2019年03月21日
新鮮な魚介をお手頃な値段で堪能でき、リピーターが後を絶たないグルメ回転寿司「銚子丸」。その人気の礎を築いた銚子丸社長(当時)の堀地速男さんに、事業発展の要諦を伺いました。
持つべきは理念を果てしなく追求するエネルギー
〈堀地〉
理念が必要なのは事業だけではなく、人生もまた同じなのではないでしょうか。
私はよく思うんです。美人、美男子であれば幸せになれるのか、高学歴だと人生はうまくいくのか。いや、そうじゃないと。結局残るのは、その人柄や人物だと。つまりそこにはその人がどのような志を抱き、どのような思いと情熱で人生を生きているかが問われるということです。
――企業に理念が必要なように、生きる上で志が大事だということですね。
〈堀地〉
私がそのことを考えるようになったのは、20代の頃に出会った安岡正篤先生の影響が大きかったと思います。ある時、先生が出されていた『師と友』を偶然読み、ぜひ先生に会ってみたいと思うようになりました。それで当時東京の大手町などで開かれていた「照心講座」に熱心に足を運ぶようになったのです。私にとってはとても貴重な時間でした。
先生は「私の講義は遊学です」と前置きされて、約1時間半の講義の間、歴史や古典、人物学、哲学などいろいろな話を織り交ぜながら話されました。
その中で私が何かを学んだとしたら、やはり何かを求めていく姿勢だったのではないかと思います。お話を聞くうちに、不器用な自分でも何かができるという思いが湧いてくるのを感じました。
――人生の根本を学ばれた。
〈堀地〉
とはいうものの私もこれまで30年商売をやってきて、理念の大切さを知り商売というものの本質がなんとか分かってきたのは10年ほど前です。それまでは儲けに走ったり、いろいろな紆余曲折を経てきました。
自分の仕事と照らし合わせながら、人生も商売も決して名声や富といったものではなく、どのような思いを持ち、人にいかに影響を与えられたかではないかと最近になってつくづく感じています。
――そう考えると、事業においても外に目を奪われずに常に自己に立ち向かう厳しさが必要になってきますね。
〈堀地〉
そのとおりです。先ほども申し上げたとおり、企業を成長させるには常識を覆すだけのものがなくてはいけません。問題はそれを追いかけるだけのエネルギーがあるかどうかです。追うエネルギーがない会社はすぐに駄目になってしまう。
当社の場合でいえば、お客様に真心を提供するという企業理念を果てしなく追っていくだけのエネルギーが必要ですし、その中から常識を破っていく知恵と勇気が出てくると思っています。もちろんまだまだ勉強中の身ですから、これからそれを実証していきたいと思っているわけですが。
――常に前進していこうという強い情熱が伝わってきます。
〈堀地〉
やはり青い鳥は捕まえちゃ駄目ですね。捕まえて満足してしまっては、そこで終わってしまう。だから人生も商売も常に未完でなくてはならないんです。
(本記事は『致知』2008年5月号「工夫用力」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、仕事の糧になる言葉、教えが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら)
堀地速男(ほりち・はやお)
昭和16年富山県生まれ。会社勤務を経て52年玩具店、飲食店経営を目的としてオール(現銚子丸)を設立。54年持ち帰り寿司業態に転向、60年回転寿司第1号店を千葉県浦安市にオープン。