2019年08月02日
「帝王学の書」として日本でも古くから読み継がれ、北条政子や徳川家康といった長期政権の土台を築いたリーダーたちも深く帰依したという中国の古典、『貞観政要』。そこに記されているのは、300年という長期政権を実現した唐王朝の発展の基礎を築いた2代目・太宗とその家臣との間で交わされた白熱した問答の数々です。
この度、致知出版社では、東洋思想家の田口佳史先生を講師にお招きし、「人生と経営の極意を『貞観政要』に学ぶ」をテーマに、今年9月から来年1月まで毎月1講、全5講の日程で連続講座を開催します。なぜいま『貞観政要』なのか。『貞観政要』を通じて、どんなことが学べるのか。本講座の魅力も含めてご紹介します。
◉田口佳史先生による連続講座◉
「人生と経営の極意を『貞観政要』に学ぶ」
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常に最善の君主を目指した唐の太宗
長い中国の歴史の中で名君と謳われた人物が2人いました。1人は清王朝の雍正帝、もう1人が唐王朝の太宗です。その太宗は300年続いた唐王朝の基礎をつくった2代目皇帝であって、本講座のメインテキストとなる『貞観政要』(全10巻40篇)とは太宗と家臣たちとの間で交わされた対話をまとめたものです。
対話とはいっても、「諫議大夫」と呼ばれる魏徴、房玄齢、杜如晦、王珪らの直言を真摯に受け止めながら、常に最善の君主たろうと、自己を律し続けた太宗とのやり取りが克明に描かれた白熱の問答集といってもよいでしょう。
『貞観政要』が編纂されたのは、太宗が亡くなって50年後のことで、史官の呉兢によって四代目皇帝・中宗に献じられました。
日本に初めて『貞観政要』が伝わったのは桓武天皇の時代に入ってからのことで、以来、歴代天皇をはじめ、北条、足利、徳川といった幕府の為政者たちが「帝王学」の古典として学んできたのです。
260年続いた江戸幕府の基礎を築いた徳川家康も学んでいた
本講座の講師である田口先生は、『貞観政要』とは「長期政権づくりのコツ」、つまり組織を立ち上げ、長期にわたって安定と平和を維持しながら運営していくために必要な、時代を超えて変わらぬ「組織論・リーダーシップ論の真髄」が語られた書だとしています。
ではなぜ、『貞観政要』は1000年以上の時を超えて、いまなお読み継がれてきたのでしょうか。その理由として田口先生は、たいへん具体的に、リアルに当時の状況が実感でき、しかも誰にでも分かるように、長期にわたって組織を安定経営するコツが描かれているからにだと言います。実際、太宗は君主となって以来、国力を充実させると同時に、理想的な政治を行い、長期政権の基礎を盤石にしました。その治世は「貞観の治」と呼ばれ、最高の評価を与えられたのです。
『貞観政要』を重んじた北条幕府や江戸幕府が十数年続いたのに対して、この『貞観政要』と明らかに関係がなかった織田氏や豊臣氏の時代が短かったのには何らかの相関関係があるようです。特に徳川家康に至っては、『論語』以上に『貞観政要』を重視していたそうです。『貞観政要』には太宗と諫議大夫との間で交わされた、「君主とはどうあるべきか」「正しい国家とはどうあるべきか」についての徹底的な議論が、生々しく採録されています。それだけに、面白くもあり、応用・実践の役に立つと田口先生は指摘しています。
『貞観政要』に学ぶ「長期政権づくりのコツ」
ここで注目しておきたのは、太宗という人物は、いわゆる「聖人君子」とは趣を異にしていたということです。リーダーが陥りやすい「落とし穴」に何度も片足を踏み入れそうになるのです。その「落とし穴」にはまらないように家臣たちが意見を述べるのです。そのせいでしょうか。『貞観政要』には古典にありがちな「説教臭さ」があまり感じられないため、私たちも共感するような場面が随所に見られると田口先生は言います。
『貞観政要』で最も見倣うべきは、太宗が「ご意見番」ともいうべき諫議大夫の直言をよく聞き、怒るどころか心から感謝して受け入れ、改めるべき点を改めたところにあるといえるでしょう。そしてその過程こそが、「長期政権づくりのコツ」を学べることに繋がるのです。つまりは会社経営における安定経営のヒントを学べるのです。
『貞観政要』は古来、君主に対して説かれたものとして、一般庶民には広がりませんでした。しかし、現在では政治体制も大きく変わり、会社組織が多数存在するようになったことから、組織のトップが学ぶべきものとして『貞観政要』を読む価値がどんどん高まっているのです。リーダーとはどうあるべきかを明確に示した『貞観政要』は、時代を超えて、上に立つ者のなすべきことや心得が記された最高の書として今日まで大切に語り継がれてきたのです。
時代を超えた「最高の書」を紐解く
本講座では、『貞観政要』を通じて、人生と経営の極意を全5講にわたって学んでいきます。田口先生はこれまでに2000社以上の経営指導にあたられ、その指導の基盤に置いてきたのが中国古典でした。さらに講義内容が大変分かりやすいと受講生からも好評です。
過去の歴史上の偉人たちが真摯に学んできたリーダーのための帝王学の書『貞観政要』。いかに時代を超えようと、その真価はいささかの揺らぎもありません。その要諦を田口先生と一緒に紐解いていくチャンスですので、ぜひこの機会に本講座に参加されてみてはいかがでしょうか。
◇田口佳史(たぐち・よしふみ)
昭和17年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、日本映画新社入社。47年イメージプランを創業。東洋倫理学、東洋リーダーシップ論の第一人者として知られる。著書に『人生に迷ったら「老子」』『横井小楠の人と思想』(ともに致知出版社)など多数。