2016年10月05日
栃木県にある鷲谷病院の院長代行として
いまも現役医師として診察に当たる
定方正一さん、90歳。
外科医としての思い出に残る
エピソードを語っていただきました。
定方 正一(鷲谷病院院長代行)
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※『致知』2016年11月号
※連載「生涯現役」P98
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ある心臓手術ですべてが順調に進んでいて、
あともう少しで終わりかなと思っていた時に、
突然患者さんの心臓が止まってしまったことがありました。
なぜ止まったのか理由が分からない。
あの手この手で動かそうとしても全く動かない。
我われはこの現象をストーンハート、
つまり石の心臓と言っていて、
そういうことが起こり得るんですね。
でもまさかそれが目の前で起こるなんて思わなかったので、
困ってしまいました。
──他に打つ手はありましたか。
それが咄嗟に「あの薬を注射しろ!」と言ったんです。
そうしたら、また心臓が動き出した。
でも、僕はその時に指示した薬が何だったのかを
全く覚えていないんですよ(笑)。
──それほど無我夢中だったと。
人間って一所懸命やっていると神業的な勘が働くんだなと
いうことを感じましたね。
実はこの話には後日譚があって、
その患者さんが退院して
何年か経ってから年賀状が届きました。
そこには、「先生、まだ私の心臓は動いています」
と書いてあったんですよ。
僕は驚きました。……