日本人の美質を取り戻すために、読書文化の復興が欠かせない——お茶の水女子大学名教授・藤原正彦が語る読書の重要性

本を読むことの重要性を長年提唱されてきた、お茶の水女子大学名誉教授・藤原正彦氏。氏の目には、子どもからお年寄りまで、皆がスマートフォンに夢中になっている昨今の世の中は、日本が滅びる前兆のように映っていると言います。なぜ、いま読書が欠かせないのか。読書をすることで何が変わるのか。『致知』で語っていただいた一節をご紹介します。
(本記事は『致知』2025年2月号 特集「2050年の日本を考える」より一部を抜粋・編集したものです)

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読書文化の復興が欠かせない

今回、『致知』の取材を受けるに当たり、哲学者・森信三氏が語ったという「2025年、日本は再び甦る兆しを見せるであろう。2050年、列強は日本の底力を認めざるを得なくなるであろう」という言葉を知り、いたく共感するものがありました。

これまで述べてきた通り、日本人は太古の昔から他国には決してない美質を有してきた民族です。そして、そこに立ち返ってこそ日本の、そして世界の未来がひらけてくると私は思ってきました。

世界はすでにそのことに気づき始めていて、事実、日本を訪れた外国人の多くは清潔で親切で安全で礼儀正しい日本の国柄に驚嘆の声をあげます。世界中回っても、日本ほどの国はないのですから。

ロンドンやパリと言えばおしゃれなイメージがありますが、実際はそうではありません。道にはゴミがあります。約百年前、人々はアパートの窓から平気で汚物を投げ捨て、街中が汚れ異臭を放っていました。香水やハイヒールはそのために生まれたとされています。片や日本は江戸時代からすでに屋外にトイレが設置されていました。その一事を取り上げただけでも彼我の差は明らかです。

ただ、日本が世界を導くには大きな条件があります。それは何より日本人自身が先祖が培ってきた美質に目覚めることです。また、そのためには日本人が失いつつある読書文化の復興は絶対に欠かすことができません。

いま電車に乗ると、子供からお年寄りまでがスマホに夢中になっていますが、これは日本が滅びる前兆のように私の目には映ります。中学生や高校生は一日に4時間以上もスマホを見ているのです。

日本人は読書文化をあまりに過小評価しすぎていますが、本に向き合わない限り正しい知識や教養、情緒、そして日本人としての美質が身につくはずもありません。

私は教鞭を執ってきたお茶の水女子大学で十数年にわたり読書ゼミを続けてきました。

拙著『名著講義』(文春文庫)にその実況中継がありますが、ゼミ生には一週間に一冊の読書を義務づけ授業では読後感を軸にディスカッションをしました。先ほどの『武士道』『代表的日本人』をはじめとする名著に触れた学生たちが、あっという間に見違えるほどの成長を遂げていく姿を目の当たりにしてきました。洗脳教育をしているのか、と私自身が怖くなるほどでした。

我が藤原家では曽祖父の代から「本に埋もれて死ね」という言い伝えがあります。旧制中学の校長をしていた妻の祖父は「一日に一頁も本を読まない人間は獣と同じだ」というのが口癖でした。このため、妻の叔父叔母は皆本好きでした。これらはいまも我が家の家訓のようなものですが、人間を磨く上で読書はそれほど重要なのです。


(本記事は『致知』2025年2月号 特集「2050年の日本を考える」より一部を抜粋・編集したものです)

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