2017年04月18日
『致知』でお馴染みの鈴木秀子さんは、
作家・遠藤周作さんと
懇意にされていました。
遠藤さんは代表作である『沈黙』に
どのような思いを込めたのでしょうか。
鈴木さんが直接聞いたという
話を紹介しましょう。
───────「今日の注目の人」───
鈴木 秀子(国際コミュニオン学会名誉会長)
※『致知』2017年5月号【最新号】
※連載「人生を照らす言葉」P106
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私は遠藤さんとは
大変懇意にしていましたから、
『沈黙』が出版された後、
作品に込めた思いを
詳しく聞くことができました。
遠藤さんは
「『沈黙』は宗教を取り上げた
小説ではあるけれども、
決して神学という視点ではなく、
人間の本質を掘り下げる作品として
描こうとした。
神学者の立場からしたら
指摘したい内容があるかもしれない。
しかし、時々刻々と移り変わる
人間の深層部分を
描き出すことができたならば、
普遍的なよい小説と
言えるのではないだろうか」
と話していました。
人間の「苦しみ」も、
人間の本質の一つと
言えるかもしれません。
遠藤さんの人生には、
常に苦しみがつきまといました。
結核に始まり、
生涯にわたって
入退院の繰り返しで、
奥様の順子さんは
「私が賞をいただけるとしたら、
ナイチンゲール賞です。
睡眠を削って真夜中まで
介抱しなくては
いけませんでしたから」
とおっしゃっているくらいです。
遠藤さんは相次ぐ病気によって
若い頃から多くの苦しみを
嘗めるとともに、
病に苦しむ人たちの辛さと
向き合ってきました。
同じ病棟の重篤な患者の
様子を間近に見ながら、
「神様はなぜ、人を絶望の淵にまで
追い込むようなことを
なさるのだろうか。
その人を頼りに生きている
家族もいるというのに……」
と静かに思いを馳せるのです。
しかし……
※シスターである鈴木さんは
『沈黙』をどのように
読み解かれるのでしょうか。
『致知』では二回に
分けてご紹介しています。