2026年07月17日
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
東洋思想研究家・田口佳史氏による最新刊『人生の指南書・四書五経の名言を読む』。東洋思想の中で最も重要と言われている9つの古典「四書五経」の膨大な文献から、現代の日本人が生きるうえで、働くうえで、絶対に知っておくべき45の名言を厳選。予備知識のない入門者でも、「名言の数々に心を遊ばせ、極上の一時を過ごせる」ように、わかりやすく解説したものです。「天命」「仁義」「君子」「徳・運」「敬・愛」の5つのテーマから紹介されており、読者が人間的力量を磨くための工夫が随所に施されているのも特長。日本人の精神形成に最も影響を及ぼした書物「四書五経」に触れるには、最適の一冊と言えます。本書の「はじめに」を一部抜粋してお届けします。
(本記事は『人生の指南書・四書五経の名言を読む』より一部を抜粋・編集したものです)
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人生の名言・至言・金言の宝庫「四書五経」に学ぶ
私が「四書五経」をはじめて読んだのは、『大学』からでした。いまからほぼ五十年前のことです。
この本に格別に興味を持ったのは、この『大学』という典籍が、儒家思想の聖典と言われる「四書五経」の一つであるとともに、江戸期、六歳の児童が寺子屋に上がり、入学の初日から習う初学の教科書であることを知ったからです。江戸の子どもたちは、どのような教育を受けていたのか。今日と比較してみたかったのです。
「大学の道は、明徳を明らかにするに在り」
巻頭、第一段第一節、開くといきなりこの章句から始まります。「大学の道」とは、大いなる学びの道。「最も大切な学ぶべきこと」はということです。小学校一年生の第一日目、最初の授業で、人として最も大切なことから学んでいるんだ、ということに驚かされました。冒頭からいきなり「喝ッ‼」です。
教育とは、人間としての在り方を教えること。その中でも最も大切なことから教えると言っているのです。理屈抜きで「すごい」と思いました。そうなれば当然、その最も大切なこととは何かを知りたくなります。子どもの気持を一挙にとらえてしまうのです。
続いて「明徳を明らかにするに在り」となっています。「明徳」とは何か。徳とは誠心誠意対応すること。私は「自己の最善を他者に尽しきること」としています。その徳に「明」が付いているのは、誰もがあなたの誠意が感じられるように明らかに、はっきと示すということです。
この明徳を「明らかにするに在り」と書かれています。こちらの明らかは、明徳の意義をどのような場合にも明確に揮い示せるように修得しなさいということです。
江戸期、親が最も見たくない風景は、自分の息子や娘が仲間外れにされて、集団と離れて独りぽつんと遊んでいる状態でしたから、親は何度となく次の問いを繰り返しました。
「世間、世の中は、誰と誰からできているかい?」答え「自分と他人」。「自分は何人だ?」
「一人」「だよな。ほか全部他人なんだぞ。自分勝手になるんじゃないぞ」といって教えたのが「自分中心、自分ファースト、自分優先」、つまり「利己主義」は自分を孤立させてしまうということでした。
その時、決して忘れてはならない言葉として、常にくどいほど示されたのが「徳」でした。寺子屋へ上がって真っ先に習うのも「明徳」であり、江戸期は社会人としての基礎を骨身に沁し みるほど修得させたのです。
「四書五経」の最初の一冊の冒頭の一行だけで、このような人間としての最重要、いわば良い人生、ウェルビーイングの本質が説かれているのです。したがって「四書五経」が、人間必修の「人生の指南書」であることが理解されることでしょう。
◎致知最新2026年8月号に、田口佳史氏がご登場!◎
東洋思想研究家として江戸期の教育を研究する中で幼児教育のあり方に強い関心を抱くようになった田口佳史氏。倉橋惣三、堀合文子という保育学の先駆者の薫陶を受け、現在における幼児教育のあり方を提唱し続ける内田伸子氏。スタンスは異なるものの「幼年期の教育が日本の未来をつくる」という思いは同じである。混迷を極める日本にあって人間の根っこを養う教育はいかにあるべきか。そして課題解決のためにいまどういう手を打つべきなのか。それぞれの視点から学びたい。
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◇田口佳史(たぐち・よしふみ)
昭和17年東京都生まれ。記録映画監督としてバンコクで撮影中、水牛に襲われ瀕死の重傷を負う。生死の狭間で『老子』と出合い、東洋思想研究に転身。「東洋思想」を基盤とする経営思想体系「タオ・マネジメント」を構築・実践し、1万人超の企業経営者や政治家らを育成。配信中の「ニューズレター」は海外でも注目を集める。主な著書(致知出版社刊)に『「大学」に学ぶ人間学』『「書経」講義録』『「中庸」講義録』他多数。最新刊に『王陽明「伝習録」に学ぶリーダーの人間学』。
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