2017年11月06日
誰もが顧みない「古民家」再生に情熱を注ぐ
建築デザイナー、カール・ベンクスさん。
その活動には、自国の歴史や文化を
忘れてしまった日本人へのメッセージが詰まっています。
カール・ベンクス(「古民家」再生のプロ)
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※『致知』2017年12月号
※特集「遊」P38
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「宝石を捨てて砂利を拾う日本人」
来日から7年後、日本の伝統建築の素晴らしさを
海外に紹介したいと思い、
日本で知り合っていた現在の妻とドイツに戻りました。
その後は日本とドイツを行き来しながら、
日本の茶室や古民家を解体してヨーロッパに
移築したりする仕事に携わりました。
その頃の日本はちょうど高度経済成長期で、
古い木造建築が壊され、その代わりに短期間で
安く大量につくれる簡易な建物がどんどん増えていきました。
特にバブル後、古民家を探しに再び湯沢を訪れた時には、
ごく普通の街並みに変わっていたんですよ。
京都なども、数10年ぶりに来日したある友人は、
「なんだ、昔の美しい京都はないじゃないか」と嘆いていました。
ですから私は、「日本人は宝石を捨てて、
砂利を拾っている」とよく言うんですね。
──日本人が自分自身で価値のある建築物を壊していったと。
ドイツには、築100年以上の建物を壊して
はいけないという厳しい法律があります。
日本人は海外旅行をする時、パリやローマ、ロンドンなど、
その国の古い町、歴史のある場所に行きますよね。
なのに日本人自身は自国の歴史や文化を大事にしない。
それは本当に残念なことだと思います。
それでお客さんのために移築できる古民家を探していた1993年秋、
友人に誘われ偶然訪れたのが新潟の竹所(たけどころ)集落でした。
(中略)
竹所にはかつて39軒の家があったそうですが、
当時は過疎化が進み八軒になっていました。
地元の人たちも、「誰もが離れていく村に家を建ててどうするのか」と、
とても不思議がっていましたね。
でも、早く住まないと本当に倒れそうな古民家でしたから、
購入した年に解体し、翌年の春には基礎をつくり、
地元の方や知り合いの職人の助けを
借りながら2年ほどで新しく再生させたんです。
──その自宅が日本で初めて再生した古民家ですか。
ええ。自宅が完成した後も、しばらくは日本と
ドイツを行き来していたんですが、
次第に古民家を再生してほしいという依頼が増えてきましてね。
1999年に会社を設立し、生活の基盤を日本の竹所に移したんです。
以来、この地域を拠点に全国50軒の古民家再生を手掛けてきました。
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