関ジャニ∞の村上信五さんが人生で最も影響を受けた本——『いまこそ、感性は力』を読む

フジテレビ『関ジャニ∞クロニクルF』で、村上信五さんが「人生で最も影響を受けた本」として紹介された『いまこそ、感性は力』。本書は、経営者を中心に全国から引きも切らず、講演の依頼がある芳村思風氏と、プロゴルファーの青木功氏や、スポーツキャスターの松岡修造氏などにも影響を与えた行徳哲男氏による共著です。この本で語られているのは「感性の力」 の必要性。この感性力の鋭いリーダーは、人を感動させ、 目標達成まで導いていく力があるというのです。感性型リーダーへの手引書であり、新たな時代を切りひらくために必読の一書。その内容の一部をご紹介します。

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名リーダーとなるための3つの条件.1
   ——仕事の知識と技術

本物のリーダーというのはどんな人をいうのか。『人間回復の経営学』の著者であるベルギー大学のジョセフ・パジールは、統率者の条件を3つ挙げています。1つは、仕事の知識があり技術を習得していること。でも、これは100のうち25%もあればいいというんです。100%習熟していなくたって人の上に立てるぞ、と。

これは明治大学野球部の名物監督だった島岡吉郎さんが良い例でしょう。島岡さんは応援団長あがりで野球の経験はなかった。キャッチボールもできないような人だったけれど、何度も明治を優勝に導いていますし、日本代表チームの監督を務めて日米大学野球選手権でも2回優勝しています。このように、仕事の知識や技術に100%習熟していなくても、名統率者、名リーダーになれるわけです。逆に、名プレーヤーが必ずしも名監督になれないという例もよく見られます。

名リーダーとなるための3つの条件.2
   ——創造的な行動力

それから2番目に挙げたのが行動する力です。ただし、闇雲な行動では人を動かす力にはならない。創造的な行動力が人を動かすとパジールは言っています。「喜働」という言葉があります。働きが喜びになるのは、人間が創造的になったときですよ。人間は創造して意欲しているときが一番幸せなんです。それが喜びになる。こんな話があります。

ある日本の会社がメキシコシティに支店を出すことになった。オフィスに椅子が必要だというので、日本人の社員が町に椅子を探しに行った。ある家具工房を覗くと職人が見事な椅子を作っていた。日本人はそれを気に入って「これと同じ椅子を12個頼む」と注文した。すると後日、12個の椅子と請求書が届いたのですが、請求書を見ると15個分の請求になっている。日本人は椅子職人のところに文句を言いに行った。「12個も注文したのだから1個分まけましょうというのならわかるが、15個分請求するとはどういうことだ」と。

それに対してメキシコの職人はこう啖呵を切ったというのです。

「わしらは椅子を作るときに、こう作りたい、ああ作りたいと、創意したり工夫したりする。喜び勇んで作っているのだから良いものができるに決まっている。それなのに、あんたときたら同じ椅子を12個もつくれといってきた。おかげでわしらはこの椅子はこう作りたい、ああ作りたいという創意工夫したりする喜びを奪われてしまった。だから、わしはあんたに退屈料を求める権利がある。」

その日本人は返す言葉もなく、15個分の代金を支払って帰って来たというわけです。ロシアの作家ゴーリキーは言っています。

「働きが喜びになったらこれ以上の幸せはない。そのかわり、働きが苦痛になったら地獄だ」と。

またヒットラーは喜働、ドイツ語でアルバイトフロイテを国家統合の合言葉にしました。

喜びのくっついた行動ならば人を動かすことができる。だから、仕事に創造性を付加して働く喜びを与えられるようなリーダーには人がついて行くわけです。

名リーダーとなるための3つの条件.3
   ——感性のダイナミズム

しかし、パジールはこの創造的な行動力も25%に過ぎないというわけです。

では、残りの50%を占めるリーダーの条件とは何か。それは感性の開発ができる力、感性のダイナミズムです。人の悲しみを自分の悲しみとして感じ、人の喜びを自分の喜びとして感じ取る。さらに、自分の喜びを人の喜びとして感じ取らせる情の強さが必要だとパジールは言っています。

これについては鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓石に刻まれた言葉が象徴的ですよ。

「己より優れた部下を持ち、共に働ける技を知れる者、ここに眠る」

これは指導者の条件を示す最高の教えでしょう。

リーダーは秀才である必要はない。自分よりはるかに優秀で有能な部下たちと共に喜び、共に悲しめることが大切なのです。だから感性の鈍い人間には人の上に立つ資格はないということです。

日本にもカーネギーに負けないような人物がたくさんいますよ。一人挙げれば、光永星郎という今日の電通の創業者です。この人は戦前の方です。広告宣伝の仕事といえば今では花形産業ですが、当時はチンドン屋の延長ですよ。だから職業として大変蔑まれていました。それでも彼は一所懸命に宣伝広告の仕事に打ち込むのです。

あるとき、仕事をもらうために京都の村野商店という日本一のタバコ屋さんに乗り込んでいきます。しかし、けんもほろろに追い返されて、なんとか名刺だけ置いて帰ってきた。それから何日かして再び訪問しますが、追い返されてしまう。それを何度も何度も繰り返すうちに年月がたって、ある日また村野商店に行くと、受付で「社長がお待ちです」と言われて、社長室に案内されるんです。

そのときに村野社長は光永星郎さんにこう告げるんですね。

「今日からうちの会社の仕事のすべてあなたにお任せします。あなたが何回来ても追い返しました。最初は胡散くさい人だと思っていましたが、何度追い返してもやって来るので、そのうち興味が出てきました。今日まで引き延ばしたのは、あなたを試していたのです。ところであなたは追い返されるたびに名刺を置いて帰られたけど、すべて保管しておきましたよ」

そういって取り出した名刺の数が107枚あったというんです。光永さんは107回追い返されても訪問し続けたというわけですね。すごい情熱です。この光永さんの下でどうしても働きたいと入社したのが吉田秀雄さんです。広告の鬼といわれ、「鬼十則」という仕事の十訓をつくった方として知られています。吉田さんは東大を出た超エリートですよ。しかし、その肩書きを捨てて光永さんの会社に飛び込むんです。電通は光永さんによって興され、吉田さんによって育てられていったわけですね。光永さんには吉田さんのようなエリートを惹きつける、なんともいえない魅力があったんですね。そういう魅力的な経営者が今、少ないですよ。

『いまこそ、感性は力』(芳村思風、行徳哲男・著)

月刊誌『致知』2010年10月号「経営者よ、野生のエネルギーを取り戻せ」に登場した行徳哲男氏(日本BE研究所所長)、芳村思風氏(思風庵哲学研究所所長)の対談が1冊の本にまとめられた。本書で語られているのは「感性の力」の必要性である。理性が「考え方」であるのに対し、感性とは「感じる力」「感じさせる力」である。

この感性力の鋭いリーダーは、人を感動させ、目標まで率いていく力があるという。感性力豊かなリーダーが現れれば日本は変わり、世界を救う存在にも成り得る。本書で芳村氏は「リーダーの絶対条件」として3つの条件を提示している。1、問題から決して逃げない。2、あれこれ迷わず決断し、断ち切る力を持つ。3、限界への挑戦意欲を持つ。その他にもリーダーに必要な十か条などを収録。感性型リーダーへの手引書であり、新たな時代を切り開くために必要な一書である。

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