YKK会長が新社会人に向けて語った「人生の勝者となる生き方」

20代をどう生きるかのヒント

日本屈指の電気街として知られる東京・秋葉原。駅を降り、雑多な繁華街を抜けると、モダンでスタイリッシュな高層ビルが目に飛び込んできました。YKKが総工費100億円を投じ、自社の建材技術を駆使して新設した本社ビルがそれです。

ファスナー業界で世界トップブランドのYKK。創業者・吉田忠雄さんが徒手空拳から築き上げた会社を受け継ぎ、さらに発展させてきたのが、創業者の長男で現・会長CEOの吉田忠裕さんです。

吉田会長が一番お気に入りの部屋だという応接スペースに案内されると、程なくしてご本人が入って来られました。非常に明るいお人柄で、御年70とは思えぬバイタリティーに溢れ、非常に和気藹々とした雰囲気の中、1時間みっちりと取材に応じてくださいました。

取材では、ご自身の20代の歩みを振り返っていただくと共に、この4月に新社会人となった方や、いままさに就職活動に取り組んでいる学生、入社から数年が経つ若手社員に向けて、20代をどう生きるかのヒントを余すところなく披瀝していただきました。

世界73か国・地域に事業を展開し、従業員4万人を超えるグローバル企業の経営トップが語った若き日の道のりと20代へのメッセージとはいかなるものでしょうか――。

大事なのは“単純に乗せられて乗ってみる”こと

吉田会長は幼い頃より、父でありYKK創業者である吉田忠雄さんから、たびたびこう言われて育ってきたといいます。

「アメリカへ行け」

このひと言が吉田会長の20代の人生を豊穣の時に導いた端緒と言っても過言ではないでしょう。

父の言葉どおり、吉田会長は1969年、慶應義塾大学を卒業すると単身渡米。ノースウエスタン大学のビジネススクール(ケロッグ校)に留学しました。

そこで、「現代マーケティングの父」「マーケティングの神様」と称されるフィリップ・コトラー教授のもと、マーケティングの基礎はもちろんプレゼンテーション能力、リーダーシップ能力を身につけたといいます。

また、夏休みにはサマージョブ制度を使い、デュポンという世界的な化学製品メーカーやアメリカン・キャンという世界最大手の総合容器メーカーで、実際に就業経験を積んだことで、今日の事業経営に繋がる貴重な学びを得ることができたといいます。

そのことを踏まえて、吉田会長はこう語られています。

「かつて私がそうだったように、“単純に乗せられて乗ってみる”ことが20代の時期には大事だと思います。乗った後で、“思ったほどよくないな”とか“何か違うな”と感じれば、そこからまた軌道修正していけばよいでしょう。

 最も忌むべきは、変に利口になって、何も行動せずに分析や批判ばかりすること。そうではなくてまずはとにかく一歩を踏み出す。挑戦する。この姿勢の積み重ねの先に成長があり、素晴らしい人生があるのです」

口だけが達者な評論家に陥ることなく、経営の神様と称される松下幸之助翁も述べているように、「素直な心」を持って、周囲の人の意見やアドバイスに耳を傾け、行動に移していける人間でありたいものです。

そして、最も心を揺さぶられたのが、取材の最後に語られたこの言葉。

「勝ち負けだけの世界に生きているうちは、到底大器になれません。自分だけが勝とうと思って一所懸命努力している人と、皆を勝たせようと思って一所懸命努力している人では、同じ一所懸命でもその違いは切実に感じるもの。周囲の人がどちらのほうを応援したくなるかは自明の理でしょう」

これこそまさにYKKがファスナー業界の世界のリーディング・カンパニーとして繁栄し続けてきた哲学の根幹であり、私たち一人ひとりが輝かしい未来を切り開いていく要諦と言えるのではないでしょうか。

※本記事は『致知』2018年5月号連載「20代をどう生きるか」をもとに再編集したものです。実際のインタビュー記事全文は本誌をご覧ください。

【著者紹介】

◇吉田忠裕(よしだ・ただひろ)

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昭和22年富山県生まれ。44年慶應義塾大学法学部卒業。47年ノースウエスタン大学経営大学院(ケロッグ)でMBA取得、同年吉田工業(現・YKK)入社。60年副社長、平成2年YKKアーキテクチュラルプロダクツ(現・YKK AP)社長を兼任。5年YKK社長就任。14年ミッション経営大賞を受賞。23年より現職。著書に『YKKの流儀』(PHP研究所)など。

 

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