帆足行敏先生を偲ぶ

生き方

森信三先生の高弟である帆足行敏先生が6月に他界されました。
帆足先生に薫陶を受け、人生観が大きく変わったという
冨吉袈裟右衛門さんのお話を紹介します。

冨吉 袈裟右衛門(楽農人)
───────────────────
※『致知』2017年12月号
※連載「致知随想」P88

───────────────────

森信三先生の高弟・帆足行敏先生が
去る6月26日、86歳の天寿を全うされました。
ふとしたご縁で帆足先生を知り、
10年間にわたって親しく薫陶を受けてきた私は、
いまだにその悲しみを拭い切れないでいます。

思えば、帆足先生との邂逅は平成19年11月、
福岡に転勤して間もなくのことでした。

友人が帆足先生が主宰する読書会に誘ってくれたのです。
森先生の『修身教授録』を輪読しながら読後感を語り合うというものでしたが、
たまたま隣に座られたのが帆足先生でした。



もちろん、この時は帆足先生がどういう方なのか、
『修身教授録』がどういう書物なのか、全く知りませんでした。
ただ、70代後半とは思えない帆足先生の
矍鑠とした姿と優しい眼差しが大変印象的でした。

読書会終了後、先生は
「来月八日、博多駅前の掃除をするので朝六時においでなさい」と、
やはりご自身が主宰される掃除の会にさりげなくお誘いくださいました。

真冬のまだ暗いうちに子供から大人まで100名近くが集まり、
歩道や植え込みに落ちたゴミを、まるで宝物探しのように拾います。
初めての体験でしたが、その清々しさは感動すら覚えるほどでした。

この掃除の後、私は自分でも驚くような行動に出ました。
約2年間、毎朝先生のご自宅を訪問したのです。
仕事柄、時間の束縛がないのをいいことに、
社の朝礼が終わると一目散に
福岡市内の先生のご自宅へと向かい、朝の挨拶をします。

外出の予定があると聞けば、先生を助手席に乗せて役所や学校にお連れしました。

車中では、先生がしてくださる話に耳を澄ませ、
目的地で先生を降ろすと、運転席で何度も復習しました。
先生のお話のほぼすべては森先生の教えについてでした。

「躾の三原則」「人生二度なし」の教え、
腰骨を立てることの大切さなど森先生の人生観、教育観の根本に触れると同時に、
帆足先生がいかに森先生を深く敬愛されているかを知りました。

私の我がままにより、先生やご家族には随分
ご迷惑をおかけしたことを思うと汗顔の至りですが、
読書会や掃除の会のさらに奥にある帆足先生の思いを
どうしても掴みたいという一心でした。

熱意を感じ取ってくださったのか、
ありがたいことに打ち合わせの場に同席させてくださったり、
口述筆記を任せてくださったりと、
何かにつけて可愛がっていただけたことは私の生涯の財産となりました。

帆足先生は長年高校教師を務められたこともあって、
車で学校にお連れする機会も多くありました。
ある時、校門前で車を降りた先生の姿に私はハッとさせられました。



校庭に腰を下ろし草取りをされているのです。
慌てて車から飛び出して一緒に草取りを始めた私に
「これは暴力草といいます」とそれだけをポツリと囁かれ、
黙々と作業を続けられました。

しばらくして、学校の正面に一礼し校舎に歩いて行かれる後ろ姿は実に神々しく、
真の師を見つけた思いがしたものです。

───────────────────
◆一流人の生き方、考え方が満載◆
人間学誌『致知』のお申し込みはこちら

───────────────────