2018年03月28日
全国大会で26回金賞を獲得した吹奏楽界の名伯楽・藤重佳久さんが語った
「圧倒的な結果を残す組織の共通項」
高校の吹奏楽界で圧倒的な力をみせ、
国内外で数々の輝かしい成績を残している精華女子高等学校吹奏楽部。
その強さの裏側には、35年にわたって指導した藤重佳久さんの教えがありました。
吹奏楽界の名伯楽・藤重さんが語った「圧倒的な結果を残す組織の共通項」とは――。
※対談のお相手は、ダンス初心者ながら顧問先のダンス部を全国大会常連校にし、
4度の世界一に導いた岩倉真紀子さんです。
日常の生活態度がいい仕事に繋がる
(藤重)お互いに信頼し合える人間関係が築けていると、できないことができるようになっていきますよね。チーム内の人間関係はもちろんですが、他の部活動との練習場の問題なんかもありますので、先生方と仲良くなっていないと協力してもらえません。保護者や地域の人もそうです。やっぱり周りから愛されるバンドにならないと日本一にはなれないと思います。
じゃあ、愛されるためには何が大事か。それはやっぱり日頃の生活態度ですよ。特に上の大会に行けば行くほど、ちょっと悪いことをしたら一斉に文句を言われますからね。
だから、レギュラーの子もそうじゃないサポートの子も、一人ひとりがプライドを持って、自分が部の看板、学校の看板だという気持ちを持たせるべきだと思うんです。企業は人なりというように、バンドだって人なんですよ。人が育っていないと、いい音楽はできない。
中には下級生のほうがうまい場合もあるわけです。でも、うまいからといって、上級生に対して横柄な態度を取ったり、何か頼まれた時に嫌な顔をする。それじゃあ絶対にいい音楽はつくれません。だから、技術だけでは絶対にダメなんですね。
部活動を通じて、人間としてのあり方、根本を身につけさせることがものすごく大事だと思います。
(岩倉) 私はよく、「感謝の気持ちをダンスで表す」って言っているんですけど、応援してくれる親や周りの人に対する感謝の気持ちをダンスという形で表現しようと。人のために徳を積んでいける子供に育てたいですし、私自身もそういう人間になりたいと思っています。
すべてが指導者の責任
(藤重)私は1990年に初めて全国大会に行ったわけですが、その次の年は全国大会出場を 逃しているんです。しかも惜しいとかいうレベルではなくて、九州大会の前の県大会のさらに前にある最初の地区大会で落ちたんです。これはショックでしたね。でも、よく考えてみれば、ダメな時はダメなことをやっているんです。
(岩倉)何がよくなかったんですか。
(藤重)完全に図に乗っていました。去年全国大会に行ったから今年も行けるだろうくらいに思って、なめてかかったんですね。生徒の技術や意識レベルはそんなに差がありませんでした。もう何もかも指導者の責任ですね。私自身にそういう驕りや慢心がある時は、必ずといっていいほど落ちました。
やっぱり指導者は常に謙虚でいなくてはならないと感じます。
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◇藤重佳久(ふじしげ・よしひさ)
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ふじしげ・よしひさ 昭和29年福岡県生まれ。51年武蔵野音楽大学卒業後、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に入団。54年精華女子高等学校吹奏楽部顧問に就任。これまで全日本吹奏楽コンクールに19回出場し、金賞10回。全日本マーチングコンテストは16回出場のうち、すべて金賞獲得。平成27年より活水高等学校吹奏楽部音楽監督に就任し、全国大会初出場を果たす。
◇岩倉真紀子(いわくら・まきこ)
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昭和48年大阪府生まれ。京都明徳高等学校時代、ソフトボール日本代表選手に選出。平成8年武庫川女子大学卒業。12年より京都明徳高等学校ダンス部顧問。22年、23年ミスダンスドリルチーム世界大会で2連覇し、25年も同大会優勝。26年アメリカンダンスドリルチーム世界大会優勝。全国高校ダンスドリル選手権大会には13年連続出場し、Winter Cupでは現在6連覇中。
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