2018年05月21日
筋肉がどんどん動かなくなる難病・脊髄性筋萎縮症を抱えながらも、19歳で起業した佐藤仙務さん。ITをフル活用し、独自の勤務体制で障害者雇用を推進するなど、各メディアからも「寝たきり社長」として注目を集めています。
その佐藤さんの生い立ちを追いながら、重度障害というハンディとどう向き合い、いかに克服していったのかを描いたノンフィクション作品『寝たきり社長 佐藤仙務の挑戦』(ジャーナリスト、塩田芳享・著)が弊社より刊行されます。
若くして死別した同級生、就職するつもりだった職場での研修中に、年配者から投げ掛けられた「お前のような軟弱障害者、ろくな人生を送れないぞ」という心ない言葉……。様々な試練や逆境が佐藤さんを襲いますが、持ち前の闘争心とポジティブな思考は、不可能と思えたことを可能にし、周囲の意識を変え、多くの協力者を得ていくことになります。
「“障害者だから仕方がない”と嘆きながら、悲しみに暮れ、生きていたくない」という佐藤さん。
障害者に限らず、人間の能力にはそれぞれ差異がありますが、大切なのはそれを受け入れ、克服する術を編み出せるかどうか。一人ひとりの人間が持つ計り知れない可能性を実感し、大きな勇気をもらえる一冊です。
今回はその注目の一冊より、佐藤さん書き下ろしの「あとがき」をご紹介します。
与えられたのは試練ではなく、天命
(佐藤)
僕はこれまで、自分で本や記事を書いてきたことはあった。けれど、今回のように著者ではなく、物語の主人公として書いていただけるとは正直まったく想像していなかった。
――寝たきり社長 佐藤仙務の挑戦
今回、この本を書いてくださった塩田芳享さん。気付けば、塩田さんとはかれこれ3年ほどの付き合いになった。親子ほど年の離れている僕らだが、僕は塩田さんとお会いするたびにこんなことを考えてしまう。
「年齢ってなんだろう。障害ってなんだろう」
人は生きていく中でさまざまな困難にぶち当たる。
すると、多くの人はそんな時にこういう言葉を口にするのだ。
「~だから、仕方がない」
もう年なんだから仕方がない。女性として生まれたのだから仕方がない。何より、障害者である僕の周りで多いのが「障害者だから仕方がない……」という人だ。
僕も障害者として生きてきたわけなので、そんな人たちの気持ちはわかる。けれど、僕は「障害者だから仕方がない……」と嘆きながら、悲しみに暮れ、生きていきたくないのである。
僕はこの世に生を享けた。神様は僕に対しては無愛想だし、微笑みもしてくれなかった。
しかも、障害という過酷な試練までも与えてきた。だから、嫌になることはたくさんあった。もう死にたいと思ったこともあった。
でも、塩田さんと出会い、僕は一つ大きなことに気がついた。それは神様が僕に与えたものは「試練」なんかじゃなくて、本の中で塩田さんが書いた「天命」だったのだ。
「佐藤くん、俺は君にならできるといつも信じているから」
これまで、塩田さんに何度もかけられた言葉だ。この言葉を聞くたび、僕は本当に、力強く、背中を押してもらえる。
――僕にだって、できることはたくさんあるんだ。
そして最近、ふと思うことがある。塩田さんは神様が僕に送り込んだ使者なのかもしれないと。そしてもし、この本を神様が読んだら――ちょっとだけ微笑むかもしれないと。
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(本記事は『寝たきり社長 佐藤仙務の挑戦』(致知出版社)のあとがきを抜粋したものです。全文は本書をご覧ください)
佐藤仙務(さとう・ひさむ)
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平成3年愛知県生まれ。4年SMA(脊髄性筋萎縮症)と診断される。22年愛知県立港特別支援学校商業科卒業。当時障碍者の就職が困難であることに挫折を感じ、ほぼ寝たきりでありながら、23年ホームページや名刺の制作を請け負う合同会社「仙拓」を立ち上げ、社長に就任。著書に『寝たきりだけど社長やってます』(彩図社)、恩田氏との共著に『絶望への処方箋』(左右社)、近著に『寝たきり社長 佐藤仙務の挑戦』(致知出版社)がある。
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