お年寄りの曲がった背中も伸びる!? 注目のプライマリーウォーキング®に迫る

新年を迎え、健康維持のために散歩やウォーキングに取り組み始めた方も多いのではないでしょうか。しかし、せっかく歩くのなら、ひざや腰などに負担の少ない「正しい歩き方」を身につけたいもの。歩き方一つで、体の様々な疾患や不調を改善できることも明らかになっています。その代表的なメソッドである「プライマリーウォーキング」について、開発者で鍼灸・整体師の岡本啓司さんに解説してもらいました。

☆人間力を高める記事や言葉を毎日配信!公式メルマガ「人間力メルマガ」のご登録はこちら

代謝が向上し体の不調を改善する

鍼灸や整体などの治療家として長年の活動の末に、2008年に考案したのが「プライマリーウォーキング」(登録商標)という立ち方・歩き方・座り方のメソッドです。単なるウォーキング法ではありません。より少ない筋力で効率的に立って歩く、そして座り方にもひと工夫を加えるという健康・美容法です。

これを取り入れることによって、血液やリンパの流れがよくなり、代謝が向上するため、腰痛、肩こり、股関節障害、ひざ痛、猫背、外反母趾、O脚(おうきゃく)、むくみなど、体の様々な慢性疾患や不調を改善できることが、プライマリーウォーキングを推奨している多くのクリニックなどで証明されています。

このプライマリー(primary)には「初歩」や「基本」といった意味があり、赤ちゃんの「初期歩行」とも訳せます。筋力の弱い赤ちゃんや幼児がどのように立ち、歩いているのかについて分析したところ、左右の足先が少しだけ外に開き、重心がかかとの上になっていることが分かりました。

高齢者に限らず、ゴルフやテニスなどのスポーツ障がい者にもいえることなのですが、痛みを抱えている人は、誤った体の使い方や立ち方・歩き方をしていることが少なくありません。その結果、筋肉に力が入って体に歪みが生じ、血管やリンパ管が圧迫され、最も弱い部分に痛みや障がいが生じてくるのです。

そこで、日常の立ち方や歩き方のフォームから変えることに着目し、腸腰筋(腸骨筋と大腰筋)と呼ばれる筋肉の動きなども含めて研究を進め、プライマリーウォーキングに辿り着いたのです。今回は「立ち方」「歩き方」に絞ってご説明します。

つま先は60度、体重はかかと側に

【立ち方】
日本人に多いのは、つま先に体重が乗った立ち方です。これでは体が前方に倒れようとするため、それを起こそうと上半身が緊張して肩がこったり、腰も反ってしまうため腰痛の原因になります。そこで、体重をかかと側にくるよう意識してください(体重を後ろに乗せることではありません)。

つま先の角度も大事なポイントです。両足のかかとをつけて立ち、つま先を60度に開いてください。植物の若葉のような形をイメージするとよいでしょう。その上で体重をかかと側にすると、体に余計な力が加わらないため、体全体の筋肉をほとんど使うことなく立つことができます。

【歩き方】
歩き始めの練習をしましょう。最初のポーズは「片ひざ曲げ」です。片脚のひざを曲げて、ひざ下を後ろに上げます。地面に着いたままのもう一方の足は、かかとに体重を乗せることを忘れないでください。

2つ目のポーズは「伸びる」。後ろに上げていた脚の力を抜くと、自然に前方へと伸びます。脚を前に出そうとする必要はありません。軸脚はひざを曲げたりせず、まっすぐ伸ばしてください。

3つ目のポーズは「落ちる」。前方へ伸びた足は地面に着地します。実際にはかかとから地面に着くのですが、「足裏全体で着地する」イメージを描いてください。この時、脚を無理に前に出そうとせず、振り出された位置で脱力して落とすことが大切になります。

歩き方の4つ目のポーズは「乗る」。股関節から脚を伸ばすイメージで、脚が体の後ろに残るよう意識してください。ひざが曲がり、脚が前に出るようなことのないよう心掛けることも大切です。

鍛えない、頑張らない、力を入れない

それではプライマリーウォーキングを取り入れることによって、どのような効果が得られているのか。その一例が老人性円背(えんぱい)です。加齢により、椎間板が弱くなって背骨が変形したり、骨粗鬆症に伴う圧迫骨折によってだんだんと背中が曲がってくる病気ですが、プライマリーウォーキングを取り入れることによって多くの高齢者が改善しています。

通常、高齢者に対する指導法としては、筋肉や柔軟性を維持するためのストレッチを勧めるケースが多いようですが、私が提唱しているのは、「いまある体を上手に生かし切り、効率よく使いましょう」というのが骨子です。無理は禁物、「鍛えない、頑張らない、力を入れない」でいいのです。

他にもプライマリーウォーキングは、様々な体の悩みを解決する方法として注目されています。例えば、脚に血液がたまって血管が浮き出た状態になる下肢静脈瘤。あるクリニックで、かかとの上に重心を置く立ち方と歩き方を実践したところ、静脈瘤のサイズダウンやむくみ・だるさが解消され、日本抗加齢医学会でも発表され注目されています。

医療からスポーツまで広くお役立ていただけるプライマリーウォーキング。人生100年時代、課題となるのが健康寿命の延伸であり、寝たきりにならないための自立歩行の確立でしょう。

プライマリーウォーキングは、医学のちょっとした“隙間”を埋める健康・美容法の一つと捉えています。その普及を通して、「日本の医療費削減に貢献する」ことが私の目標であり使命であると考えています。

(本記事は月刊『致知』2019年12月号の連載「大自然と体心」の一部を抜粋・編集したものです。あなたの人生、健康、仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇岡本啓司(おかもと・けいじ)
昭和41年大阪府生まれ。野球の強豪校、横浜高校と駒澤大学の硬式野球部で活躍。大学卒業後、平成2年鍼灸・整体・運動指導の治療院「岡本流身体調整研究所」を開設。22年プライマリーウォーキング指導者協会を設立、医師・柔道整復師・理学療法士らを中心に150名の指導員を育成。大阪府高齢者大学校講師。『プライマリーウォーキングで歩けば若返る!』(三笠書房)『「かかと体重」で歩くと血流がよくなり脚の悩みは9割解決する』(ゴマブックス)など著書多数。

人間力・仕事力を高める記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 11,500円(1冊あたり958円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 31,000円(1冊あたり861円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

人間力・仕事力を高める記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

閉じる