コーヒーは体によいのか、悪いのか――コーヒーの効果的な飲み方とは??

 

身近な嗜好品として多くの人に親しまれているコーヒー。「コーヒーを飲まないと仕事が始まらない」というビジネスパーソンも多いのではないでしょうか? しかし、コーヒーは体によいという情報もあれば、悪いから飲まないといった意見も根強くあります。そこで、長年コーヒーの健康効果について研究してきた岡希太郎さんに、コーヒーの効果的な飲み方、健康づくりに役立てる秘訣をお聞きしました。

コーヒーと健康の関係

(岡)

身近な嗜好品として多くの人々に親しまれているコーヒー。最近は、コンビニエンスストアや回転寿司などでも本格的な挽き立てが提供され、ますます手軽に楽しめるようになりました。

しかし巷では、コーヒーは体によいという情報もあれば、体に悪いから飲まないといった意見も根強くあり、いったいどちらを信じればよいのか疑問を抱いている方も少なくないようです。 

そこで本欄では、私のこれまでの研究に基づく知見や最新の研究報告をもとに、コーヒーと健康の関係についての所感を記してみたいと思います。 

臨床薬理学が専門の私とコーヒーとの接点は、大学を定年退職する3年前でした。コーヒーを飲んでいると糖尿病になりにくいという論文を読んで関心を抱き、自らも研究に着手したのです。その過程でコーヒーに関する特許を4つ取得し、いまやコーヒー研究は定年をまたいで10年続く私のライフワークとなっています。 

さて、コーヒーに関して昔からよくいわれてきたのは、飲むと目が冴えて夜眠れなくなる、トイレが近くなるといったことです。コーヒーが体に悪いというイメージは主にこの2つからきているようです。

 また、肝臓や心臓に不安を抱える人が病院で、余計な負担を掛けないほうがいいと言われて飲むのをやめたり、あるいは妊婦、授乳婦が飲むのを禁じられたりすることも、ネガティブなイメージに結びついているようです。

これらはいずれもカフェインが悪者になっています。

しかしながら最近では、カフェインはパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経病、そしてがん全般に効果があることも明らかになっています。 

私がコーヒー研究を始めるきっかけとなった虎ノ門病院の野田光彦先生の論文には、コーヒーを飲んでいる人は2型糖尿病になりにくいと書いてありました。また、ウィーン大学のソモザ博士は、コーヒーのカフェインと、豆を焙煎した時に出てくるN‐メチルピリジニウムイオン(NMP)に、細胞のがん化を防ぐ効果があるという論文を発表しています。 

さらに南フロリダ大学のツァオ博士は、パーキンソン病に至る運動神経の障害をカフェインが防ぐことを説いており、同様の理由で、神経障害の一種であるアルツハイマー病になりたくなければカフェインを摂取すべきだとも主張しています。 

これらはいずれも私自身の研究結果とも一致しています。新しい事実が明らかになるにつれ、日本の医者もコーヒーの効き目を意識するようになりつつあるのです。 

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効果的なコーヒーの飲み方

(岡)

とかく日本人は、何かが体によいという情報を耳にすれば、すぐそこに殺到する傾向があります。しかし真の健康を得るためには、必要な栄養素をバランスよく摂取することが大前提であり、コーヒーの健康効果も、そこで初めて発揮されることを心得ておいてください。

では、コーヒーを飲む量についてはどうでしょう。一日何杯までなら大丈夫かというのは、気になる人も多いと思います。 

コーヒーは医薬品ではありませんが、薬と同様に病気に効果があり、そして飲み過ぎると逆によくないといえます。たまに、いくら飲んでも平気な人がいますが、それは特異な体質と考えるべきです。あくまでも各人の体質や体調によって異なりますが、1日にコーヒーカップ4杯くらいまでなら概ね安全と考えてよいでしょう。 

例えば、1日に飲むコーヒーの量と脳卒中になるリスクの関係でいえば、1杯、2杯とコーヒーの量を増やしていくにつれてリスクは下がり、4杯の時に最も小さくなります。それを超えると逆に上昇してゆき、9杯に達すると薬事法によるカフェイン摂取量の上限に達します。 

脳卒中に限らず、心臓や血圧など心血管系の病気も、飲み過ぎると効果が逆転するので注意が必要です。骨粗鬆症で骨密度が気になる人は牛乳を入れて飲みましょう。妊産婦や子供(小学生)は1日1杯以内に留め、パニック症状の経験者はカフェイン抜きのコーヒーにしましょう。 

コーヒーは生まれつき合わない人もいますので、そういう人は無理をして飲まないほうが無難です。 

また、コーヒーを病気予防に役立てるには、病気の発生しやすい年齢を意識することも大切です。 

がんの発症ピークは50~60歳。心臓病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中は60~65歳から増えてきます。ゆえに発症の早いがんのほうに照準を合わせ、30~40代からコーヒーを飲む習慣を身につけるとよいでしょう。 

コーヒーの健康効果は、より美味しい淹れ方をすることでさらに高まります。最後に、健康を意識した美味しいコーヒーの淹れ方をご紹介しましょう。 

浅煎りと深煎りを一対一にブレンドしたコーヒーを20グラム用意する 

②布または紙のフィルターに入れ、90℃以下のお湯でゆっくり抽出する

③最初に出てくる50㏄を飲む 

最も美味しいのは最初に出てくる50㏄までで、そこに有効成分の90パーセント以上が入っているのです。その後から出てくるのは雑味で、抽出すればするほどまずくなります。 

ですから、50㏄では少ない、あるいは味が濃いという場合は、抽出をやめてお湯を足したり、氷を入れてアイスで楽しむとよいでしょう。 

ちなみに、こうして抽出したコーヒーの有効成分は1日は持ちますので、私は朝淹れておいたものを夕方にも温めて飲んでいます。 

日々の生活に深く溶け込んだコーヒーを、健康づくり、病気予防を意識してぜひ楽しんでください。

 (※本記事は月刊『致知』2014年4月号特集「少年老い易く 学成り難し」より一部抜粋したものです。月刊『致知』には仕事力・人間力を高める記事が満載です。詳細はこちらから

 岡希太郎(おか・きたろう)

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昭和16年東京都生まれ。東京薬科大学卒業、薬学博士(東京大学)。スタンフォード大学医学部留学、薬化学と臨床薬理学を専攻。小学生のくすりの教育やコーヒー成分のブレンド法を追求し、予防医学へのくすり適正使用と食の情報を提供している。著書に『珈琲一杯の薬理学』(医薬経済社)『毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)などがある。

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