2025年02月06日
~本記事は月刊『致知』2025年3月号 特集「功の成るは成るの日に成るに非ず」掲載対談の取材手記です~
侍ジャパン世界一&はやぶさ2世界初の偉業
2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、栗山英樹監督率いる侍ジャパンのヘッドコーチを務め、14年ぶり3度目となる世界一に貢献した白井一幸さん。
2021年に地球帰還を果たし、新たな旅に出た小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャとして、9つの世界初のミッションを達成へと導いた津田雄一さん。
野球と宇宙工学、分野は異なるものの、共に卓越したマネジメント力を発揮し、最高のチームをつくり上げ、世界一&世界初の偉業を成し遂げられました。
そのお二人が初めて相まみえ、語り合った体験的組織論は成功の要諦に溢れています。
月刊『致知』最新号(2025年3月号)特集「功の成るは成るの日に成るに非ず」のトップに白井一幸さんと津田雄一さんの対談記事が掲載されています。タイトルは「最高のチームをつくる要諦 ~世界一&世界初の偉業はいかに成し遂げられたのか~」。
特集テーマである「功の成るは成るの日に成るに非ず」とは、宋代の人・蘇老泉の『管仲論』にある言葉で、「人はある日突然成功するわけではない。すべて平素の努力の集積によって成功する」という意味です。
素晴らしい化学反応が生まれるのではないか
白井さんは栗山監督と同い年で仲良し。北海道日本ハムファイターズ時代も二人三脚でチームを日本一に導き、絶大な信頼を寄せられています。
「カズがやってくれないと俺はやらないから。お前じゃなきゃダメなんだ」と栗山監督に口説かれて侍ジャパンのヘッドコーチに就任し、大谷翔平選手やダルビッシュ有選手らメジャーリーガーを含むスター選手たちを一つにまとめ上げられました。
津田さんは根っからの技術者で朴訥なイメージがありますが、平易明快かつユーモアたっぷりな語り口が魅力的な方です。
はやぶさ2は国家プロジェクトであり、チームメンバーは約600人の多国籍のスペシャリストで構成されています。津田さんは39歳の若さでプロジェクトのリーダーに抜擢され、その重責を背負い、小惑星探査の分野において新たな金字塔を打ち立てられました。
そんなお二方を組み合わせることで素晴らしい化学反応が生まれるのではないか。侍ジャパン世界一、はやぶさ2世界初のミッション達成。そこには通底するものがあるのではないか。そう思ったのがこの対談を企画したきっかけです。
お二方とも以前から取材や講演などでご縁をいただいており、すぐにご快諾いただきましたが、一つ問題だったのは日程調整でした。
年末年始で大変お忙しく、それぞれ挙げてくださった候補日は全く合わない。そんな中で双方と調整を重ね、最終的には白井さんが先約の予定を変更し、対談取材を優先してくださったことで実現に至りました。
なぜそこまでしてくださったのでしょうか。これは推測ですが、1つは、津田さんとお会いして語り合ってみたいと思われたこと。もう1つは、日頃より『致知』を愛読されており、『致知』の企画であればと思われたこと。この2つの理由があったのではないかと考え、感謝の念が込み上げてきます。
初対面ながらすぐ意気投合、予定時間を超過した白熱の対談に
取材当日、お二方は初対面ながらもすぐに意気投合し、特に前半は司会進行の私が余計な口を挟む必要もないほど、お互いに質問を発し合い、共感し合い、掘り下げながら次々に話題が展開し、結局予定を超過して2時間半近くに及ぶ白熱の対談になりました。
その内容を凝縮して誌面11ページ、約16,000字の記事にまとめました。主な見出しは下記の通りです。
◇侍ジャパンが掲げた目的と目標
◇いかにして全員がゴールを共有したのか
◇まるで芸術作品のようなはやぶさ2のチーム
◇「発案は個人、評価はチーム、責任はリーダー」
◇アイデアを湧き立たせるファシリテーションの秘訣
◇ヘッドコーチとして常に意識してきたこと
◇プロジェクトマネージャとしての最大の決断
◇緊張やプレッシャー、失敗との向き合い方
◇ターニングポイントを支えた本との出逢い
◇この道に生きると思い定めた人生の原点
◇日本一弱いチームと世界一強いチームの差
◇勝利や成功を掴む三つの条件
「成功を掴むまでの道のり」として、「WBCで3大会ぶりとなる世界一を掴むことができた最大の勝因とヘッドコーチとして練習や試合で常に意識していたこと」や「はやぶさ2が世界初のミッションを達成できた最大の勝因とプロジェクトマネージャとして現場で常に意識していたこと」を中心に、それらの体験談から紡ぎ出された「何が組織を強くするか」「勝つチームの共通点」「自律したチームへと導くマネジメント手法」など、一冊の書籍になるほどの内容がギュッと凝縮されています。
「チームビルディングの真髄を語り合うことができた」
お二方のお話の中でとりわけ心に響いた言葉をここで紹介します。それぞれご自身が実感されている人生の法則ともいえる名言です。
まず津田さんの言葉。
できることを探すのがすごく重要で、挑戦しないことが一番のリスクだと思います。また、「真面目=しかめっ面」ではダメで、その中でいかに楽しめるか、遊び倒すか。そのためには、自分たちがいま直面している状況を俯瞰するとか客観視する要素が要ります。
次に白井さん。
人間は時に目の前のことの大変さとか小さな成功や失敗に右往左往し、ゴールを忘れてしまいがちです。常にゴールに向かって、いま意識してできることを愚直に徹底して全力でやり切る。それを継続していくと、最後に野球の神様、仕事の神様が微笑んで成し遂げることができるんです。
他にも仕事や人生の糧となる数々の金言に溢れており、それはぜひ本誌の対談記事をお読みいただければと思います。
最後に、白井さんから今回の対談記事掲載に際し、貴重なメッセージを頂戴しました。
「長く愛読し、いつもたくさんの学びや気づきをいただいています『致知』で、このたびはやぶさ2のプロジェクトリーダー津田様と対談させていただきました。
困難を困難と捉えずチャレンジを続けた先に達成を成し遂げたチーム作りは、2023WBCで世界一になった侍JAPANのチーム作りとたくさんの共通点がありました。
人が集まり、人がまとまり、同じゴールを目指すことの力強さ。あらゆる困難にも自分を信じ、メンバーを信じ、そして結果さえも信じるチームこそが目指すゴールに辿り着くことができる。まさにチームビルディングの真髄について語り合うことができました。
今回も対談の中でもたくさんの学びや気づきをいただきました。みなさんにも是非とも読んでいただければと思います」
白井さんと津田さんがその人生体験を通して掴まれた「最高のチームをつくる要諦」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。チームビルディング・マネジメントの達人ともいえるお二方が初めて語り合う人間学談義、本質論に興味は尽きません。
◇白井一幸(しらい・かずゆき)
昭和36年香川県生まれ。58年駒澤大学を卒業後、ドラフト1位で日本ハムファイターズ入団。平成3年自身最高打率3割1分1厘でリーグ3位、最高出塁率とカムバック賞を受賞した。9年日本ハムファイターズの球団職員となり、ニューヨーク・ヤンキースへコーチ留学。12年二軍総合コーチ、翌年二軍監督を経て、15年一軍ヘッドコーチに就任。令和5年のWBCで侍ジャパンヘッドコーチを務め、世界一に輝く。企業研修講師としても全国を飛び回る。著書に『侍ジャパンヘッドコーチの最強の組織をつくるすごい思考法』(アチーブメント出版)など多数。
◇津田雄一(つだ・ゆういち)
昭和50年広島県生まれ。平成15年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。同年JAXA(宇宙航空研究開発機構)に入る。小惑星探査機「はやぶさ」の運用に関わると共に、ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」のサブプロジェクトマネージャを務め、世界初の宇宙太陽帆船技術実現に貢献。22年より小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトエンジニアとして開発を主導し、27年プロジェクトマネージャに就任。世界初となる9つのミッションを達成に導く。著書に『はやぶさ2 最強ミッションの真実』(NHK出版新書)などがある。
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