2026年02月15日
現在開催中のミラノ・コルティナオリンピックを集大成とし、今季限りで現役引退を表明したノルディック複合の渡部暁斗選手。初出場となった2006年のトリノオリンピックから20年、これまで6度のオリンピックに出場し、4つのメダルを獲得。日本中に勇気と希望を与えてきました。最後のオリンピックに挑む渡部選手がかつて『致知』で語った、10代から試行錯誤を重ねて築いてきた勝負哲学についてご紹介します。
(本記事は『致知』2023年4月号連載「20代をどう生きるか」より一部を抜粋・編集したものです)
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とことん自分と向き合う
<渡部>
ノルディック複合という競技は、気候に左右されるアウトドアスポーツであるため、こちらの計画通りにトレーニングを進められないことがしばしばあります。人間の都合などお構いなしに、日々刻々と変化する自然といかに向き合うかが問われるのです。
年間を通じた大まかなトレーニングスケジュールは立てますが、詳細は3日先くらいまでしか考えないことにしています。想定外の事態にも柔軟に対応して、その時にできる最善を積み重ねていく以外にないと考えるからです。
食事についても同様です。食事管理を徹底するアスリートも多数いますが、私は変化し続ける自分の体を一定に保とうとするのは不自然だと思います。その日の天候や体調などに応じて、食べるものも柔軟に変えていくのが私のスタイルで、地球のリズムに合わせて自然体で生きることを心掛けているのです。
しかしそれは、十分な知識がなければ実践できません。栄養学の常識一つを取ってみても、10年前といまでは180度違っていることもあります。それでも私はほとんど専門家に頼ることなく、書籍やネットを通じて、さらには他の競技のアスリートたちとも積極的に交流して情報収集してきました。
これは食事に限らず、トレーニングについても同様です。私はほとんど独力でプランを立ててきたため、失敗も数え切れないほど重ねてきました。しかし、すべてはトライ&エラーの繰り返しであり、エラーが多いのは、それだけ積極的にトライを重ねた結果なのです。大切なことは、様々なことに好奇心を持つこと。そして自分のやっていることに常に疑問を持ち、現状に止まらないことだと思います。
幸い、29歳で臨んだワールドカップ2017~18年のシーズンでは大会8勝を上げ、総合優勝(年間王者)を達成することができました。一発勝負で順位の決まるオリンピックと異なり、シーズンを通して成績を競うワールドカップで結果を残せたことは、本物のチャンピオンを目指す私にとって大きな自信になりました。
こうして改めて振り返ると、私の20代はひたすら自分と向き合った10年間でした。渡部暁斗とは何者だろう、自分の存在意義とは何だろう。それでもいま思えば、もっとやっておけばよかったと悔やまれることもたくさんあります。
いま20代を生きる方々には、自分を過小評価せず、いまよりもっと踏み込んで可能性に挑戦し、未来を切り開いていただきたいと願っています。
◇渡部暁斗(わたべ・あきと)
昭和63年長野県生まれ。早稲田大学スポーツ科学部卒。高校在学中にノルディック複合でトリノオリンピックに出場。平成21年世界選手権団体戦で金メダル獲得。オリンピック個人戦では、ソチ、平昌、北京と三大会連続でメダル獲得(複合種目では史上初)。ワールドカップ2017~18シーズンでは個人総合優勝を果たす。
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