2018年11月20日
人生と仕事の真理「三鏡」の教え
『致知』2018年12月号「古典力入門」にてJFEホールディングス特別顧問の数土文夫さんと対談していただいた、ライフネット生命創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務める出口治明さん。
経営者から教育者へと転身した異色の経歴を持つ出口さんですが、幼少期より古今東西の古典に親しみ、その教えを仕事や人生に生かしてきた大変な読書家であることでも有名です。今号では、同じく古典に造詣が深い数土文夫さんと『平家物語』『管子』『貞観政要』『韓非子』など、様々な古典の教えや魅力について縦横に語り合っていただいています。
その出口さんの座右の書の一つが、『貞観政要』です。その原文を初めて読んだのは30歳頃のことだったそうですが、出口さんは同書について、ビジネスのすべてのエッセンスが描かれており、リーダーや組織がどうあるべきかを学んだと述べられています。
そして、出口さんは『貞観政要』の中で特に若いリーダーに伝えたい教えとして、次の「三鏡」を挙げています。
「『太宗、嘗て侍臣に謂いて曰く、
夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正す可し。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知る可し。
人を以て鏡と為せば、以て得失を明かにす可し。
朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過を防ぐ』
第一に、鏡に自分の姿を映し、元気で明るく楽しい顔をしているかどうかを確認する。
上司が暗い顔をしていたら、職場の空気が淀み、部下が伸び伸びと働くことができなくなってしまう。
第二に、将来を予測する教材は過去の出来事しかないので、歴史を学ぶ。
歴史を学んでいなければ、何か起こった時に慌てふためいてしまう。
第三に、部下の厳しい直言や諫言を受け入れる。
また、自分の周囲にそういう人を配置しないと、裸の王様になってしまう。
この三鏡の教えはシンプルかつ永遠の真理だと思います」
出口さんが言うように、古典はシンプルでありながら、仕事や人生のあらゆる場面に通用する普遍の真理を語ってくれています。人工知能など科学技術が進歩し、どんどん世の中が変わっていくいまだからこそ、私たちは改めて古典の教えに向き合っていく必要があるのではないでしょうか。
他にも、出口さんは対談の中で「幼少期の家庭環境と古典との出逢い」「『貞観政要』に学ぶ謙聴と偏心」「古典は逆境を乗り越える力を与えてくれる」「いまの時代こそ古典に学べ」など、古典をどう読み、どう仕事や人生に生かすのか、実体験を交えて分かりやすく語ってくれています。続きは、本誌をお読みください。
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出口治明(でぐち・はるあき)
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1948年三重県生まれ。1972年京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年退職。同年ネットライフ企画㈱設立、社長に就任。2008年ライフネット生命保険㈱を開業。2012年東証マザーズ上場。2013年会長(2017年退任)。2018年1月より立命館アジア太平洋大学(APU)学長。著書に『全世界史(上下)』(新潮文庫)など多数。