読書が人を強くする——稀代の碩学・渡部昇一の読書論

いま日本人の読書離れ、活字離れが急速に進んでおり、一説には1日の読書時間ゼロの学生が全体の半分にも達しているともいわれます。人間はなぜ読書をするのか、そして読書は私たちの人生や生き方にどう影響してくるのか――。ともに読書によって人格を高め、人生を深めてきた稀代の碩学・渡部昇一さん(故人)と約23万人の自衛隊を率いる統合幕僚長の河野克俊さんに語り合っていただきました。 

読書によって人は成長し続ける

(渡部)

先ほどお話しした『渡部昇一一日一言』の11月24日に、「読書が人を強くする」というタイトルでこう書いているんです。

 「絶えず本を読むことです。人生について書かれたものや、成功譚というのは、やはりその人の長い人生での経験がつまっているものですから、それらに接している人はやはり他の人とは違ってくる。それは、立身出世主義だとかあるいはお説教じみているとか、道徳臭いとか何とか、悪口をいう人はいっぱいいる。だけど、心掛けて、そういったものを読み続けた人というのは、やはり何かの時には強いと思います」

その下に載っている11月25日の言葉も、「読書は最高の平等論者」というものなので、ちょっと紹介させていただきます。

「読書は、最高の平等論者ということができます。慶應義塾を創設した福澤諭吉は、『学問のすゝめ』の中で〝天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず〟と言ったあと、〝しかし差はある。それは学問があるかないかだ〟ということを述べています。その差を埋めるものが本であり、どんなに貧乏な家に生まれ、僻地で育とうと、読書の質が変わらなければ、一向に引け目を感じることはない、ということを実感しました」

(河野) 

本当におっしゃるとおりだと思います。

(渡部) 

私の教え子が学長になった時、「何か指針となる言葉はないか」って言うので、『言志四録』の中から一つ選んだんですよ。

「少にして学べば、則ち壮にして為す有り。壮にして学べば、則ち老にして衰えず。老にして学べば、則ち死して朽ちず」

(少年の時学んでいれば、壮年になってそれが役に立ち、何事か為すことができる。壮年の時学んでいれば、老年になって気力の衰えることがない。老年になっても学んでいれば、見識も高くなり、より多く社会に貢献できるから死んでもその名の朽ちることはない)

ここで一番重要なのは、真ん中の「壮にして学べば、則ち老にして衰えず」という言葉です。壮というのはだいたい30代から60代くらいでしょう。その頃は働き盛りですから、みんな学んでいると思っているんですよ。

しかし、実際には学んでいなくて、その証拠に定年を迎えた途端ポカンとしてしまう人が多いじゃないですか。結局、毎日仕事はしていたわけですけど、言われたことや決められたことの繰り返しで、真に学んでいない。壮というのは学んだという錯覚を起こしやすい危ない時期なんですね。 

だから、壮の時は仕事をちゃんとやった上に、プラスアルファの学びを続けていくことが重要です。どういう学びかといえば、それは人間学に他なりません。 

(河野) 

そうそう。仕事だけだと絶対に人間としての幅が広がらないですよ。 

(※本記事は『致知』2016年7月号掲載、渡部昇一氏と河野克俊氏の対談の一部を抜粋・編集したものです。8月24日(金)から9月2日(日)までの期間に、月刊『致知』の定期購読を新規でお申込みいただいた方全員に素敵な特典をご用意しました。『致知』を読み始めるならいまがチャンス。ぜひこの機会に『致知』の定期購読をお申込みください。詳細・ご購読はこちらから 

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 『致知』はただ情報として話を目で追うのではなく、心を動かしながら自分の生き方に照らして読む人間学の読み物です。誌名の由来にもあるとおり、「ただ知識として取り込むのではなく、生き方に照らして学んでほしい」という想いを込めています。また、脳科学の視点からデジタルの文章は「(情報として)見る」もの、紙に書かれた文章は「(五感を働かせて)読む」ものとも言われています。

脳力開発の第一人で、脳の機能にアプローチする『スーパーブレイントレーニングシステム(SBT)』を構築した西田文郎氏も、「インターネットで情報を得ることは、単に左脳で知識を知ることに留まるが、『致知』のような紙媒体では、五感に訴えかけて情報を理解するため、脳全体の活性化に繋がる」と述べています。 

渡部昇一(わたなべ・しょういち) 

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昭和5年山形県生まれ。30年上智大学大学院西洋文化研究科修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。平成13年から上智大学名誉教授。著書は専門書の他に『伊藤仁斎「童子問」に学ぶ』『日本の活力を取り戻す発想』『歴史の遺訓に学ぶ』など多数。最新刊に『渡部昇一一日一言』(いずれも致知出版社)。30年逝去。 

◇河野克俊(こうの・かつとし) 

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昭和29年北海道生まれ。52年防衛大学校卒業後、海上自衛隊入隊。海上幕僚監部防衛部長、海将、統合幕僚副長、自衛艦隊司令官などを経て、平成24年海上幕僚長就任。26年10月より現職。イージス艦事故や東日本大震災での危機対応、18年ぶりの日米ガイドライン改定など、指揮官としてリーダーシップを発揮している。

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