2021年05月15日
稀代の経営者・稲盛和夫氏の教えを指針に、人材教育家として数多くの人々の人生・仕事を好転させてきた井垣利英さん。稲盛氏が主宰していた「盛和塾」の塾生として、氏と交わした忘れ難き経営問答を、そこから得た気づきと共に振り返っていただきました。
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去る8月24日、稲盛和夫・京セラ名誉会長が逝去されました。35年前、1987年の初登場以来、折に触れて様々な方との対談やインタビューにご登場いただくのみならず、たくさんの書籍の刊行、数々のご講演を賜るなど、ご恩は数知れません。
生前のご厚誼を深謝し、月刊『致知』12月号では「追悼 稲盛和夫」と題して特集を組みました。豪華ラインナップは以下特設ページよりご覧ください。
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夢と希望を抱いて素直な心で
〈井垣〉
稲盛塾長との思い出は尽きることがありません。中でも忘れ難いのが、2016年に致知出版社から『仕事の神様が〝ひいき〟したくなる人の法則』を出版した際の出来事です。
光栄なことに本の帯に塾長から推薦のコメントをお寄せいただけたため、出来上がった本を持って御礼に伺いました。その時、「これから先、どうしたら私は伸びていけますか?」と素直に塾長に相談したところ、こうアドバイスをいただいたのです。
「井垣さんは、人間性はいいところまできた。後は利他心だけだ。そこを意識すれば必ず伸びる。生徒さんが少しでもよくなったら、とにかく褒めるように」
通り一遍の返答ではなく、私の人となりやこれまでの仕事を踏まえて助言してくださったのです。その真摯なお姿に深く感動をしました。
塾長の教えは、一つひとつはシンプルなものばかりです。しかし、それを実践し続けるのは非常に困難です。塾長ご自身も
「利他を実践するのは相当難しい。つい利己が出てきてしまうのが人間だから、皆のためにという思いを常に持ち、いかに利己を抑えて利他を出していけるか、自分に言い聞かせる努力をしなければならない。それが人間にとっての修業なんだ」
とおっしゃっています。
塾長ですら利他に生きる努力をされている。それならば、凡人である私は一生かけて利他心を意識し、実践し続けるしかありません。以来、「利他心」が私の人生のテーマとなっています。
塾長は近年、年齢的に第一線に立たれる機会が少なくなりました。だからこそ、塾長から私たちが直接教わった人生の真理を、次世代に伝えていかなければと思います。特に私自身が救われ、いまも大切にしているのが、「稲盛経営12カ条」の最終項目、「常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で」です。
現在、収束の見えないコロナ禍で不安を抱える方も多いでしょう。しかし、マイナスのことを考え出したらきりがありません。私は考え方次第で苦境を抜け出すことが絶対にできると信じています。