2015年11月19日
「禅」、と聞くとなにやら難しそう……
と構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「禅」には生きる知恵が溢れている
と、その奥深さを語るのは
鎌倉円覚寺管長を務める横田南嶺老師。
人気連載「禅語に学ぶ」では、
御仏の教えや先達から学ばれたことを交えながら
様々な「禅」の言葉を解説してくださっています。
本日は、最新号の記事から、
詩人・坂村真民先生の詩を題材に
「日日是れ好日」という言葉をご紹介します
引き揚げて五年目 やっと飯台を買った
あしたの御飯はおいしいねと
よろこんでねむった子供たちよ
はや目をさまして
珍しそうに 楽しそうに
御飯もまだ出来ないのに
自分たちの座る場所を 母親にきいている
わたしから左回りして
梨恵子 佐代子 妻
真美子の順である
温かいおつゆが匂っている
おいしくつかった沢あん漬けがある
子供たちはもう箸をならべている
ああ 飯台一つ買ったことが こうも嬉しいのか
貧しいながらも 貧しいなりに育ってゆく子の
涙ぐましいまで いじらしいながめである」
(『坂村真民全詩集第一巻』)
昭和の時代の忘れられた風景
と言ってもいいかもしれない。
かつてはどこの家庭にも、
飯台を囲んで楽しい食事の風景があったであろう。
そんな貴さを失うまで気がつかなかったのであろうか。
「悟りとは失って初めて気づく
大事な事柄を、 失う前に知ることである」
と喝破された方がいらっしゃる。
お互いに、かけがえのないいのちをいただいて、
多くの人たちとの出会いに恵まれて、毎日生かされている。
この事の貴さに気がつき感謝して生きる日日こそ、
まさに「日日是れ好日」である……
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