新型コロナウイルスは軍事問題として対処せよ|櫻井よしこ×中西輝政

いまだ収束の兆しが見えないコロナ禍。日本はコロナ禍に対処しながら、オリンピック・パラリンピックを開催するという難問に直面しています。日本はいかにこの難問に向き合い、克服していけばよいのか――。インテリジェンスに精通する櫻井よしこさんと中西輝政さんが語り合う、日本が進むべき道とは。

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戦略なきところに道は開けない

〈中西〉
総じて言えるのは、現在の日本のリーダーたちは国民が背負うリスクに関しては非常に鈍感だということですね。法律の〝たてつけ〟がどうとか、後々訴訟が起こる可能性があるとか、自分たちの体面とリスクにばかり議論が傾いている。これはやはり精神的な意味での「国家の衰退」だと思います。

特に行政遂行能力、政府の統制力、国を纏めて一つの目標に向かって動かしていくという、昭和の戦後でも、日本のリーダーたちが持っていたよい意味でのがむしゃらなリーダーシップが確実に失われてきています。

半面、日本はすごく優しい国になりました。それはもちろんいい部分もあるわけですが、有事には大きなリスクを国民が背負わされるようになっている事実から目を背けてはいけないでしょうね。

〈櫻井〉
中西先生がおっしゃる通りだと思います。先ほどのお話と少し重なるのですが、日本にある非常に少量の限られたワクチンをいかに有効に活用するかという場合、中央政府はとにかく平等に分けることしか考えませんね。

最初、日本に入ったのは5万回分のワクチンです。それを47都道府県に人口割で配ることを決めました。もちろん人口の多い東京都と人口の少ない島根県では自ずと数は違いますけれども、フラットに5万回分を47都道府県で割ると、一つの県に1000回分、つまり500人分なんです。

果たしてそこにどれだけの意味があるのかということですね。私はここまで戦略が全くないことに、逆に危機感を覚えました。

加えて申し上げれば、昨年、武漢ウイルスが日本に蔓延した時、最初の対策会議に自衛隊関係者が誰もいなかったんですね。パンデミックは軍事問題そのものなのに、そのところの発想と危機感が全くありませんでした。国民をいかに守るかという基本の考えが諸外国とは決定的に違っていた。

今後、これを改めていかなければ、感染症大国・中国のすぐ隣にいる我われは大変な危機に直面しかねないんです。国家の危機管理という視点からも軍事の専門家、インテリジェンスの専門家を入れて対処する必要があることを、ここでひと言警告しておきたいと思います。


【全10ページ】月刊『致知』2021年7月号では、櫻井さんと中西さんに「日本を照らす光はあるか」と題して、最新の国際情勢を踏まえて日本が進むべき道筋について論を交わしていただきました◉


(本記事は月刊『致知』2021年7月号 特集「一灯破闇(いっとうはあん)」より一部抜粋・編集したものです

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◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスター等を経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年「国家基本問題研究所」を設立し、理事長に就任。23年日本再生に向けた精力的な言論活動が評価され、第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『言語道断』(新潮社)がある。

◇中西輝政(なかにし・てるまさ)
昭和22年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、米国スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。平成24年退官。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。著書に『国民の覚悟』『賢国への道』(共に致知出版社)『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)『アメリカ外交の魂』(文春学藝ライブラリー)『帝国としての中国』(東洋経済新報社)、近編著に『アジアをめぐる大国興亡史』(PHP研究所)他多数。

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