いのちをかけた法話会


鎌倉円覚寺管長・横田南嶺さんの連載
「禅語に学ぶ」は、
感動的なエピソードを交えながら
禅の教えを分かりやすく
私たちに伝えてくださいます。

今回はある法話会にまつわるお話です。

───────「今日の注目の人」───

横田 南嶺(鎌倉円覚寺管長)

※『致知』2017年9月号【最新号】
※連載「禅語に学ぶ」P112

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そんなお寺での法話会で、
最近忘れられない会があった。
 
未熟ながらも、
只今私は大本山の管長という
要職を務めているので、
宗派の寺院にとって、
本山の管長を法話に招くことは、
一大行事となる。

およそ一年前から、
日程の調整など準備に取り掛かる。

伝統を重んじる世界であるので、
法話の打ち合わせにしても、
電話やメールで済ますことはしない。

何度か直接本山に出向いて打ち合わせ、
古式ゆかしく管長を
招聘するしきたりが残っている。


そのお寺の和尚も、
早くから打ち合わせ、
何度か本山にお越しいただいた。

準備万端整って、
もうあと一ヶ月で法話会となった頃、
その和尚より速達の手紙が届いた。

なんと、大きな病が見つかって
急遽入院し手術を
受けることになったという。


一年も前から支度をしてきた法話会は
予定通り行うのだが、
自分が管長をお迎えすることが
できないのが申し訳ない
というお詫びの手紙であった。

明日から入院と認めてあったので、
返信も出さずに、手術の無事を祈った。




そうして二月、
梅の花が咲く時節に合わせて
観梅の法話会が催された。
 
本山管長が寺院に出向する場合、
お寺の和尚はもとより皆が
お寺の山門に整列して
出迎えることになっている。
「門迎」と呼んでいる。

私は、和尚の不在を
あらかじめ知って行ったのだが、
山門近くに車が近づいて、
我が目を疑った。

なんとその和尚が、
二月の寒風吹きすさぶ中を、
立って出迎えてくださって
いるではないか。


更に近づいて驚いた。

入院中の衣服のまま、
点滴の容器を片手に持っている。

恐らく医師に無理を言って、
一時退院してきたのであろう。
大手術の後であることは、
痩せられた姿からも想像された。
 
この法話会にかける
和尚の熱意がその姿から伝わった。……




※この法話会での和尚の様子は、
 横田さんにとって
 忘れ難いものになりました。
 詳しくは9月号でご紹介しています。

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