「失敗というのは本当は失敗ではない」ノーベル物理学賞・赤崎勇教授が残した教え

青色発光ダイオード(青色LED)の開発に対する功績で、2014年のノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇・名城大学終身教授〈※当時/崎は「たつさき」〉が亡くなって半年。誰もが無理だと断じた難題に立ち向かったその人生は、失敗の連続でさぞ苦しいものだったと思われますが、ご本人の実感は少し違ったようです。不可能を可能にせしめた、研究者のマインドとは――? 対談のお相手は下村博文さんです

◉誰の人生にも、よい時と苦しい時があり、その時々で心に響く言葉は違う。仕事にも人生にも、真剣に取り組む人たちの糧になる言葉を――月刊『致知』のエッセンスを毎日のメルマガに凝縮! 登録特典〝人間力を高める三つの秘伝〟も進呈しております。「人間力メルマガ」こちら

ノーベル賞など少しも考えなかった

〈下村〉
青色LEDの開発の陰には、何千回にも及ぶ失敗があったと私も伺っています。

〈赤﨑〉
そのとおりです。

〈下村〉
それでも挫けることなく、続けられたのですね。

〈赤﨑〉
好きでやっていることですから、諦めようと思ったことはありません。先ほど大臣はいいことをおっしゃいましたね。人間は志、夢が大事だと。私も志が立たないと何も始まらないと思っているんです。

〈下村〉
ノーベル賞を取るというのも、赤﨑先生にとっての志だったのですか。

〈赤﨑〉
いや、そんなことは微塵も考えたことはございません。ノーベル賞といえば、私が大学に入った年に湯川秀樹博士がノーベル物理学賞をお受けになりました。1949年、まだ日本の食糧事情も悪い頃で、多くの人たちはノーベル賞という言葉すら意識せずに生きることだけに必死でしたが、私は湯川博士の受賞のニュースを聞いた時、ジーンときたのをいまも鮮明に覚えております。

湯川博士もそのお仕事も、その頃の私にとっては雲の上の話で全く縁がないことでした。だけど、たとえ小さなことでもいいから人がやれなかったこと、まだやっていないことに挑戦したいとは、ずっと思っていたんです。

松下の東京研究所に入って、幸之助さんの話を聞いたり、半導体の研究を続けたりするうちに、青色LEDがまだ世界にないことに気づきました。この時、「あっ、これだ」と思ったんですね。自分がやるべきはこれなんだ、と。それ以来今日に至るまで、他に心が動いたことはありません。

〈下村〉
青色LED一筋に、全くぶれずに今日までやってこられた。失敗をして落ち込むようなことはありませんでしたか。

〈赤﨑〉
失敗というのは本当は失敗ではないと私は思っています。失敗を多くすることはそれだけの経験を積むことです。ですから経験を積むほど、ピント外れな失敗はしなくなる。それだけ成功に近づき、自分の身についている。それは非常に大きな財産になるのではないでしょうか。

私は若い人によく言っています。失敗は恐れてはいけない、失敗しない人は成功もできない、成功者は誰だって失敗をしている、と。

体験に何一つ無駄なものはない

〈下村〉
いまの赤﨑先生の話をお聞きしながら私が感じたのは、一流と二流の人物の違いは、詰まるところ、一つのことをやり続けられるかどうかの差だということです。世の中に才能を持っている人はたくさんいますが、途中で諦めてしまったら、せっかくの才能も発揮できずじまいですからね。

〈赤﨑〉
おっしゃるとおりです。

〈下村〉
先ほどエジソンの言葉をとおして努力と汗の大切さを述べられましたが、たとえ自分は凡人だとしても、10年ぶれないで続ければ、その道でプロになれる。さらに十年続けると一流になれる。30年続けているとノーベル賞が取れる(笑)。

〈赤﨑〉
ははははは(笑)。

〈下村〉
その意味では志を抱いて前進することが大事なのですが、それは自分を追い込むこととはまた違うわけでしょう?

〈赤﨑〉
全然違います。

〈下村〉
好きなことをやれるというのは、それだけで幸せでしょうし、しかもそれが長く続けられるとなれば、最高に幸せな人生と言えるかもしれません。

〈赤﨑〉
私自身も仕事を苦痛と思ったことが全くありませんね。これまで様々な半導体の研究に取り組んできて、上手くいったものもあれば、いかなかったものもある。神戸工業時代、名古屋大学時代にはいろいろと遠回りをしたようにも思っていました。しかし、これらの研究が後の研究に生きることになり、最終的には青色LEDに結びついているんです。

やり方が分からないまま装置を手直ししたり、臆することなく様々な専門の先生方におたずねしたりして、がむしゃらに頑張ったことが研究者としてやっていける自信にも繋がりました。だから体験というものは何一つとして無駄にはなりません。

私は色紙を頼まれた時、二つの言葉を好んで書きます。一つは「研究に王道なし」、もう一つは真実を見るという意味の「見真」です。

〈下村〉
研究に近道などない、ということですね。

〈赤﨑〉
そのとおりです。どの研究にも王道はありません。学問をするのに楽な方法などないし、成功を手にしたいと思えば、誰でも愚直にコツコツと努力する以外にないんです。


(本記事は月刊『致知』2015年9月号 特集「百術は一誠に如かず」より一部を抜粋・編集したものです)

◇赤﨑勇(あかさき・いさむ)
昭和4年鹿児島県生まれ。京都大理学部卒業後、神戸工業(現・富士通)、34年名古屋大学助手、39年同・講師・助教授、松下電器東京研究所。48年から青色LEDの研究を開始。56年名古屋大学教授。60年に青色LEDの材料となる窒化ガリウムの高品質結晶を作ることに成功。平成元年に世界初のpn接合型窒化ガリウム青色/紫外LEDを発明。4年名城大学教授。26年天野浩、中村修二両氏とともにノーベル物理学賞を受賞。著書に『青い光に魅せられて』(日本経済新聞社)など。令和3年4月逝去。

◇下村博文(しもむら・はくぶん)
昭和29年群馬県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。平成元年東京都議会議員に初当選、2期7年を務める。平成8年の衆議院選挙で初当選。現在当選6回。文部科学大臣政務官、法務大臣政務官、自民党副幹事長、内閣官房副長官、衆議院法務委員長などを歴任。現在第2次安倍内閣のもと文部科学大臣、教育再生担当大臣を務める。著書に『世界を照らす日本のこころ』(IBCパブリッシング)など。

人間力・仕事力を高める記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 10,500円(1冊あたり875円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 28,500円(1冊あたり792円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

閉じる