稲盛和夫の苦難の運命を好転させた「6つの修行」

京セラやKDDIを創業しそれぞれ大企業に育て上げ、「絶対不可能」と言われたJALの経営再建にあたっては僅か2年8か月で再上場へと導いた稲盛和夫氏。挫折続きだったという稲盛氏はいかにして運命を好転させ、経営の道を切り拓いてこられたのでしょうか。「6つの修行」のお話を2013年の特別講演より抜粋してお届けいたします。

【好評御礼】
『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」は、おかげさまで大反響、多くの感動の声をお寄せいただきました。皆様に心より御礼申し上げます。
稲盛和夫氏による秘蔵講話ほか、永守重信氏(日本電産会長)、野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)、山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究財団理事長)、長渕剛氏(シンガー・ソングライター)らが競演する永久保存版。
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善きことを思い、善きことを実行するために

〈稲盛〉
人生には確かに運命というものが存在します。その運命を自分で知ることはできませんが、自分が辿っていく人生というものは生まれた時から決められているものだと思います。私の前半生がそうであったように、挫折続きで、過酷な人生が運命で決められていることもあるかもしれません。

しかし、そのような人生の節々で、善きことを思い、善きことを実行していけば、運命はよい方向へと変わっていくのです。逆に人生の節々で悪しきことを思い、悪しきことを実行すれば、運命は悪い方向へと曲がっていくのだろうと思います。

では、いかに善きことに努めるか。

私はお釈迦様が説かれている「六波羅蜜(ろくはらみつ)」という6つの修行がまさにそのための方法ではないかと考えております。つまりお釈迦様が魂を磨き、心を高め、悟りの境地に到達するための修行として説いておられることが、まさしく私が申し上げた善きことに努めるということと同じことではないかと思っています。

「六波羅蜜」が教えてくれるもの

六波羅蜜の1番目は「布施」です。自分がいまあることに感謝をし、他に善かれかしと願、人様のために何かをして差し上げることです。その思いやりの心、優しい心を持って世のため、人のために尽くすということ、施しをするということが布施の意味です。

2番目は「持戒」です。戒律を守るということであります。人間としてしてはならないことを定めた戒めをひたすらに守っていくということです。言い換えれば、人間として何が正しいのかを問い、その正しいことを貫き、そしてしてはならないことはしないということ。それが持戒、戒を守るということであります。

3番目は「精進」です。人は生きていくためには働かなければなりません。働くということは厳然たる人生の鉄則であり、お釈迦様は、ただ一所懸命に誰にも負けない努力で働きなさいとおっしゃっています。それが精進であるとおっしゃっているのです。

4番目は「忍辱」です。恥を忍びなさいということ、苦しいことや辛いことも耐え忍びなさいということであります。人生は波瀾万丈であり、いまは幸せに思えても、いつ何どき苦難が押し寄せてくるか分かりません。その厳しい試練を耐え忍んでいくことが大切だということを教えていただいているのです。

5番目は「禅定」です。心を静かにすることです。荒々しい心のままでは心を高めることはできません。多忙な毎日を送る中でも心を静めることに努めなさいとお釈迦様は説いておられます。

6番目は「智慧」です。ここまでの5つの修行に日々懸命に努めていくことで悟りの境地、つまり偉大な仏の智慧に至ることができると言われております。 

先に申し上げましたように私は25~26歳の時に過去を振り返り、素晴らしい出会いがなければいまの自分はなかったことに気づき、感謝の念が芽生えてまいりました。そしてその時から、世のため、人のために尽くすために誰にも負けない努力を払い、人間として正しいことを貫き、試練に耐え抜き、時に心静かに反省を繰り返してまいりました。そのような生き方が奇しくもお釈迦様が説かれた六波羅蜜の修行に通じていたわけです。だからこそ苦難続きであった私の人生の歯車が逆回転を始め、大きく開けていったのだと思います。



◎2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」は、おかげさまで大反響をいただきました。稲盛和夫氏による12ページに及ぶ秘蔵講話をはじめ、永守重信氏(日本電産会長)、野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)、山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究財団理事長)、長渕剛氏(シンガー・ソングライター)をはじめ稲盛氏に縁ある方々の感動的な実話、証言が満載です。【バックナンバー詳細はこちら

◇稲盛和夫(いなもり・かずお)
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ(現在は閉塾)。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。


◇稲盛和夫さんから月刊『致知』へメッセージをいただきました

月刊『致知』創刊40周年、おめでとうございます。日本人の精神的拠り所として、長きにわたり多大な役割を果たしてこられたことに、心から敬意を表します。

『致知』は、創刊以来、人間の善き心、美しき心をテーマとする編集方針を貫いてこられました。近年、その真摯な姿勢に共鳴する読者が次第に増えてきたとお聞きしています。それは、私が取り組んでまいりました日本航空の再生にも似て、まさに心の面からの社会改革といえようかと思います。

今後もぜひ良書の刊行を通じ、人々の良心に火を灯し、社会の健全な発展に資するという、出版界の王道を歩み続けていただきますよう祈念申し上げます。

――京セラ名誉会長・日本航空名誉顧問 稲盛和夫

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