2019年10月21日
パソコンやスマーフォンなどの普及によって、慢性的な頭痛、肩こり、腰痛といった不快な症状に悩まされる人が増えています。そうした症状を「うつぶせ」健康法で改善に導いてきたのがリハティスプラス代表の乾亮介さんです。乾さんに「うつぶせ」健康法の効果と実践方法を分かりやすく解説していただきました。
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うつぶせの驚きの効果
(乾)
背骨はもともと構造的に曲がりやすい上に、日常生活の動作では体を曲げる動きが多いので、必然的に背骨が前に弯曲しがちです。そのため、うつぶせを習慣にし、体を真っすぐに伸ばすメンテナンスを日常的に行うことが大切です。
ではなぜ、あおむけではなく、うつぶせなのでしょうか。それには重力が影響しています。あおむけでもリラックスはできますが、肋骨に圧が掛かり、理想的な呼吸ができません。うつぶせになることで背中に縦に走る肋椎関節に掛かる圧迫が取り除かれ、肋骨が広がりやすくなって深い呼吸がしやすくなります。寝たきりの人が浅い呼吸になってしまう理由は、背中が常に圧迫されて肋骨の動きが制限されているからです。
うつぶせの効果は人によって異なりますが、私にとって意外だったのが睡眠の質が改善された、寝つきがよくなったなど、睡眠に関する嬉しい体験談が非常に多く寄せられたことでした。また、妙に落ち着いた、リラックスできたという声も寄せられています。
それらの理由は呼吸にあります。猫背の人をイメージすると分かりやすいのですが、姿勢が悪いと肋骨や胸が詰まり十分な呼吸ができず、睡眠障害や自律神経の乱れといった弊害が表れてくるのです。
理想的な呼吸とは、肋骨がよく動く深い呼吸のことで、普段使っていない肺の奥にまで酸素をたくさん取り込むことができます。呼吸が改善されリラックスできるようになると、次のように様々な効果が期待できるのです。
筋肉がほぐれて血流がよくなるため「腰痛、肩こりが軽減する」「血圧が下がる」。胸部が広がるため「猫背が改善する」。股関節が伸びて「歩行が改善される」。全身が弛み、筋肉の緊張が取れるので「疲れが取れやすくなる」。呼吸が深くなり「緊張がほぐれてリラックスできる」。頭が休まり、足先まで血流がよくなることで「冷えが改善される」「睡眠の質がよくなる」。
うつぶせの姿勢は体のリセットポーズだと考えてください。姿勢が改善されることで、理想的な呼吸ができるようになり、副次的に体の不調も改善されていくのです。
うつぶせ寝のやり方
- 基本のポーズ
うつぶせ姿勢になり寝そべるだけです。それでも辛い方は30秒から始めて、慣れてきたら夜寝る前や朝起き上がる前に1分間行ってください。苦痛でなければ1分以上行っても大丈夫です。
- ポイント
1、顔は楽な方に向けます。辛くなければ時々反対の方向を向くとなおよいでしょう。両手は重ねておでこの下に置いてもいいし、肩や腕が悪い人は手を下ろしても構いません
2、布団やベッドの上でもいいですが、筋力が弱い人は畳や絨毯の上など、柔らか過ぎない場所で行ってください。ヨガマットでするのもいいでしょう
3、足の向きは必ずしも揃える必要はありません
4、腰痛や反り腰、猫背の強い人など、うつぶせに痛みが伴う場合は、お腹の下に枕やクッションを入れてください
5、それも難しい方は、横向きになって半うつぶせ姿勢をとります
体勢が取れたら、肋骨が動いて背中が広がるのを感じながら呼吸に意識を向けてください。
うつぶせ姿勢で寝ることには賛否両論がありますが、絶対だめとは言い切れません。事実、普段からうつぶせ姿勢で寝る方が約2割いるといわれています。乳幼児は特に注意が必要ですが、大人は首や肩、腰を痛めない程度に注意しながら行うようにしてください。
お年寄りなど、猫背のきつい方はうつぶせになるだけで伸びている感じがするかもしれませんが、健康な人には物足りない方もいるでしょう。その際はうつぶせでするエクササイズをおすすめします。
- うつぶせエクササイズ
~太腿のストレッチ~
太腿裏とお尻の筋肉を強化し、前太腿をストレッチします。
1、うつぶせになり、両手を重ねておでこをつける
2、つま先を伸ばして、息を吐きながらゆっくりと左右交互に足を曲げ、元に戻す
3、慣れてきたら、できる範囲で踵をお尻のほうに静かに近づける
左右10回ずつ、1日2セット行ってください。腰痛のある人は、膝が直角に曲がる程度までで大丈夫。無理をすると腰痛が悪化する場合があるので要注意です。
このエクササイズを続けると、歩幅が広くなり、歩行スピードも自然に上がります。また、股関節の緊張がほぐれる他、骨盤の傾きのバランスも取れるため、姿勢改善に繋がります。
~お尻と腹筋の強化~
太腿裏と、大殿筋というお尻の筋肉を鍛えることで、前太腿の緊張を和らげることができます。息を吐きながら行うことで、腹圧を高める練習になります。
1、うつぶせになり、両手を重ねておでこにつける
2、両足(股の部分)を90度に開く
3、膝を90度に曲げる
4、両足の踵を合わせ、息を吐きながら息が続くまで(3秒~5秒ほど)押し合う
5、踵を合わせたまま、押す力を緩める
これは踵を合わせてグゥーッと押し合う運動で、体は動かしません。押し合うだけでもお尻と太腿裏の筋肉に力が入り鍛えられるのです。お尻、お腹、踵の3点が引き締められていることを感じながら行ってください。
(本記事は月刊『致知』2019年9月号「読書尚友」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら)
◇乾亮介(いぬい・りょうすけ)
昭和53年大阪府生まれ。平成13年関西医療学園専門学校理学療法学科卒業。同年4月に理学療法士国家資格取得。医療法人宝生会PL病院リハビリテーション科に16年間勤める。24年には畿央大学大学院健康科学研究科にて修士号(健康科学)を取得。ピラティスインストラクター資格を取得後、29年4月に独立して予防医学サロン&ピラティススタジオ「リハティスプラス」を開く。著書に『うつぶせ1分で健康になる』(ダイヤモンド社)がある。