ライフネット生命創業者・出口治明が大事にしている「4つのP」

幼少期より古今東西の名著・古典に親しんできたJFEホールディングス特別顧問の數土文夫さんと、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さん。現代の碩学ともいえるお二人がリーダーに伝えたい古典の教えとは??

勉強でも仕事でも大切な4つのこと

〈數土〉 
せっかくの機会ですから、
出口さんがこれまで特に心に留めてきた古典の言葉をお話しいただけますか?

〈出口〉 
『貞観政要』に出てくる三鏡(銅の鏡・歴史の鏡・人の鏡)の教えは、僕の座右の銘の一つであり、これはぜひ若いリーダーに伝えたいですね。

「太宗、嘗て侍臣に謂いて曰く、
 夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正す可し。
 古を以て鏡と為せば、以て興替を知る可し。
 人を以て鏡と為せば、以て得失を明かにす可し。
 朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過を防ぐ」
 
第一に、鏡に自分の姿を映し、
元気で明るく楽しい顔をしているかどうかを確認する。上司が暗い顔をしていたら、職場の空気が淀み、部下が伸び伸びと働くことができなくなってしまう。
 
第二に、将来を予測する教材は過去の出来事しかないので、歴史を学ぶ。
歴史を学んでいなければ、何か起こった時に慌てふためいてしまう。
 
第三に、部下の厳しい直言や諫言を受け入れる。また、自分の周囲にそういう人を配置しないと、裸の王様になってしまう。
 
この三鏡の教えはシンプルかつ永遠の真理だと思います。
 
數土さんはいかがですか?

〈數土〉 
私は先ほど述べた「兼聴と偏信」に加えて、『論語』に出てくるこの言葉が好きです。

「道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝に游ぶ」(人として正しい道に志し、これを実践する徳を本とし、仁の心から離れないようにする。そうして世に立つ上に重要な芸に我を忘れて熱中する)
 
芸というのは、礼(作法)・楽(音楽)・射(弓術)・御(馬術)・書(書道)・数(数学)から成る六芸のことを指します。
古代中国では身分ある者にこれらの基本教養が必要とされていました。

〈出口〉 
要するに、リベラルアーツの東洋版ですよね。

〈數土〉 
先日、ノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑先生は、まさにこの言葉通りの方ですよ。世の中の役に立つ仕事がしたいという志を立て、真剣かつ誠実な姿勢で研究に打ち込む傍ら、ゴルフも欠かさない。芸に遊んでいる。実に立派な方だと感激しました。

〈出口〉
いまの『論語』の言葉に関連しますが、僕は最近、「4つのP」が大事だとよく学生たちに言っているんです。

〈數土〉
「4つのP」ですか?

〈出口〉
どんなことをやるにしてもまずパッションがないといけない。何が何でもこれをやりたいという情熱ですね。

次に何を目指すのかという目的がなかったらいけない。プロジェクトですね。

情熱と目的があっても、一人だけでは決して成し遂げられません。ピア、仲間がいる。

そして、最後はプレイ、遊び心。肩肘張って生真面目に頑張るだけでは疲れてしまうので、ユーモアやちょっとふざけたような遊び心がないと長続きしない。
 
勉強でも仕事でも、この「四つのP」がないとうまくいかないと思っています。

(本記事は『致知』2018年12月号「古典力入門」より一部を抜粋・編集したものです。『致知』には人間力・仕事力を高める記事が満載!詳しくはこちら)

◎教養を磨く「四書五経」名言集

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數土文夫(すど・ふみお)
1941年富山県生まれ。1964年北海道大学工学部冶金工学科を卒業後、川崎製鉄に入社。常務、副社長などを経て、2001年社長に就任。2003年経営統合後の鉄鋼事業会社JFEスチールの初代社長となる。2005年JFEホールディングス社長に就任。2010年相談役。経済同友会副代表幹事や日本放送協会経営委員会委員長、東京電力会長などを歴任し、2014年よりJFEホールディングス特別顧問。

出口治明(でぐち・はるあき)
1948年三重県生まれ。1972年京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年退職。同年ネットライフ企画㈱設立、社長に就任。2008年ライフネット生命保険㈱を開業。2012年東証マザーズ上場。2013年会長(2017年退任)。2018年1月より立命館アジア太平洋大学(APU)学長。著書に『全世界史(上下)』(新潮文庫)など多数

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