2023年11月07日
月刊『致知』2021年11月号 対談「人望力は努力から生まれる」より
真殿知彦氏(海上自衛隊幹部学校長|写真左)と瀧澤 中氏(作家|写真右)
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キーワードは「人望力」と「努力」
ものすごく頭が切れて仕事ができるのに、周りがついてこず、ここぞという時に成果が出せない人がいる一方で、そこまで仕事はできなくても、周りの人たちの協力を得て大きな物事を成し遂げていく人がいる――。会社や組織でそのような例に接したことがある人は多いはずです。両者の違いはいったいどこにあるのでしょうか。
その答えを求めて、海将・海上自衛隊幹部学校長の真殿知彦氏と作家・政治史研究家の瀧澤中氏に縦横に語り合っていただいたのが、『致知』2021年11月号「努力にまさる天才なし」に掲載されている対談「人望力は努力から生まれる~強い人材と組織をつくるリーダーの心得」です。
真殿氏は、幹部自衛官を育成する海上自衛隊幹部候補生学校(旧・海軍兵学校)、指揮官・幕僚としての専門知識、幅広い教養を身につける海上自衛隊幹部学校、この二つの校長を歴任し、日本の海の安全を守る優れたリーダーの育成に情熱を注いできました。
瀧澤氏は、今東西の歴史や人物研究をもとに、リーダーシップ論や人材育成、組織づくりに関する数多くの著作を世に送り出してきました。それぞれの実体験や様々な歴史事例を交えながら、理想のリーダーはどうあるべきか、優れたリーダーになるためには何が必要なのか、ヒントが満載の対談となっています。
お二人の対談でキーワードとなるのが「人望力」です。どんな優秀な人でも決して一人では物事を成していけません。何をするにも多かれ少なかれ、周囲の協力が求められます。また、時には過酷な条件の中、不合理なこと、理不尽なことにも耐え、仕事や任務をやり抜かなければならないこともあります。
そのためには、「この人になら最後までついてきたい」「この人のためなら厳しいことにも耐えられる」と思わせる〝何か〟がリーダーに備わっていなければならない。それこそまさに周囲を魅了し、信頼を得る「人望力」に他なりません。真殿氏も瀧澤氏も、その「人望力」が土台にあってはじめて知識や技術も生きてくることを対談の中で何度も強調しています。
例えば、戦国武将の織田信長を例に、次のように述べています。
〈瀧澤〉
織田信長は「非情な人」というイメージが強いですが、実際はものすごく情に厚い部分がありましてね。本能寺の変の数年前、明智光秀が病気で臥せった時には「大丈夫か」とお見舞いの手紙を出し、光秀は甚く感激している。また豊臣秀吉は信長に心酔していて、信長の政策面だけでなく、その言動もよく真似しています。だから、物事を成す人物は、周りから「自分もこういう人になりたい」「真似したい」と思われるものを必ず何か持っているものです。
逆にそれがないと、どんなに知識や技術があっても、どこかで足をすくわれてしまう。信長が結局、本能寺の変で無念の死を遂げてしまったのは、その部分に慢心があったのだと思います。信長も最後は家臣を将棋の駒のようにぞんざいに扱ってしまった。それを感じ取ったから、明智光秀も「やがて自分は駒として捨てられるんだ」と謀反を起こす動機にもなる。
〈真殿〉
私も大人になってから信長が好きになり、『信長公記』は何度も読みました。確かに信長には冷酷、非情なイメージがあるんですけど、じっくり『信長公記』を読んでみると、意外なエピソードが出てくるんです。
例えば、信長が清洲城にいた頃に、地元のお祭りにお年寄りをたくさん呼んで団扇で煽いであげたり、お茶を勧めたりする話が出てきます。また、道中で見かけた障碍のある路上生活者にお金や住居を与えてあげる話もありますね。そういう情に厚い人だったからこそ、多くの人材が信長の元に集まり、あれだけの家臣団ができたのだと思います。
その他にも、真殿氏が防衛大学校時代に大きな影響を受け、いまも理想のリーダーとして仰ぐ土田國保校長のエピソード、海軍の鮫島具重とその部下・板倉光馬との生死を超越した信頼関係、「キスカ島撤退作戦」の偉業を成した木村昌福のリーダーシップなどを通じて、強い人材と組織をつくるリーダーの条件、心得に迫っていきます。
対談の最後、お二人が人望力あるリーダーになるために要諦としておっしゃったのが「努力し続ける」ことの大切さです。リーダーは自分を高めるために様々な書物に学ぶなどして日々誰よりも努力、修養を重ねている。「自分はまだまだだ、立派になろう」と決心して努力し続けている。そして歴史の偉人たちも、若い頃は失敗、挫折の連続だった。それを努力によって自らを鍛え、困難を克服し、後世に偉人と言われるようになったのだと。
経営者、管理職、団体の責任者……様々な立場でリーダーを務める、またこれからリーダーになっていく方にぜひ読んでいただきたい珠玉の対談です。全文は本誌をご覧ください。
◎本記事では、お二人のご体験、歴史事例を交えて、強い人材・組織をつくる要諦やいま求められるリーダーの条件などについてお話しいただきました。お二人のお話には、混迷を深める現代社会を生き抜く、リーダーシップの神髄が満載です。
◉『致知』2021年11月号特集「努力にまさる天才なし」◉
対談/〝人望力は努力から生まれる——強い人材と組織をつくるリーダーの心得〟
真殿 知彦(海上自衛隊幹部学校長)
瀧澤 中(作家)
※肩書等は掲載当時のものです
↓ 対談内容はこちら!
◆歴史はいまに連綿と繋がっている
◆原点になった父の満州体験
◆非合理になぜ耐えるのか
◆土田國保校長に学んだリーダーのあり方
◆土台に愛情がなければ人はついてこない
◆リーダーは見返りを求めてはいけない
◆規律と和諧の両輪が強い組織をつくる
◆そこにどのようなリーダーがいるか
◆努力し続ける姿が人望力をつくる
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◇真殿知彦(まどの・ともひこ)
まどの・ともひこ―昭和41年千葉県生まれ。平成元年防衛大学校を卒業後、海上自衛隊入隊。第2飛行隊長、第1航空隊司令、海上幕僚監部防衛課長、第2航空群司令などを経て、28年海上自衛隊幹部候補生学校長。29年統合幕僚監部防衛計画部副部長、30年横須賀地方総監部幕僚長。令和2年より海上自衛隊幹部学校長。
◇瀧澤中(たきざわ・あたる)
昭和40年東京都生まれ。作家・政治史研究家。日本経団連21世紀政策研究所「日本政治タスクフォース」委員などを歴任。自衛隊や経済・農業団体、企業などでの研修、講演会にも積極的に取り組む。著書に『「戦国大名」失敗の研究』『「幕末大名」失敗の研究』(共にPHP文庫)『秋山兄弟-好古と真之』(朝日新聞出版)『ビジネスマンのための歴史失敗学講義』『人望力』(共に致知出版社)がある。