2017年11月02日
世界中で愛されている絵本画家の安野光雅さんに
最新号の表紙を飾っていただきました。
「売り込み」が苦手だったという安野さんですが、
どのようにして絵本作家デビューを果たされてのでしょうか。
この度、京都府京丹後市に「安野光雅館」をオープンさせた
桑村綾さんとの対談の中で
その答えが明らかになっていきます。
「仕事とは尊い遊び」
安野 光雅(画家)
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桑村 綾(和久傳女将)
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※『致知』2017年12月号
※特集「遊」P10
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【安野】
私がなぜ絵描きになれたかと言いますとね。
よく「世に打って出る」という言い方をするでしょう?
それは絵描きの世界も一緒です。
「私は絵描きです」という看板を掛けたって誰も買いにはこないから、
銀座で個展を開いたりして売り込まなきゃいけない。
だけど、私はいまもそうなんだけれども、
いわゆる「売り込み」が駄目なんですよ。
【桑村】
お嫌いですものね(笑)。
【安野】
それじゃ絵描きになれない。
ところが、これも縁なのか私は教員時代、
絵本をつくっている出版社の社長の息子を教えたんです。
ある時、その社長から「晩ご飯でも一緒に」
と言われてワイワイやっているうちに、
「あなた、絵本を描きませんか」って。これにはビックリしましたね。
普通は絵描きがいくら出版社に頭を下げて回っても、
断られるのが落ちですからね。
勧められるままに『ふしぎなえ』という最初の絵本を出したところ、
これが売れましてね。
(安野光雅館の外観)
【桑村】
その社長様も安野先生の中にある素晴らしい才能を見出されたのでしょうね。
【安野】
そうだとしたら、大変ラッキーだと思います。
友達の絵描きを見ても展覧会をやっても
なかなか売れるところまで行けないので、
そのうちに奇を衒ったような絵を描き始めて、
やがて消えてしまっている。
【桑村】
私が好きな先生の絵本に『もりのえほん』というものがあります。
一枚一枚の葉っぱまで細かいタッチで森を描いた絵本なんですが、
よく見ると騙し絵みたいにトラやキリンなどの動物が隠れている。
安野先生はもともと数学がご専門とお聞きしていますが、
この絵を見ると理科系独特のセンスを感じます。
【安野】
数学的かどうかはともかくとして、
私はいつも人を騙そうと思っているんです(笑)。
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・『致知』には人生を潤す言葉がある
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