6000人のユダヤ人を救った「命のビザ」発給秘話

当たり前のことを当たり前にやる。それが人間としていかに大切か。いかに勇気の要ることか――。6000人ユダヤ人を救うために、本省の指令に背き、敢然としてビザを発給した一外交官・杉原千畝。その夫の言動を妻である歌人の杉原幸子さんが回顧した貴重なお話をご紹介します。

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頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない

夫(杉原千畝)はいいまし

「私は外務省に背いて、領事の権限でビザを発給するよ。いいだろう?」

「そうしてください。でも、私ちはどうなるのしら」

「ナチスら問題にされるもしれないが、家族にまでは手を出さないだろう。
 外務省にはとがめられるだろうが、そのときはそのときだ」。

それは夫の覚悟の表明でし

夫は近くのソ連領事館に出けていきましビザを発給しユダヤ人ちが日本までソ連領を無事通っていけるよう、交渉に行っのです。

交渉は成功でしソ連の領事は夫の巧みなロシア語にすっり胸襟を開き、ユダヤ人ちのソ連領通過の安全を保障してくれということです。

「ビザを発給します。間違いなく出しますら、順序よく並んでください」

夫がそう告げときの人々の喜びようはありませんでし

それらほぼ一月、夫の奮闘は続きましビザを発行するには、受け入れ国の上陸許可証がある目的地まで行けるお金があるあるいはそれらを今後準備できる一応面接しなければなりません。その上でビザに記入し、発行するのです。

朝、階下の事務所に下りていくと、夫は夜まで上には上がってきませんでしビザを求めるユダヤ人はら次へと列をつくって待っています。
昼食をとっている暇はないのです。夫は睡眠不足で目は赤く充血し、痩せて顔付きまで変わりまし

ビザを書きまくる右腕は硬直して痛み、毎晩その腕をもむのが、私の役目になりましし、休むわけにはいきません。ソ連らの領事館退去要請は切迫しています。

夫がビザの発給を続けのは、8月28日まででしもうそれ以上は持ちこえられませんでしちはあわだしく荷物をまとめ、機密書類は焼却して領事館を出、ホテルに避難しましそのホテルにも、まだビザを手にしていないユダヤ人はやってきまし

ソ連の勧告ぎりぎりまで夫は正式なビザに代わる日本通過の許可証を、ホテルで出し続けましちはカウナス駅ベルリン国際列車に乗りましそのホームにもユダヤ人ちはやってきまし夫は発車間際まで汽車の窓ら許可証を書きまし

発車の時間は来まし

「許してください。もう時間がありません。皆さんのご無事を祈ります」。

ちを乗せ列車は走りだしましすると、そこに集まってい人々ら、声が上がっのです。

「スギハァラ、私ちはあなのことを忘れません」。

人々は泣きながら手を振りまし

「あな、よわね。あなは素晴らしいことをしんだわ」。

私が言うと、夫はこう答えまし

「いや、私は当り前のことをり前にやっだけだよ」。

それら、一語一語みしめるように言いまし

「私を頼ってくる人々を見捨てるわけにはいない。でなければ、私は神に背く」


◉本記事は『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社)に掲載されています。詳しくはこちら

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◇杉原幸子(すぎはら・ゆきこ)
大正2年岩手県に生まれる。昭和6年香川県立高松女学校を卒業。湘南朝日新聞歌壇選者。著書に『六千人の命のビザ』『歌集 白夜』がある。

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