トヨタの技術者が繰り返してきた言葉(海稲良光)

1万本以上に及ぶ月刊『致知』の人物インタビューと、弊社書籍の中から、仕事力・人間力が身につく記事を精選した『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭・監修)。致知出版社が熱い想いを込めて贈る渾身の一書です。本書の中から掲載当時大きな反響を呼んだ海稲良光氏の記事をご紹介します。

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トヨタ流の仕事のやり方

日々の知恵と改善により、ものづくりの場を高めていくために、トヨタで繰り返し言われている言葉があります。

「者に聞くな、物に聞け」

者とは人のことであり、物とは現場や商品・製品のことです。現場の作業者から聞いたことと、実際に現場で起きていることが食い違っていることがよくあります。ですから、管理監督の立場にある人は、部下からの情報に頼り切るのではなく、実際に自分の目で現場を見て、何が起きているかをつかまなければなりません。

「やってみせ、やらせてみて、フォローする」

「やらせてみて」までは実施していても、その後の「フォローする」まで徹底している会社はほとんどありません。教えたことを本当に守り、実践するまでフォローすることが重要なのですが、実際には、「たぶんやっています」というレベルにとどまっているケースが多く見受けられます。「教えたとおりにやっています」と言い切れるところまできっちり
フォローしていかなければなりません。
 
「あなたは誰から給料をもらうの?」

現場では、目先の問題に振り回され、事の本質を見失ってしまいがちです。この質問に対して、上司の名や会社をあげるのではなく、給料はお客様からいただいている、ということを出発点にすることで、品質やコストにも気を配ったお客様第一主義のものづくりが実践できるのです。訪問した会社の管理レベルは、現場で作業をしている従業員さんに、「この部品は次にどこへ行くのですか?」と聞いてみればだいたい分かります。「隣の箱に置くんだよ」という答えには、「自分は誰から給料をもらっている」という問題意識は見受けられません。一人ひとりが、「この部品はこういう工程をたどり、最終的にこの製品になってお客様のもとへ届けられます」と答えるところまで持っていくことができれば、その会社の現場レベルは相当なものになっているに違いありません。

「陸上のバトンリレーのようにやりなさい」

トヨタ流の仕事のやり方を、私はこの言葉で表現しています。陸上のリレー競技では、前の走者から次の走者へとバトンを渡すバトンゾーンがあります。そのゾーン内であればどこで渡してもいい。バトンゾーンを有効に使うことで前走者と次走者の引き継ぎが円滑になり、全体のタイムを縮めることができます。これは仕事も同様で、例えばベテランから新人にバトンを渡す場合、ベテランはバトンゾーンのギリギリのところまで走って新人を助けてやればいい。バトンゾーンがあることで、自分の範囲を超えて仕事をしたり、アクシデントが起きた時には逆に助けてもらったりできます。お互いに自分の領域を少し超えながら、助け合ってリレーを走ることができるのです。


(本記事は弊社刊『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』〈藤尾秀昭・監修〉から一部抜粋・編集したものです。)

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◇海稲良光(かいね・りょうこう)
愛媛県松山市出身、1974年慶応大法学部卒 トヨタ自動車入社。80年代~90年代にかけ、デトロイトやサンフランシスコなど、米国に3回(計12年)に渡り駐在。米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁会社の支援も担当。また国内での人事教育・労務関係でトヨタの国際化に伴う外国人採用や製造現場の人材育成、組合対応などに取り組む。97年から2001年までの5年間、副社長兼財務役として、米国トヨタテクニカルセンターで勤務。2002年(株)オージェイティー・ソリューションズの設立準備を担当、同社専務取締役として出向し、現在に至る。「トヨタの片づけ」「トヨタの口ぐせ」「トヨタの上司」など、多数出版。

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