「なぜ生きるか」より「どう生きるか」。経営コンサル25年、人間関係に苦しむ若き小宮一慶さんを救った名僧の言葉

『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』をはじめ数多の著書を世に出すのみならず、経営には業種を超えた原理原則がある――この指針のもと、大中小を問わず様々な業種のコンサルティングを行い、各業界から厚い信頼を得る小宮一慶さん。コンサルタントとしての25年近い歩みを形づくった原点は、20代後半から30代前半に掴んだ教えだと述懐されます。今回は『致知』の人気連載「二十代をどう生きるか」の中から、小宮さんが「人間関係の悩みをすべて吹っ切ることができた」というある言葉との出逢いについてご紹介します。

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名僧の言葉に、人間関係の解を見出した

〈小宮〉
自分で言うのもおかしな話ですが、私は還暦を迎えるまでは、膨大な量の仕事をこなしていました。

年に100回以上講演を行い、大阪のテレビ番組に月8本出演し、大学の教員、社外取締役と顧問をそれぞれ5社務める他、年間10冊の新刊本の執筆と最高で月16本の連載記事を持っていました。もちろん秘書の助けがあってこそでしたが、これだけの仕事量を10年近く続けられたのは、若い時に要領を覚えていたからに他なりません。

(東京銀行〔現・三菱UFJ銀行〕在職中、アメリカでMBAを取得後)28歳で帰国してからの数年間も、人間性を深める貴重な期間だったと、いまになって思います。

その頃、反(そ)りの合わない上司をどうしても好きになれず、苦悩の日々を送っていました。「嫌い」という個人的な感情に任せて行動してはいけないと自らを律する中で、世の中の本当の道理とは、普遍的な価値観とは何かを真剣に模索するようになったのです。

救いを求めて、様々な本を貪り読みました。まず手に取ったのが、安岡正篤先生の『論語の活学』で、これはいまでも執務机の傍らに置き、事ある毎に読み返しています。

儒教の基本的な教えを繙いたその本に、君子とはかくあるべしと明記されていたことは大変役立ちました。孔子は多くの弟子から慕われていますが、実は不遇な立場で苦労したことも多かったと安岡先生は解説しています。それを踏まえて『論語』を読むと、言葉一つひとつが沁み渡ってきたのです。

他にも、『菜根譚(さいこんたん)』をはじめとした中国古典、仏教などの思想書、松下幸之助さんの『道をひらく』といった経営哲学書を20代後半から30代にかけて読み漁ったことが、それ以降のご縁に繋がりました。

ある方にイエローハット創業者で、日本を美しくする会相談役の鍵山秀三郎さんを紹介していただき、鍵山さんの紹介で国民教育の父と呼ばれた森信三先生の著作『修身教授録』(致知出版社刊)に出逢えたのは僥倖でした。以来今日まで、『修身教授録』は座右の書として、幾度となく読んでいます。

上司との人間関係の悩みを吹っ切ることができたのは、ある言葉との出逢いに因ります。

「一隅(いちぐう)を照らす、これすなわち国宝なり」

東京・押上にある菩提寺(ぼだいじ)にお墓参りに行った際、偶然目にした伝教大師最澄(でんぎょうだいし さいちょう)の言葉です。

ぱっと目にした時には、「なるほど」としか思わなかったものの、入浴中に再び思い出し、「これだ」と自分の中で一つの解を得ることができたのです。

世の中は暗闇の中にある大きな迷路のようなもの。人を蛍に譬えるとすれば、蛍は自ら光り輝くことでその場を照らして生きる。何の迷いも抱かず、ただ一所懸命にその場を照らす。その情景が脳裏に浮かび、自分も「いま目の前のやるべきことをやろう」とそれまで3年近く苦しんだ悩みをすべて吹っ切ることができたのでした。

「なぜ生きるか」、考え尽くしたところで答えが出るものではありません。悩むよりも、「どう生きるか」を考えて行動する。“Why”よりも“How”が大事だと気づけたことは光明でした。

(本記事は月刊『致知』2020年10月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

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◇小宮一慶(こみや・かずよし)
昭和32年大阪府生まれ。56年京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。同行から派遣されダートマス大学タック経営大学院でMBA取得。本店でM&Aなどを担当した後、平成3年岡本アソシエイツに移籍し、同社取締役就任。8年小宮コンサルタンツ設立。著書多数。近刊に『どんなときでも稼ぐ社長がやっている経営習慣36』(日経BP)など多数。

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