【限定連載 第1回】松下幸之助に学ぶ中博の経営問答 ——「真剣さから新たな知恵が生まれる」

松下電器産業(現・パナソニック)で経営の神様・松下幸之助の薫陶を受け、その教えの神髄を多くの人々に伝導している一般社団法人「和の圀研究機構」代表の中博氏。中氏はコロナ禍に直面するいまだからこそ、松下幸之助の教え、経営哲学はより一層の輝きと真理をもって私たちに迫ってくるといいます。本連載では、中氏に松下幸之助の教えや経営哲学を紐解いていただきながら、この危機を突破するヒント、日本再生の道筋を探っていきます。

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真剣さから新たな知恵が生まれる

あけましておめでとうございます。令和3年の新しい年が幕を開けましたが、昨年同様、新型コロナウイルスの感染拡大は留まるところを知らず、政府は再び緊急事態宣言の発令を検討している状況です。多くの方がこれからの生活、経営や仕事に不安を抱かれていることと思います。

しかし、このコロナ禍の中、昨年11月に海外の大きな芸術団体で唯一来日を果たしたのがかのウィーン・フィル・ハーモニー管弦楽団です。スタッフを含め総勢200名を超えるメンバーが、日本政府のバックアップを受けながらあらゆる感染症対策を行い、九州から東京まで全8回のコンサートを予定通り終えました。これは驚くべきことです。

私もサントリーホール(東京)に演奏を聴きに行ったのですが、席数を制限しているのかと思いきや、フルシート(満席)での開催でした。事前に「拍手以外のブラボーといった声は出さないようお願いします」というアナウンスがあり、客席を見渡したら一人残らず全員マスクをつけていました。ウィーン・フィルのメンバーも全員マスクをつけて登場し、舞台に上がってからマスクをとって演奏を始めました。異様な風景でしたが、演奏は静寂そのもので、雑音も全くない。そのため逆に会場全体に緊張感が漲り心から感動しました。また、演奏が終わった後も、観客はスタッフの指示のもと、決められたエリアごとに粛々と何のトラブルもなく退場していきました。観客のマナーもこれまで体験した演奏会で最高でした。

演奏もマナーもそうですが、それ以上に私が感動したのは、勇気あるウィーン・フィルとそれをバックアップした日本政府、あるいは観客たちが「ウィズ・コロナ時代」における生き方、仕事のあり方の素晴らしい見本を示してくれたということです。我われはこのコロナ禍においても、どのような状況であっても、創意工夫と一人ひとりの努力があれば、普段通り、いや、いつも以上のパフォーマンスを発揮できるということを彼らは見事に証明してくれたのです。

私が薫陶を受けた松下電器創業者・松下幸之助も「知恵を出せ!」といつも言っていました。それも〝本気〟〝真剣〟に知恵を出さなければといけないと。松下幸之助は〝真剣〟について次のように言っています。

「お前な、真剣というのは、ここに刃があるやろ。この刃の前で本気でやってなかったら、こうやって斬られてお前の首が落ちるんやで。首が落ちたら首から血が出るやろ。そういう情景を思い浮かべて、一所懸命にやるのが真剣や。お前らの真剣は、ただ頑張ってるだけや」

つまり、松下幸之助の〝真剣〟というのは一度負ければ首が落ちる、即ち命を取られるということです。松下幸之助はそういう覚悟で日々経営に向き合っていたのです。いまの状況も同じで、コロナ禍に負ければ我われ人類がこれまで築いてきた秩序、社会システムは崩壊します。ウィーン・フィルという世界ナンバーワンの演奏も、今回のような真剣さがなければ、永久に聴けなくなってしまう。

新型コロナウイルスが蔓延する以前は、これから先もあらゆるサービスや商品が当たり前に提供されると皆が無条件に信じていたはずです。それがいまや、ひっくり返ってしまいました。だから、我われは松下幸之助が言ったように本気、真剣になって創意工夫を重ね、新しい社会のあり方、システムをつくり上げていかなければならないのです。それは大掛かりな改革が必要なものから、ウィーン・フィルの演奏会のようなちょっとした創意工夫と努力で可能なこともあるでしょう。

例えば、東京上野にある老舗洋食レストラン「黒船亭」は、まさにいま「ウィズ・コロナ時代」のあり方を実現しようと真剣な挑戦を重ねています。レストランで直接食事ができないのなら、いっそのことオンライン・レストランをやろうと、事前にご予約いただいた方々に特殊な技術で冷凍保存、レトルトパックにした料理やワインを直送し、それを皆で食べながらオンラインで食事会や講演会などを行っているのです。いまでは、料理も厨房でつくってすぐに提供したものと、ほとんど遜色のないところまで技術的には可能になっているといいます。

黒船亭もまた真剣に考え、挑戦すれば必ず新たな可能性、地平が開けることを示してくれています。そして、お金も健康も人脈も何もないところから一代で松下電器を興し、数々の艱難辛苦を克服して世界的企業にまで育て上げた松下幸之助の言葉や経営哲学には、このコロナ禍を生き抜く知恵がたくさん詰まっています。いまこそ私たちは松下幸之助から学ばなければなりません。

松下幸之助は「困っても困らない」ということもよく言っていました。つまり困ってもそこで一所懸命に考えて、真剣に努力すれば新しい知恵が生まれ、困っていたことも困らなくなってしまうのだと。コロナ禍に右往左往している我われは、まだ困って、困って、困り尽くす、ということをやっていないといえるのかもしれません。ある意味、このコロナ禍というのは、我われが困って、困って、困り尽くして、克服する知恵を生み出さない限りは終わらないのです。

本連載では、私が直接・間接に学んできた松下幸之助の生きた言葉、経営哲学を実体験も交えながらご紹介することで、このコロナ禍、未曽有の危機をさらなる跳躍台とし、日本を蘇らせていく道筋を探っていきたいと思います。

連載第2回⇒「変革の時代こそ、人生・経営の使命を持て」
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『致知』2020年10月号では中氏が特集誌面にご登場! ウィズコロナ時代の経営・人生に生かす松下翁の経営哲学を上甲晃氏とご対談いただきました◆


王貞治氏、稲盛和夫氏、井村雅代氏、鍵山秀三郎氏、松岡修造氏など、各界トップリーダーもご愛読! あなたの人生、仕事、経営を発展に導く珠玉の教えや体験談が満載、月刊『致知』のご購読・詳細はこちら各界リーダーからの推薦コメントはこちら


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◇中 博(なか・ひろし)
昭和20年大阪府生まれ。44年京都大学経済学部卒業後、松下電器産業入社。本社企画室、関西経済連合会へ主任研究員として出向。その後、ビジネス情報誌「THE 21」創刊編集長を経て独立。廣済堂出版代表取締役などを歴任。その間、経営者塾「中塾」設立。令和2年には一般社団法人和の圀研究機構を立ち上げ代表を務める。著書に『雨が降れば傘をさす』(アチーブメント出版)がある。

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