459回目で成功率は99%になる——日本一のベンチャー企業社長が導き出した〝イノベーションの法則〟〈ユーグレナ・出雲 充〉


「人と地球を健康にする」をパーパスに掲げ、ヘルスケアやバイオ燃料などを事業の柱に展開する㈱ユーグレナ。500回に及ぶ失敗と挑戦を乗り越え、世界初のミドリムシ(学名:ユーグレナ)食用屋外大量培養に成功して以来、大学発ベンチャー企業として東証一部上場を果たし、20年にわたりイノベーションを起こし続けてきました。同社を創業し大躍進を先導してきた出雲氏は、自らの体験をもとに「すべての人がイノベーションを起こすことができる」という興味深い発言をされています。本記事では、そのために必要な2つの要件をご紹介します。(本記事は月刊『致知』2025年5月号 特集「磨すれども磷がず」より一部を抜粋・編集したものです)

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イノベーションに欠かせない2つの掛け算

〈出雲〉
イノベーションを生み出す時に一番大事なものをひと言で申し上げると、それは「一番にこだわる」ということです。

スポーツでもエンターテイメントでもアートでも研究でもビジネスでもすべて、競争している限り1番じゃないと意味がないと考えています。日本で一番大きい湖は琵琶湖ですよね。日本で1番高い山は富士山ですよね。世界で1番大きい国はロシアですよね。世界で1番大きい島はグリーンランド島ですよね。これは誰でも知っているんです。

ただ、2番になると急に難しくなります。日本で2番目に大きい湖は? 霞ヶ浦です。日本で2番目に高い山は? 北岳です。世界で2番目に大きい国は? カナダです。世界で2番目に大きい島は? ニューギニア島です。皆様ご存じだったでしょうか。お持ちのスマホやパソコンで、「富士山」と検索した時に何件出てくるか。「北岳」と検索した時に何件出てくるか。ぜひお比べください。

競争している限り、2番以下はこの世に存在していないのと一緒だと思っています。こう申し上げると、たいてい次のような反論が返ってきます。

「たまたまミドリムシで一番かもしれないけど、1番になりたくてもなれない人のほうが大勢いるし、事情があって諦めた人に失礼だ」「私は非常に家が貧しかったんです」「田舎の山奥で」「離島で」「自分の能力を高めてくれるような授業も施設も何もないんです。それでどうやって1番になるんですか」「競争社会で生き残るためにはお金持ち、特別な才能、いい家柄が必要で、これらの条件から外れた人は1番になれない」って言うんですよ。本当にそうでしょうか。

きょう最初にお見せした写真を思い出してください。私の父親はサラリーマンです。母親は専業主婦です。私は多摩ニュータウンという団地で育ちました。ミドリムシの研究をするために必要なお金とか特別な才能とかいい家柄やコネとか何もなくても、ミドリムシで日本一と言っていただけるベンチャー企業をつくることができました。先述した「これがないと」っていうものは、イノベーションとは何の関係もないんです。

1回目でいきなり成功することはまずありません。99%は失敗します。2回やって2回とも失敗する確率は0.99の2乗ですから、0.9801。これを一から引いて成功率は1.99%ですよね。5回繰り返すと4.9%になる。これ私は手で計算したから覚えているんですね。

100回やったら64%、459回目に数字が最初と逆転し、成功率は99%に達します。

適切な科学と繰り返し努力する力、この2つの掛け算ですべての人がイノベーションを起こすことができると私は確信しています。

古代ゲノム解読で2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞されたスヴァンテ・ペーボ先生や青色LED研究で2014年にノーベル物理学賞を受賞された天野浩先生など、偉大な先生方にお会いするたび、同じことをおっしゃっていたので、間違いないでしょう。

天野先生は「1,500回実験に失敗しました。私以外にこれだけやった人はいませんでした」と語っておられました。


日本を代表する若手ベンチャー経営者であり、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーにも選出された出雲さんのこれまでの歩みとは。いま日本及び世界にどのような変化が起こっているのか。これからの時代、いかに経営していけばよいのか。リーダーのあり方を学びます。
全文はこちら

 

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◉『致知』2025年5月号 特集「磨すれども磷がず」◉
特別講話〝僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。~昨日の不可能を、今日可能にする~

出雲 充(ユーグレナ社長)

 ↓ 講話内容はこちら!

◇伝えたい3つのテーマ
◇大学1年生の夏休みにバングラデシュへ
◇ムハマド・ユヌス氏との衝撃的な出逢い
◇世界初となるミドリムシの食用屋外大量培養に成功
◇2年間で500社から断られ続けた先に
◇絶対に無理だと言われた東証一部上場を果たす
◇ミドリムシが空を飛ぶ!? バイオ燃料への挑戦
◇2025年に日本が迎える大転換とは
◇生き残る組織に共通する3つの特徴
◇イノベーションに欠かせない2つの掛け算
◇夢を追い続ける人が持つたった2つの要素
◇我が人生信条は「昨日の不可能を、今日可能にする」

◇出雲 充(いずも・みつる)
昭和55年広島県生まれ。東京大学農学部卒業後、平成14年東京三菱(現・三菱UFJ)銀行入行。17年㈱ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。同年12月に世界で初となる微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功。24年東証マザーズ上場、26年東証一部上場。世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤンググローバルリーダー、第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書)『サステナブルビジネス』(PHP研究所)など。

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