【取材手記】J.フロントリテイリング顧問・山本良一が語る、組織を勝利に導く秘訣

~本記事は月刊誌『致知』2025年4月号 連載「二十代をどう生きるか」の取材手記です~

百貨店の新たな姿を創出する

老舗百貨店「大丸」「松坂屋」を祖に、日本の小売業界を牽引するJ.フロントリテイリング。松坂屋が400年、大丸が300年という長い歴史を誇っています。

また、近年では〝脱百貨店〟を掲げ、挑戦と変革を続けることで活路を見出してきました。2017年4月には、松坂屋銀座店跡地に「GINZASIX」を開業。日本初のラグジュアリーモールとして華やかな店舗空間に仕上げた本施設は、開業日には約2500人が行列をつくるなど大きな脚光を浴びました。コロナ禍では業績に影を落とし苦境が続きましたが、2022年の全館売り上げはコロナ前を上回り、過去最高を記録しました。

同社の舵取り役を担い、百貨店の新たな姿を創出してきたのが、山本良一氏です。氏はいかにして経営の道を切り拓いてこられたのでしょうか。

月刊誌『致知』最新号(2025年4月号)の連載「二十代をどう生きるか」では、組織の中で挑戦と変革を重ねながらリーダーとしての力量を養い続けてきた山本さんの20代の歩みを振り返っていただき、経営者としての原点に迫りました。

山本良一(やまもと・りょういち)
昭和26年神奈川県生まれ。48年明治大学商学部卒業後、大丸に入社。大阪・梅田店営業企画部長などを経て、平成15年社長に就任。19年大丸と松坂屋の経営統合に伴い設立された持ち株会社のJ.フロントリテイリング取締役。25年J.フロントリテイリング社長、令和2年取締役会議長に就任。6年より現職。

2015年、2017年に続いて3度目のご登場

山本さんには、これまでも弊誌に2度ご登場いただきました。

1度目は2015年4月号特集「一を抱く」。セーレン会長兼CEO(当時)の川田達男さんとご対談いただき、山本さんには表紙を飾っていただきました。

2度目は2017年4月号特集「繁栄の法則」にて、アシックス社長CEO(当時)の尾山基さんとのご対談が実現。一流企業の経営者が織りなす濃密な人間学談義は、大きな反響を呼びました。

そして3回目となった今回。4月号での掲載を見込み今年1月に取材依頼をしたところ、すぐにご快諾いただくことができました。しかしながら、現在山本さんは関西を拠点にご活動されていることもあり、スケジュール調整が難航しました。

「これは難しいかもしれない……」。そう思っていましたが、山本さんはわざわざ関西行きの飛行機の時間をご調整くださり1月30日(木)、東京・品川に構えるJ.フロントリテイリング本社にて取材は行われたのです。

山本さんの誠意に触れ、思わず心震わされました。取材では60分間にわたり、一社員から社長に抜擢された所以や人間的魅力、同社が小売業界を牽引し続けている要諦を感じ取ることができました。本記事では全3ページにわたって、そこで語られた内容を一つひとつ詳らかに紹介しています。

↓インタビュー内容はこちら!

◇勝負を分ける〝4つのS〟
◇「おまえの好きな場所を選べ」
◇微差の積み重ねは大差となる
◇最大の挫折から学んだこと
◇常に問題意識を持って考える

最後の最後に勝負を分けるもの

山本さんの経営者としての原点には、青春時代を捧げたバスケットボールがあります。全国の猛者が集まる名門・明治大学バスケ部の門を叩くと、恵まれた体格と運動神経を活かしてすぐに頭角を現し、2、3年次にはチームの主力として全日本学生選手権(インカレ)連覇を達成。4年次には主将を任されました。

ところが、主力の大半が卒業してしまい、戦力の低下は否めませんでした。実際、「今年のチームでは3連覇できないだろう」と、心ない言葉を掛けられたといいます。

山本さんは当時を振り返り、次のように述懐されています。

〈山本〉
周りの心ない言葉に、私は奮い立たされました。一番にならなければ意味がない、絶対に勝たなければならないプレッシャーの中で勝つ。3連覇という目標を達成するために何をすべきか、四六時中考えて練習に打ち込んでいったのです。

以降、山本さんはリーダーとしてチームを牽引していきます。練習内容を見直して徹底的に基礎を磨く一方、練習後には毎日必ず合宿所でミーティングを開き、対戦相手を細かく分析する。監督やコーチはいたものの、「これは我われのチームだ」という気概で仲間と侃侃諤諤の議論を重ねました。

さらに山本さん自身が誰よりも汗を掻き、誰よりも声を出し続けて皆を鼓舞しました。リーダーが率先垂範することで、「山本があれだけやっているんだから自分も頑張ろう」と、努力を厭わない組織風土が少しずつ育まれていきました。

こうしたチームづくりが奏功し、前評判を覆す形でインカレ3連覇を成し遂げることができたのです。

〈山本〉
私は勝ち切るには〝4つのS〟が不可欠だと捉えています。変化に対応するスピード、戦略を立案し実行するスキル、データに基づいた科学的な判断、つまりサイエンス。そして、何としても目標を達成するというスピリット。4つのうちどれか一つでも欠けていれば勝利を掴むことはできません。

スキル、データ、サイエンス、スピリット。勝負を分ける〝4つのS〟の中で最も大切なものを伺うと、山本さんはこうおっしゃっていました。

〈山本〉
日本一を争うチームでは、スキル、データ、サイエンスはきちんとできています。これらの要素が揃ったチーム同士が戦い、勝負を分けるのは「何としても勝つ」という魂、精神力に他なりません。つまり、最後の最後に勝利を手繰り寄せるのは〝スピリット〟なのです。これはビジネスにも通底する要素ではないでしょうか。

最後に勝利を手繰り寄せるのはスピリット――含蓄に富んだ教えです。

リーダーとしてチームを牽引した経験を糧に、大丸(現・J.フロントリテイリング)に入社した山本さんはいかにして百貨店の新たな姿を創出してきたのか。その全貌はぜひ本誌をお読みください。

▼『致知』2025年4月号 特集「人間における運の研究」
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