野菜に学び、野菜を食べ、野菜を生かす——予防医学の名医が教える野菜の力

医師として、遺伝子や野菜に関する研究を行い、メディア出演や著述活動も精力的に続ける国際医療福祉大学病院 予防医学センター教授の一石英一郎さん。その活力の根源には、幼い頃から続けている菜食習慣があるといいます。これほど研究が進んだいまも、野菜が持つ新たな健康効果は発見され続けているとのこと。そんな野菜の魅力を、縦横に解説していただきました。(本記事は月刊『致知』2026年8月号 人気連載「大自然と体心」より一部抜粋・編集したものです)

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地球の〝大先輩〟 野菜たちに学ぼう

突然ですが、皆さんは野菜がお好きですか?

きっと、ご家庭で「野菜を食べなさい!」と言われたことがある方がほとんどでしょう。私も例に漏れず、母親から「野菜を食べなきゃダメ!」と口癖のように言われて育った人間です。理由も知らないまま素直に従い、医者として多忙になっても野菜をきちんと摂る生活を続けてきました。

世の中には医者の不養生という言葉があります。その点、感謝しているのは、ほとんど重大な病気にも罹らず還暦を迎えられていること。野菜を摂ると元気でいられる、これは私の偽らざる実感です。

昨今、その裏づけとなる発表が次々となされています。

例えば、もともと野菜と関係はありませんが、年老いた肥満体型のマウスと若く痩やせたマウスの血管を繋ぎ合わせ血液を循環させるという実験がありました。すると驚いたことに、年老いたマウスがみるみる若返ってきました。

血液を介して何らかの〝若返り物質〟が体内に取り込まれたのではないかと、その正体を探って世界中の研究者が探究を進め、遂に突き止められました。NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)です。発見者は米ワシントン大学医学部の研究チーム、うち一人は日本人の今井眞一郎教授です。

研究の結果、動物でも人間でも、NMNを摂取すると、明らかな若返りの兆候が示されました。高齢の人がNMNを摂取すると、身のこなしの俊敏さが回復する傾向が見られ、アルツハイマー型認知症や心不全などの疾患にも効果が認められています。

このNMNを摂取するには、どうしたらよいのでしょうか。今井教授は、野菜や果物に含有量が多く、特に枝豆やアボカドで顕著だと指摘しています。さらに最近、特筆すべき発見がありました。ブロッコリースプラウト(新芽)に、NMNが多く含まれているという事実です。ブロッコリーにはかねて、ビタミンAにビタミンB2、ビタミンC、葉酸、カリウム、鉄、βベータカロテンに加え、がん予防効果のあるスルフォラファンまで、豊富な栄養素があることが分かっていましたが、一層〝健康野菜〟としての評価が高まりました。

このように野菜は、一つひとつが「天然の薬箱」なのです。

考えてみれば、この地球に人間の祖先が生まれたのは数百万年前。比べて、植物の誕生は三十五億年前とも言われます。人間など地球上ではまだ新参者で、植物は幾度とない環境の激変、生存競争を勝ち抜いてきた大先輩です。

我々動物と違い、植物は一旦根を張れば猛暑だろうと極寒だろうと、そこから逃げも隠れもできません。紫外線、ウイルス、化学物質など害になるものが襲ってきたら、免疫やデトックス(解毒)の仕組みを発達させて耐え忍ぶ。自分の中に自分で〝薬〟をつくっているのです。野菜を食べるとはその野菜が蓄積してきた薬箱を活用すること、と言えるでしょう。


一石さんが語る野菜の魅力に思わず引き込まれますが、さらに驚くのは、日本神話の登場人物、また誰もが知る西洋の偉人たちも野菜の力を知り、大切にしていたという事実です。子供の頃から「食べなさい」と言われ続けてきた野菜の底力を知る機会になるでしょう。

~本記事の内容~
◇地球の〝大先輩〟野菜たちに学ぼう
◇野菜が明暗を分かつ? 菜食を愛した偉人たち
◇野菜の力を生かす食べ方

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◇一石英一郎(いちいし・えいいちろう)
昭和40年生まれ。兵庫県出身。医学博士。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科修了。米国癌学会(AACR)正会員。DNAチップ技術を世界でほぼ初めて臨床医学に応用し、論文を発表。人工透析患者の血液の遺伝子レベルでの評価法を開発し、国際特許を取得。現在、テレビ番組「すんごい野菜の話し」(ZTVにて毎月1〜15日、BSよしもとにて毎週土曜19時半〜20時放送)出演中。著書多数。

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