2018年06月30日
助産師として2000人以上の赤ちゃんの出産に立ち会ってきた内田美智子さんが語る母と子の幸福論、「可愛がる」と「甘やかす」の違いとは??
手をかけることと、甘やかすことの違い
子育てというのは親の犠牲の上に成り立っていくものです。出産自体、母親の命を削っているんです。
出血もするし、傷もできる。中には亡くなるお母さんだっています。赤ちゃんって、母親の命を犠牲にして生まれてくるんですね。
それから1年半も2年もお乳を出すこともお母さんの命を削っています。体重はどんどん減っていきますし、夜中に授乳するのも大変です。
でも、そうやって自分の時間を犠牲にしないと子育てはできません。それが子どもに伝わるから、いい子に育ってくれる。
ところが最近は、子どものために自分の時間を犠牲にしたくないという若い親が増えています。子どものために我慢したくないんですね。夜遅く子どもを連れ回している親を見かけますが、昔はそんなことはなかったと思います。
9時にはちゃんと子どもを寝かしつけていたんですよ。子どもと一緒に少し寝てからまた起きて、夜中に掃除したり洗濯したりするお母さんもいました。いまはそういうお母さんが減っていますね。
若いお母さん方は、「我慢しなくていいよ」、「頑張らなくていいよ」、と育てられてきたのでしょう。その人が親になったからといって、急に「子どものために我慢しなくちゃ」「頑張らなくちゃ」とはなりにくいです。
自分が甘やかされて大きくなってきたので、子育てのために自分を犠牲にしようとはなかなか思わないのです。「可愛がる」と「甘やかす」の違いは分かりにくいですよね。
私が母親学級でお母さんたちに言うのは、「してやりすぎると、すべてしてもらうことが
当たり前の子どもが育っていきますよ」ということなんです。してやることだけが親の務めではない。大人になったら我慢することや頑張らなければならないことがたくさんありますから。
できないことを一つずつできるようにしてあげて、親元から離れた時に一人でも頑張って生きていける子どもを育てるのが親の仕事なんですよ。
1から10まで全部してやっておいて、そのまま放り出されたら子どもは悲劇です。自分のことが何もできない大人になってしまう。それは間違った子育ての結果ですね。
手をかけることと、甘やかしてしまうことの違いはそこにあると私は思います。
(☆本記事は『致知』最新号2012年12月号特集「大人の幸福論」の記事を一部、抜粋したものです。全文は本誌をご覧ください。現在11万人がご愛読、人間力・仕事力を高める記事が満載の月刊『致知』の詳細はこちらから)
◇内田美智子(うちだ・みちこ)
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昭和32年大分県生まれ。国立小倉病院附属看護助産学校助産師科卒。63年より内田産婦人科医院に勤務。同院内で子育て支援の幼児クラブ「U遊キッズ」を主宰。思春期保健相談士として思春期の子どもたちの悩みなどを聞く。九州思春期研究会事務局長、福岡県家庭教育アドバイザー。「生」「性」「いのち」「食」をテーマに講演活動を精力的に行う。著書に『お母さんは命がけであなたを産みました』(青春出版社)。