【第18回】佐藤勝人 快刀乱麻を断つ 仕事と人生に役立つ実践的問答 ——「自分を超える部下は、教えても育たない」

栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。

本連載ではそんな佐藤さんに、現代ビジネスマンから寄せられた悩みや胸の内の葛藤、さらには社会情勢までも「勝人節」でズバッと答えていただきます。

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人材育成に必要なのは、教える技術以上に〝待つ覚悟〟

この30年、私は「自分を超えるような部下を育てたい」と本気で思いながら、人材育成に向き合ってきました。しかし結論から言えば、いまのところ、私を超えた部下は一人も育っていないのが実情です。もちろん、優秀な人材は多少なりとも育ってきて、現場を任せられる人間も増えてきました。数字を読める人間も、考えて動ける人間も育ってきました。

しかし、〝佐藤勝人〟を超える人間となると、まだ1人も現れていません。それは自分の指導力不足なのだと思い、何度も考え直した時もありました。もっと教え方を変えればいい。伝え方がダメなのかもしれない。もっと経験を積ませなければ……。そう考えていましたが、試行錯誤を重ねてきて、ようやく行き着いたことがあります。それは、「人は教えれば育つほど単純ではない」ということでした。

知識は教えられる。技術も教えられる。やり方も伝えられる。ここまでは比較的再現性があります。けれども、本当に人の器を大きくするものは、そこではありませんでした。覚悟や執念、責任と孤独、自分で背負う力。これらは、誰かから教わって身につくものではありません。本人が人生の中で苦しみ、迷い、失敗し、逃げたくなりながらも、自分自身で掴み取るしかないものです。

また、私の場合は、普通の人よりも基準が高かったのだと思います。「行動量が多く、決断も早く、責任感も強く、先の先まで考えて動く、しかも24時間365日それこそ夢の中でも仕事のことを考える」ことが自分では当たり前だと思っていました。しかし、それは決して「普通」ではなかったということです。

だから部下たちは、追いつく前に守られてしまった。私が先回りしてしまう。私が責任を取ってしまう。私が解決してしまう。すると、部下は大きな失敗をしない代わりに、大きな経験値も積めなくなる。これは育成において、非常に難しい問題でした。

経営者や上司は、優しい人ほど手を出してしまいます。しかし、本当に人が育つ瞬間というのは、本人が「自分で背負った時」にしか起きません。だから人材育成とは、教える技術以上に、待つ覚悟が必要なのだとも思いました。

とはいえ、私のこの30年は失敗だったとは思っていません。むしろ、私自身が「どう生きるのか」「どう考えるのか」「どう判断するのか」、その基準を見せ続けてきた30年だったとも思えます。その積み重ねが組織文化になり、「考え方、価値観、判断基準、姿勢、哲学」それらは、マニュアルでは伝わらない。日々の背中からしか伝わらないものだからです。

人は、師匠そのものにはなれません。けれども、師匠の思想を継ぐ人間は現れます。さらに言えば、師匠を土台にして、その先へ進化する人間も必ず現れます。しかも多くの場合、それは後から現れます。10年後、20年後かもしれない。本人が人生の苦しみを通じて、ようやく師匠の言葉の意味を理解するものです。

人材育成とは、その場で結果が出るものではなく、種を蒔き続ける仕事です。だから私は、これからも伝え続けます。それを感覚だけで終わらせない。明文化し、構造化し、再現できる形へ変えていく。それが、次の世代への私なりの責任だと思っています。さて読者の皆さんはいかがでしょうか? I’ll try my best.


◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。 

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