2017年06月23日
無一物から事業を興し、
イエローハットを今日の規模にした
鍵山秀三郎さん。
その明るい笑顔の秘密は
どこにあるのでしょうか。
鎌倉円覚寺管長・
横田南嶺さんのお話に学びます。
───────「今日の注目の人」───
横田 南嶺(鎌倉円覚寺管長)
※『致知』2017年7月号【最新号】
※連載「禅語に学ぶ」P120
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最近、本誌の巻頭言でもお馴染みの
鍵山秀三郎先生と
親しくお話しする機会をいただいた。
鍵山先生は、周知の通り
ご一代で「イエローハット」を創業され、
自動車用品業界にあって
常に掃除を心がけ、
「日本を美しくする会」を立ち上げられた。
荒れた学校の手洗いの掃除をされたり、
街頭で掃除をされたり、
活動は国内各所に及び、
遠く海外にまで出かけて
掃除をされた方だ。
私も、何度か
お話を拝聴させていただき、
また円覚寺にお越しいただいて、
講演をしてもらったこともあって、
心から尊敬申し上げる先生である。
先生は、何不自由のない環境で育ったが、
終戦を迎えすべてを失い、
塗炭の苦しみを舐めながら、
自動車用品業界で働かれた。
無一物から創業をされて、
今日の「イエローハット」を築かれた。
そのご苦労は並大抵ではない。
そして常に掃除をして、
綺麗に、正直に偽りなく
お仕事をされてきた。
筆舌に尽くし難い
様々なご苦労も拝聴させていただいた。
そんなご苦労にも拘わらず、
先生には暗さがなく、
いつも明るい笑顔である。
「先生は大変な
苦労をされているのに、
どうして、いつもそのように
笑顔でいられるのですか」
と聞いてみた。
先生は、
「辛い目には
嫌というほど遭ってきました。
しかしそれに対して
怒りや憎しみを懐いては、
自分自身によくないのです。
怒りや憎しみは自らを
損なうだけです。
そう自分自身に
言い聞かせてきました」
と教えて下さった。
私は、
「なごやかさによりて、
怒りに克つべし」
という『法句経』
の言葉を思い出した。
そんな鍵山先生だが、
二年前に大病をされた。
今もなお療養中で、
遠くに出かける講演などは
避けていらっしゃる。
そして今も痛みに堪えていると
話して下さった。
私は、どうして先生ほどのお方が、
このような病になられたのかと、
何とも言えない思いになった。
そこで思わず
「先生は、これだけ掃除などの
活動をなさってきて、
今のご病気をどのように
受け止めていらっしゃいますか」
と尋ねた。
しかし先生は……、
※返ってきたのは
まさに鍵山さんの人生観を
象徴するような言葉でした。
誌面でご紹介しています。