2024年12月11日
NHK教育テレビの番組監修や通信教材の開発に携わってきた発達心理学者の内田伸子さんと、絵本1万冊・童謡1万曲の教育で三男一女を東京大学理科三類へ進ませ注目を浴びる佐藤亮子さん。昨今の教育界に一石を投じる親交の深いお二人に、子どもと向き合う際に意識するべき3つの秘訣について語り合っていただきました。 ◎今年、仕事でも人生でも絶対に飛躍したいあなたへ――
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子供の人生を分ける親の言葉がけ
<佐藤>
いまおっしゃったように、子育てって子供と一対一で向き合ってあげることが大切ですね。子供は本当に非効率の塊で、無駄に思えることの連続ですけど、親が考え方や姿勢を変えるだけでガラッと変わる気がします。
先生の目で見て、子供を伸ばす親御さんの姿勢、子育てのヒントになるものって何かありますか?
<内田>
以前、しつけのスタイルと語彙能力の関係を調べたことがあります。
子供中心で自由遊びの時間を長く取る自由保育の環境で育った子と、反対の一斉保育の環境で育った子。語彙力をテストしたら、明らかに前者の得点が高かったんです。
語彙得点が高い子供たちの共通点は「共有型しつけ」を受けていたことでした。
<佐藤>
どういうしつけですか?
<内田>
例えば、子供に考える余地を与える、子供の気持ちや動きに敏感になって柔軟に調整する、3つのH〈褒める・励ます・(視野を)広げる〉の言葉をかける。こういう「洗練コード」と呼ばれる言葉がけを用いるしつけね。
もっと具体的に言えば、私が一番感動した、佐藤さんのご長男のお話があります。小さい頃から佐藤さんの読み聞かせを通して語彙力が高まっているから、ご長男は1歳半で文字を書き始められた。
<佐藤>
はい。何回も同じ絵本を読んで字を覚えてしまって、書きたくなったみたいです。変な癖がつかないよう、公文式に入れました。
<内田>
それで小学校に上がる頃には周りの子が書けない漢字をたくさん知っていた。それを絵日記の宿題で書いたら、先生に「まだ友達が習っていない字だから、使わないほうがいいね」と言われたんですってね。
そこで佐藤さんがかけた言葉に心から感動したんです。
<佐藤>
恐縮です(笑)。
あの時は確か「そうね、お友達が習っていない漢字はあまり使わないほうがいいね。漢字を読んだり書いたりできるくらいで偉いことなんてないんだよ。でも、漢字が分かると大人が読むような難しい文章や本を読めるようになるからいいかもね」って言った気がします。
<内田>
素晴らしい!
最後に「でも、漢字が読めると大人が読むような難しい本が読めるようになるからいいかも」と付け加えられた。漢字の機能について伝える絶妙な言い方に舌を巻きました。本当に賢い言い方だと思いました。
(本記事は月刊『致知』2024年12月号 対談記事「0歳からの子育て 子育てにも法則がある」を一部抜粋・編集したものです)
↓ 対談内容はこちら!
◆自走する力を乳幼児期から育てる
◆〝間違い〟だらけの早期教育
◆スマホ、タブレット、動画の弊害とは
◆母に教わった分け隔てない人間愛
◆少女時代に衝撃を受けた二つの新聞記事
◆私はこうして読み聞かせた
◆読み聞かせのすごい力
◆子供の人生を分ける親の言葉がけ
◆AIに負けない生きる力を育む
◆待つ、見極める、急がず、急がせないで
◇内田伸子(うちだ・のぶこ)
昭和21年群馬県生まれ。45年お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。平成2年同大文教育学部教授に着任。専門は発達心理学、言語心理学など。ベネッセ「こどもちゃれんじ」監修やNHK「おかあさんといっしょ」番組開発も務める。23年より現職。令和3年文化功労者。5年瑞宝重光章を受章。著書に『AIに負けない子育て―ことばは子どもの未来を拓く』(ジアース教育新社)他多数。
◇佐藤亮子(さとう・りょうこ)
大分県生まれ。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師を務める。結婚後は専業主婦として三男一女を育て、全員を東京大学理科三類に進学させる。その教育が注目を集め、現在は進学塾のアドバイザーを務めながら、子育てや受験をテーマに全国での講演やメディア出演を行う。著書は『子どもの脳がグングン育つ読み聞かせのすごい力』(致知出版社)他多数。