2017年09月22日
飛騨高山市内に、行列の絶えないパン屋さんが
あるのをご存じでしょうか?
「パンが輝くかどうかはつくる人の人間性」
と説く、成瀬正さんのお店には、
どんなドラマがあるのでしょうか。
成瀬 正(トラン・ブルー オーナーシェフ)
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※『致知』2017年10月号
※特集「自反尽己」P40
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──岐阜県高山市に行列の絶えないパン屋さんがある
と聞いてやってまいりました。
ひっきりなしにお客様が来店されていて、ものすごい繁盛ぶりですね。
東京から4時間半ほど離れた田舎の小さな店にもかかわらず、
ゴールデンウィークや夏休みになると、
必ず100人以上のお客様が開店前に並んでくださっています。
多い時は行列が200人を超えることもありますし、
平日でも10人から20人くらいのお客様が待っていてくださっています。
地元の方はもちろん、わざわざ他県から何時間もかけて
車や電車で来られる方も多いですね。
──なぜこれほどまで人気があるのでしょうか。
うちは珍しい素材を使ってパンづくりをしているわけでも、
フランスで修業して帰ってきたわけでもありません。
特に変わったことはしていません。
ただ、私は決してお客様の期待を裏切ってはいけない
という強い気持ちがあり、目の前の商品が
もっとよくならないか、と常に高みを目指して
仕事に打ち込んできました。
(中略)
私はパン職人になって30数年経つんですけど、
いまだに自分が理想とするパンに
仕上がったことは一度もありません。
──一度もないのですか?
もちろん食べるとおいしいですし、商品としては合格点です。
しかし、足りないと感じたところを改善すると、
また新たな課題が見えてくる。
その繰り返しだから終わりがないんです。
店名の「トラン・ブルー」っていうのは、フランス語で
「ブルートレイン(寝台列車)」の意味です。
目的地に向かって長い距離を夜通し走り続けるブルートレインのように、
果てなきパンづくりの道をひたすらコツコツと進んでいき、
地方できらりと輝く店を目指すという願いを込めているんです。