私自身はデザインというものを、「整理整頓」の作業をすることだと考えているんです。

〈池田〉
なるほど、整理整頓ね。

〈水戸岡〉
一般的な枠ではなかなか思い切ったことはできませんが、どうしてここはこんなにすっきりしたんだろうと感じる時、そこには必ず整理整頓をした人がいる。それが設計者であったり、デザイナーであったり、政治家であったりと立場の違いはありますが、デザインの力によって空間は変化していく。さらに、そこにいる人たちの意識までが変わっていきます。

だから私たちは現場に行くと、赤・黄・青の3つの紙を用意し、これはダメという部分には赤、注意には黄、OKには青を貼っていくんです。そうやって皆さんに一目で分かるようにし、色のバランスや形の統一、使い勝手などを調整していく。

要は整理・整頓・清掃・清潔・躾という5S、つまり日本の会社を立て直す時に用いられてきた5つを、デザインの中に持ち込んで実践していくんです。

〈池田〉
なるほど。

〈水戸岡〉
私がJR九州の仕事に携わった25年前には、日豊本線にせよ鹿児島本線にせよ、夜乗るとビールの空き缶が床をゴロゴロ転がったり、つまみが散乱したりしていて、酔っ払いがいっぱいいたんです。だから子供たちや女性もなおさら嫌がっていたんですね。でもその混乱した状態を整理すると、そういう振る舞いができなくなってくる。躾けられていくといいますか。

やっぱり環境によって人は育つもので、そこでマナーやモラルを身につけたり、ホスピタリティが生まれるところまでいくのでしょう。

デザイナーや設計者はそういった心地よい環境をつくることで豊かな時間と場所を提供し、それによって人の行いが変わる可能性を追求しているのだと思うんです。

〈池田〉 
確かにデザインというのは、凄いパワーを持っていますよね。いいデザインとそうでないデザインとでは接し方がまるで違ってくる。人を確実に変えていきますものね。その点ヨーロッパなどへ行くと、どこへ行っても感心します。

〈水戸岡〉
そうですね。伝統を大切に守っているだけではなく、常に時代に沿って進化していますから。

ヨーロッパが美しいのは、伝承されてきた結果からくるものであって、だからこそ最高のものを我われ大人がつくらなければいけない。

それぞれの人がそれぞれの立場において、どこまで全力できちっとした仕事を残すか。いいものがそこにあれば、子供たちはそれをいつかちゃんと理解して、次の時代に必ずよりよいものをつくり出してくれるはずです。

だからデザインというのは、本当は物凄く広範囲に及ぶ仕事ですよね。人はいかに生きるべきかという部分にまで関わってくるものではないでしょうか。

〈池田〉
おっしゃるとおりです。

〈水戸岡〉
いかに生きるかとは、いかにデザインするかということ。だから最も素晴らしいデザイナーはお母さんだと私は思うんです。つまり子供をデザインする。

最も上位でデザインする人は総理大臣。国家をどうデザインするか。その中で私は職人として家や電車の設計を担当したり、各人が美しい国や地球を守るための役割を果たしているのだと思います。


(本記事は月刊『致知』2013年5月号 特集「知好楽」から一部抜粋・編集したものです)

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◇水戸岡鋭治(みとおか・えいじ)
昭和22年岡山県生まれ。40年岡山県立岡山工業高校工業デザイン科卒業。47年ドーンデザイン研究所設立。建築、鉄道、街づくりなど幅広いジャンルのデザインに携わる。とりわけJR九州の車両、駅舎を多くデザイン。和歌山電鐵の「たま電車」、富士急行の「富士登山電車」なども手掛ける。国際鉄道デザインコンテスト「ブルネル賞」「毎日デザイン賞」「菊池寛賞」など受賞多数。著書に『旅するデザイン』(小学館)など。

◇池田武邦(いけだ・たけくに)
大正13年静岡県生まれ。昭和18年海軍兵学校卒業。太平洋戦争に参加、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦、沖縄海上特攻作戦に参加、乗艦「矢矧」撃沈され、漂流後、救助さる。24年東京帝国大学第一工学部建築学科卒業。山下寿郎設計事務所入社後、日本初の超高層ビル「霞が関ビル」設計チーフとして活躍。42年日本設計を設立。同社社長、会長、相談役名誉会長、ハウステンボス会長等を歴任。平成8年長崎総合科学大学地域科学研究所所長および教授、名誉教授。令和4年5月逝去。著書に『二十一世紀は江戸に学べ』(河出書房新社)『次世代への伝言』(共著/地湧社)など。 

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