2020年05月04日
堅苦しい、面倒臭そう……と思われがちな年中行事。ひな祭りには七段飾りを、鯉のぼりは大空を泳ぐ大きなものを。そう考えているうち、何もせず過ごしてしまう人がほとんどではないでしょうか。本日ご紹介する『開運 #年中行事はじめました』(井垣利英・著)は、日本人に馴染みが深いはずの年中行事をもっと気軽に楽しみ、幸せに過ごすためのヒントが満載の一冊。中でも、本日5月5日にちなんだ端午の節句にまつわるお話をご紹介いたします。
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端午の節句が男の子の節句になった流れ
武士の時代になると、武将たちは菖蒲を「勝負」、「武を尊ぶ」という意味の「尚武」の二つにかけて、縁起かつぎをするようになりました。菖蒲の葉をかぶとに挿して出陣したりもしたそうです。
戦場では勝たなければ命を落とす死ぬか生きるかの勝負です。すがれるものなら何にでも、ということになりますよね。だから菖蒲は、着物の文様、甲冑や武具、馬具の模様にもよく用いられていました。そんなことから端午の節句は、いつしか「男の子の成長を願う」行事という意味合いを強めていきました。
江戸時代には徳川幕府の公的な行事、祝日となり、男の子の節句として公認されました。それをきっかけに一般の人々にも広まり「男の子の成長を祝い、立身出世を願う」行事になったということです。今は子どもの日として国民の祝日になっていますね。
鯉のぼりは立身出世のシンボル
江戸時代、武士たちの家では端午の節句に、鎧やかぶと、弓矢や槍などをかざり、家紋の入ったのぼりを立ててお祝いしました。
のぼりというのは、戦場で敵か味方かがわかるように、それぞれがのぼりを背負ったり、お城から遣わされた使者に味方がわかるように、自分たちの陣地に立てたものです。
こののぼりを見てかっこいいとあこがれた町人たちが、のぼりの先端に鯉の絵を描いた和紙や、和紙でつくった鯉を貼りつけてかざりました。それが、鯉のぼりのはじまりとされています。
でも、どうして「鯉」だったのでしょうか?それは、「登竜門」という中国の故事からきています。中国で二番目に長い川、黄河の中流には竜門と呼ばれる激流がありました。たくさんの魚が川を上ってくるのですが、竜門を無事上りきることができたのは鯉だけでした。上りきった鯉は竜になったといわれます。
ということで、鯉は立身出世のシンボルになりました。竜門を登ったから〝登竜門〟。イキですよね。
日本ではこの故事にならって「立身出世と子どもの健やかな成長」を願い、鯉のぼりをかざるようになったそうです。今でも、たとえば「芥川賞は作家の登竜門」などという言い方をします。どの分野でも登竜門というのはあるものです。登竜門を突破して乗り越えられたら、その仕事でプロフェッショナルとして活躍する道がひらけます。
たとえば受験や資格試験、就職活動のように、そこを超えたら次のステップにすすめる。そういう意味での登竜門もあるでしょう。夢や希望がある人はぜひ、端午の節句には縁起をかついで、鯉のぼりをかざりましょう。自分の思いを、鯉のぼりにたくします。
鯉のぼりはべつに大きなものではなく、ミニチュアでもいいのです。または鯉のぼりの絵が描かれた手ぬぐいや風呂敷などをかざってもいいでしょう。シンボルですから、男の子の節句とこだわることはありません。
鯉のぼりは豊作への願い
鯉のぼりが人々の間に広まると、農村では、田んぼに鯉のぼりを立ててかざる風習が生まれました。なぜ田んぼかというと、農家の人たちにとって、鯉のぼりは神さまが宿られるヨリシロだと考えられたからです。
旧暦五月は早苗月といい、田植えをはじめる月というのはお話ししました。だから「今から田植えをはじめますから、神さま、応援にきてください」という願いを込めて、田んぼに鯉のぼりを立てました。田植えの前に農耕の神さまを招いて、豪雨や日照りなどで作物が不作ということがないように、たくさんの収穫があるようにと、願ったのです。
お米が無事収穫できるかどうかは、人々にとっては死活問題ですから、祈る思いで鯉のぼりを立てたのだと思います。
(本記事は『開運 #年中行事はじめました』より一部を抜粋・編集したものです)
◇井垣利英(いがき・としえ)
株式会社シェリロゼ代表取締役、人材教育家、メンタルトレーナー、マナー講師。名古屋生まれ。中央大学法学部卒業。 女性が多く働く全国の企業で、社員研修、講演会を年間100本以上行う。化粧品、ジュエリー、エステティック、介護、幼児教育などに携わる女性のやる気とマナーを向上させ、売上アップにつなげる日本で唯一の専門家。活動は15年以上に及び、これまで、3000人以上の自社スクール受講生の人生を好転させた。テレビ出演、新聞、雑誌の取材は200件以上。『仕事の神様が“ひいき”したくなる人の法則』(致知出版社)、13万部を突破した『しぐさのマナーとコツ』(学研)など著書多数。
『開運 #年中行事はじめました』』(井垣利英・著)
堅苦しい、面倒臭そう……と思われがちな年中行事。ひな祭りには七段飾りを、鯉のぼりは大空を泳ぐ大きなものを。そう考えているうちに、何もせず過ごしてしまう人がほとんどではないのでしょうか。マナー講師としてメディアでも活躍する井垣利英さんは、そんなに大事に考える必要はないといいます。ひな祭りには二色のガラス玉などを女雛と男雛に
見立ててペアで飾ってみる。鯉のぼりは、鯉のぼりの絵が描かれた手拭いや風呂敷などを部屋に飾ってみる。そんな工夫をするだけで日常生活にも彩りが出てくるといいます。
本書は、日本人に馴染みが深いはずの年中行事をもっと気軽に楽しみ、幸せに過ごすためのヒントが満載の一冊。お正月に門松を飾る理由、節分の鬼を追い払う2つの魔除け、始業式が4月8日に始まる理由、盆踊りにこめられた2つの意味……などなど、知れば「へーっ、そうだったんだ!」と誰かに話したくなったり、心がポッと温かくなったりします。
「年中行事を学んでから街の景色が輝いて見えるようになった」
「見えるものが変わってきた」とは、実践した人の多くが口にする言葉。本書でいいなと思ったことを一つでもやってみて、ぜひその楽しさや喜びを実感してみてください。知らないと恥をかいてしまう年賀状の書き方や、お墓参りのやり方とマナーなども詳しく紹介されていて、社会人として知っておきたい教養を身につけることもできます。